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きれいをつくる
捨てられるコスメをもっと楽しく! コスメロス協会代表・ヘアメイクアップアーティスト
イガリシノブ
第2回 廃棄コスメから生まれたアートで街を明るく
 貧困などが原因でコスメが買えない子どもたちがいる一方で、まだ使えるのに大量に廃棄されるコスメがあるという現実。そのギャップを日々の仕事の中で感じ、何かできることはないかと考えたイガリさんは2022年に「コスメロス協会」を立ち上げました。そんなイガリさんが目指しているのは、廃棄されてしまうコスメを再利用するアップサイクル。魔法の水によって、コスメの用途は美しいメイクからアート作品へと変化していきます。

渋谷で開催された「SOCIAL INNOVATION WEEK 2023」


コスメが生まれ変わる魔法の水!
 コスメは楽しいものだから、コスメロスの活動もワクワクするようなものにしたい! そうした思いを形にした一つがアートプロジェクト。大人も子どもも参加できて、皆がコスメに親しめるイベントです。大きな壁一面にリップやアイシャドウなどから再生した絵具を使って絵を描いてもらうのですが、子どもたちがわーっと思い思いに描いて色を重ねていくので、のびのびとした迫力のある作品が出来上がります。
 ある女の子は「ここにあるリップ全部使ってもいいですか?」と言って、いろんな色のリップでハートをたくさん描いてくれました。リップだからピンク系が多いのですが、同じピンクでもリップによって微妙に色が違っていたり、ピンクだけじゃなくて茶色もあったりする。そばで見ていた保護者の方々も、普段自分たちが使っているコスメがこんなにも色彩が豊かなものだと改めて気づいたようです。

コスメからつくった絵具「スミンクアート」

 こうしたアートイベントが広がった背景には、株式会社モーンガータとの出会いがありました。モーンガータさんは、役目を終えたコスメから絵具や印刷用インク、文房具などの多用途の色材を作るプロジェクトを行っています。もともと化粧品会社の研究所で働いていた人が立ち上げた会社で、試作品を作る傍ら、大量にコスメが捨てられていく実態を見て何とかできないかと起業したそうです。
 そうした彼らの強い思いから開発されたのが、粉末状コスメを水溶性の絵具に変える液体「magic water」。これがとってもよく出来ていて、アイシャドウやチークなどの化粧品を砕いてこの水と混ぜると、その場で水溶性の絵具ができてしまう。本当に魔法みたいな水なのです。

 このmagic waterを使ったイベントを何回か企画していますが、大きな反響を呼んだのが2023年11月に渋谷で開催された「SOCIAL INNOVATION WEEK 2023(ソーシャルイノベーションウィーク)」です。ソーシャルイノベーションとは社会問題を解決するための革新的な取り組みのことで、このイベントではカルチャー、グローバル、サステナビリティなどのテーマに沿ってトークセッションやワークショップ、展示などが行われました。その会場で私たちが担当したのは、事前に集めた廃棄コスメを使って、そのコスメから作った絵具で絵を描く「コスメロスアートワークショップ」。廃棄コスメにmagic waterを混ぜて絵具を作るのですが、キラキラしたラメが入っていたり、鮮やかな発色だったりと、コスメの特徴を生かした絵具で絵を描けるとあって、参加者は興味津々です。参加してくれた子どもたちには「すごくない? このきれいな色の絵具はお母さんが使っている化粧品からできているんだよ」と説明するようにして、楽しみながら学んでいけるように企画しました。


コスメアートを生かした街づくり
 このほかに、美術の専門家の人たちに協力してもらって、美術館でのワークショップや絵画コンクールを開催するアートプロジェクトも進めています。ワークショップを美術館で行うとコスメで壁や床を汚してしまうのではないかいう問題もあって、まだまだ課題はありますが、こうしていろんな立場の人がプロジェクトやイベントに関わっていくようになれば、発信する人も増えていく。そうすれば、コスメロスの問題をもっと多くの人に届けられるはず。それこそSNSでバズってほしいです!(笑)。

 実現は難しそうですが、いつか工事現場の壁一面にコスメで作った絵具でアートを描くこともやってみたいですね。街の人にもどんどん参加してもらって、皆で絵を描いていくって楽しいじゃないですか? コスメロスってまだ世間一般に広く知られているとはいえません。ですからコスメロスの輪をもっと広げるためには、コスメを使う人使わない人にかかわらず、皆にコスメにふれてもらうことが大事だと思うのです。コスメで作ったカラフルなアートが街に溶け込んで、日常の光景になって、多くの人にコスメロスの問題がもっと身近になってほしいですね。(つづく)

――廃棄コスメを再利用したイベントやプロジェクトのほかに、メイクアップアーティストならではのさまざまな情報や提案の発信も行っているイガリさん。次回(最終回)はコスメを無駄にしないコツについて聞きます。

(構成:小田中雅子、写真提供:コスメロス協会)

☆コスメロス協会のInstagram
https://www.instagram.com/stop_cosmeticsloss/
☆イガリシノブさんのInstagram・YouTube
https://www.instagram.com/igari_shinobu/
https://x.gd/UCZRK
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【いがり・しのぶ】
ヘアメイクアップアーティスト。メイクスクールで学んだ後、メイク修業のためにロンドンへ。帰国後に美容専門学校を卒業。2005年よりBEAUTRIUMヘアメイクチーム所属。雑誌・広告などの媒体でヘアメイクを手がけ、多くの女優やモデル、アーティストなどから支持される。コスメブランド「WHOMEE」の化粧品開発ディレクターやメイク講師としても活躍。主な著書に、『イガリメイク、しちゃう?』(宝島社)、『裏イガリメイク、はいどうぞ』(宝島社)、『イガリ印 365日メイク図鑑』(講談社)など多数。
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