× close

お問い合せ

かもめの本棚に関するお問い合せは、下記メールアドレスで受けつけております。
kamome@tokaiedu.co.jp

かもめの本棚 online
トップページ かもめの本棚とは コンテンツ一覧 イベント・キャンペーン 新刊・既刊案内 お問い合せ
食べるしあわせ
今こそ伝えたい、味噌の力 実践料理研究家・みそ探訪家
岩木みさき
第3回 知っているようで知らない基礎知識
 お味噌汁を飲むたびに、「やっぱり味噌汁はいいよね、日本人でよかった」と思っても、味噌にどんな種類があるのか、味のバリエーションはどうやって生まれるのか知っている人はそれほど多くないのでは? 第3回は、知っていて損はない味噌の基礎知識を教えてもらいます。

―― これまで岩木さんの活動について聞いてきましたが、そもそも味噌はどうやってできていて、味の違いはどこからくるのでしょうか。


 味噌の種類は4つ。米味噌、麦味噌、豆味噌、合わせ味噌があるのはご存じですよね。 米味噌は国内生産の8割といわれていて、日本全国で生産されているのに対して、麦味噌は瀬戸内、四国、九州が主な産地。豆味噌は赤味噌とも呼ばれていて、愛知県、三重県、岐阜県などでつくられています。赤味噌といえば、愛知県岡崎市の「八丁味噌」が有名です。
 味噌の原材料は大豆・麹・塩ですが、種類の違いは麹の違いです。麹とは穀物に種麹を付けて培養したもので、米味噌は米、麦味噌は麦、豆味噌は大豆で麹がつくられているということです。基本的には、大豆を蒸してつぶし、麹と塩を混ぜ、必要に応じて水を加え、発酵・熟成させて味噌ができあがります。

―― わが家は「合わせ味噌」を使っているのですが、これは種類の違う味噌をあとから合わせるのですか?

味噌を変えれば味噌汁もバリエーションが楽しめる(写真提供:岩木みさき)

 2種類のつくり方があって、できあがった味噌を合わせるやり方と、仕込むときに米と麦、米と豆など、麹を2種類入れて合わせ麹にするやり方があります。それぞれ分解のスピードが違うため、合わせ麹は仕込み量が多くなると難しいといわれています。

―― そこまではよくわかりました。では、味の違いはどのように生まれるのでしょう。

 これは大きく2つ。熟成期間と、麹と塩のバランスによって違いが出てきます。熟成期間は麦味噌で2カ月から4カ月、米味噌は6カ月から1年、豆味噌は1年から3年です。同じ米味噌でも「白味噌」は数週間から1カ月と短く、熟成期間が短いほど淡色で甘みがあり、反対に長くなるほど色も旨みも濃厚になっていきます。

―― なるほど、白味噌や麦味噌が白っぽいのは熟成期間が短いことが影響していたのですね。味と色は連動しているということですか?

 必ずしもそうではありません。麹と塩のバランスの違いによって、色が似ていても、甘めと辛めがあります。ざっくり言えば、麹が多いと甘く、塩が多いと塩辛くなります。塩分濃度によって、5~7%は甘味噌、7~11%は甘口味噌、11~13%は辛口味噌に分かれます。ただし、同じ塩分量でも麹のほうが多ければ甘くなります。
 パッケージを見るとよくわかるのですが、原材料表示は多い順に書かれているので、大豆より先に米が書いてあれば麹の量が多いことになり、甘口タイプの味噌だということが分かります。

―― 家に帰ったら、早速パッケージを見てみなくちゃ(笑)。家にあるいつもの味噌が辛口タイプなら、甘口を試してみるのもありですね。自分好みの味噌の見つけ方はあるのでしょうか?

味噌は種類によって色合いもさまざま

 料理教室の生徒さんによく尋ねるのは、「どうやって食べたいですか?」ということです。そのまま食べたいのか、料理に使いたいのかによって、選び方も変わると思います。たとえば野菜につけてそのまま食べたいならちょっと甘めを選んだほうが食べやすい。でも、料理に使うときはちょっと辛口のほうがギュッと味がしまるので使いやすいんです。辛めのなかで好きな味を見つけるのは、お湯で解いて飲んでみるとわかりやすいです。

 私がこれからやってみたいのは、ワインのソムリエのように味噌を表現していくこと。うちの冷蔵庫には常時100種類以上の味噌があるのですが、「この米味噌は何に合わせても万能で包容力があって、面倒見のいいお姉さんみたい」なんて、勝手にキャラクターづけをしています。
 また、味噌にはそれぞれ違う香りがありますが、ある蔵元さんでナッツの香りの味噌と出会いました。自分の感じたままをお話ししたところ、社長さんがわざわざ研究所に成分検査依頼を出してくれて、「岩木さん、出てきた香りの成分はいろいろあったけど、いちばん多いのがナッツの成分だったよ!」と教えてくれました。なかにはリンゴの香りを感じる味噌もある。味や香りの近い食材を合わせれば“マリアージュ”(相性のいい組み合わせ)になりますから、香りの分析は今後、味噌の個性を表す大事な要素になるのかもしれません。(つづく)

―― 甘い、辛いはもちろんですが、味噌の個性を示す表現があると、選ぶ楽しみが増えますね。次回は、実践料理家ならではの味噌の意外な食べ方についてうかがいます。

(構成・宮嶋尚美)

【実践料理研究家・岩木みさきのみそ探訪記】http://misotan.jp
ページの先頭へもどる
【いわき・みさき】
1988年神奈川県生まれ。10代のころに摂食障害や肌荒れに悩んだ経験から、食の大切さを実感して料理の道へ。病院栄養士として3年間勤務したのち、2012年に実践料理家として独立。その後、日本の伝統調味料である味噌に魅せられ、4年で日本各地60カ所以上の味噌蔵探訪を続け、その成果をWEBサイトやレシピ、イベントなどを通じて発信している。
新刊案内