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食べるしあわせ
フルーツをめぐる冒険 フルーツハンター
森川寛信
第5話 フェイクアップルの系譜㊤
 8月17日はパイナップルの日だそうです。
 ずっと昔に英語の授業で、スペル通りに読むとパインアップルであることに気づいて、アップル(りんご)となにか関係があるのかしら、と不思議に思ったのはきっと僕だけではないでしょう。

 フルーツをめぐって旅をしていると、カシューアップル、ワックスアップル、シュガーアップル、ウッドアップル......果物の世界は、名前にアップルを冠するだけで姿かたちは似ても似つかない「フェイクアップル」で溢れています。

バンジャルマシン(インドネシア)のフルーツスタンドでピラミッド状に積まれて売られていたウォーターアップル。シャキシャキした歯ごたえが特徴的ですが、甘みは微かでとても薄味な果物です


なぜ果物の名前にはアップルが多いのか
 ルソン島(フィリピン)の南部都市レガスピ郊外の山奥で車を走らせているとき、はじめて見る果物が篭盛りで売られているのを見かけて、思わず車を止めました。スターアップルと呼ばれるこの果物は、和名を水晶柿と言うそうです。紫色の皮を剥くと現れる、水晶のように半透明なゼリー状の柔らかい果肉にかぶりつくと、こどものときに食べて抜群に美味しかったグレープ味のフルーチェの想い出がフラッシュバックしました。

半分に切ると、星の形に種が入っているので、スターアップルと呼ばれます。ちなみに、りんごも水平方向に半分に切ると、星の形に種が入っているんですけどね


 滅多に見かけることはありませんが、旅先で見つけるとついつい買ってしまうのが、ローズアップル。薄い発泡スチロールのようなパリパリした食感で、味はいまひとつですが、その名の通りバラの芳香を漂わせます。ポケットにひとつ忍ばせておいて、ちょっと気持ちを落ち着けたいときにそっと鼻に近づけます。残念ながら果物は防疫所の持ち込み規制があるため、気軽にお土産として持ち帰ることができません。帰国前の空港でローズアップルを半分に割り、ほんのり甘い果肉を食べると、旅の終わりを感じます。

天然のアロマのようなローズアップル。ハワイのフルーツスタンドのレジ横で売られていました

 パインアップル、スターアップル、ローズアップル。これらの果物は全てアップル繋がりではありますが、実はなんの親戚関係もありません。「アップル」というのは果物の総称。かつて、さくらんぼ以上かぼちゃ未満の木になる丸いものは全てアップルと呼ばれていたそうです。

 たしかに、さくらんぼより小さなアップルも、かぼちゃより大きなアップルもお目にかかったことはありません。ギネスブックによると、世界最大のかぼちゃは約1.2トン! はたして、世界最大の木になる果物ジャックフルーツがかわいく思えてくるような、「巨大フェイクアップル」が発見される日はくるのでしょうか。

中央アジアでよく見かけた、さくらんぼよりも僅かに大きいりんご


「果物の王様」と「王様の果物」
 久しぶりにバリ島(インドネシア)を訪れる機会があり、せっかくなのでバニュワンギというジャワ島最東端の町を経由することにしました。ここからバリ島までフェリーで僅か45分、経由地としては悪くありません。ここには一度訪れてみたかったアグロバニュワンギという果樹園があるのです。

 こういった「ついで」は、旅の満足度をグーンと高めてくれます。ちなみに、45分間フェリーに乗って到着するのはバリ島の西端。そこからバリ島中心部までは深夜の乗り合いバスに揺られて4時間。こういった「ついで」は、旅の疲労度をグーンと高めてしまうことも忘れてはいけません。

ビロード状の毛皮で覆われたベルベットアップル

 町はずれにあるアグロバニュワンギを訪れると、オーナーは不在でしたが、家族経営らしく二代目姉弟が案内してくれました。この果樹園は珍しい赤肉ドリアンが専門ですが、それ以外にも様々な熱帯果樹がところ狭しと栽培されています。「これはまだね。これは食べごろかな」と言いながら彼らが手にとったのは、現地語でビスボルと呼ばれるベルベットアップル。ジャワ島では昔から「王様の果物」と呼ばれているそうです。

 「王様はドリアンじゃないの?」という僕の素朴な疑問に、
 「ドリアンは『果物の王様』だけど、ビスボルは『王様の果物』。ドリアンはここ(ジャワ島)ならどこにでもあるけど、ビスボルは珍しいのよ」と教えてくれました。

 別名マーガリンフルーツとも呼ばれるビスボルは、まるでピーチヨーグルトのような味がしました。昔訪れた中国のスマートフォン市場で売られていた偽アップルが、本物のアップルよりも高性能だった試しはありません。果物市場で売られているフェイクアップルのなかには、本物のアップルより美味なものも少なからずありそうです。

 ちなみに、ビロード状の毛皮で覆われたベルベットアップルの和名は毛柿。非公式ながら日本の国果と称えられることもある柿。日本では、未知の果物には「柿」を冠したのかもしれません。(つづく)


【森川寛信公式ウェブサイト】
http://worldbeater.tv/
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【もりかわ・ひろのぶ】
1981年生まれ。大手ゲーム会社に勤務する傍ら、世界最古の球技「スポールブール」日本代表として、2005年から2013年まで5回連続世界選手権出場(2007年世界10位)。 「大きく学び、自由に生きる」がテーマの学び場「自由大学」にて、「じぶんスタイル世界旅行」の講義を担当するなど、10年以上にわたってパラレルキャリアを実践している。海外出張、スポールブール遠征、世界放浪、世界一周新婚旅行などで訪れた国は50カ国以上。
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