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食べるしあわせ
フルーツをめぐる冒険 フルーツハンター
森川寛信
第2話 王様になれなかったジャックの物語㊤
 日本にはない珍しいフルーツを追い求めると、必ずや早い段階でジャックフルーツに出会うことでしょう。しばしば世界最大の果物という枕詞とともに語られるジャックフルーツ。それを理解することは、フルーツハンターの試金石であるとすら思います。僕にとっても長い間、世界最大の気になる果物でした。中国のスイカの郷と言われる北京郊外の大興を訪れたとき、ふとある疑問が浮かびました。

アジアからアフリカ、南米など広く伝播したジャックフルーツ。
旅好きなら一度は目にしたことがあるのでは?



ジャックフルーツは、本当に世界最大の果物なのか?
 このスイカの郷では、毎年スイカの重量コンテストを開催しています。僕が大興を訪れたとき、地元きってのレストランにはその年のチャンピオンである68.8kgの巨大スイカが鎮座していました。僕の体重よりも重いそのスイカは、圧倒的な存在感です。ところが、僕がこれまで出会ったなかでおそらく最大のジャックフルーツは、たったの27.3kgでした。ギネスブックにあたってみると、世界最大のスイカ159kgに対して、世界最大のジャックフルーツ42.72kgと、その差は開くばかりです。世界最大の果物は、ジャックフルーツではなかったのでしょうか。

中国スイカの郷・大興にて、町一番のレストランに鎮座する68.8kgのスイカ



 気になるその答えは、果物の定義にありました。たまに果物と野菜の違いを尋ねられることがありますが、驚くことにそれらの定義は実にあいまいです。一般的には「木になるものが果物」と言われますが、それだとスイカやメロン、さらにイチゴまでも野菜になってしまいます。あるいは、「生食用が果物で、調理用は野菜」という方がしっくりくるかもしれません。その分類にのっとると、世界最大の果物はスイカになります。きっと正しくは、ジャックフルーツは「世界最大の木になる果物」なのです。

はじめてのジャック
 「ジャック」と呼ばれ多くのフルーツラバーに愛されるジャックフルーツ。僕がはじめてジャックに出会ったのは、アフリカのバナナ王国として有名なウガンダでした。一日三食バナナ生活にちょうど飽きてきたころ、市場でひときわ異彩を放つ巨大なフルーツを発見!心躍らせながら1500シリング(約50円)で購入しました。

ジャックフルーツの中身は、黄色い「繭」でおおわれている。果肉は黄色いものもある。

 親指を立てながらそのゴツゴツした皮をなんとか剥いていくと、繭のような繊維がぎっしりと詰まっています。味のない繊維をさらに掘り進んでいくと、子どもの握りこぶしぐらいの大きさのオレンジ色の果肉がでてきました。掘っても掘っても果肉がでてくる打ち出の小槌のようなそのさまは、世界の食糧問題なんて軽々と解決してくれそうなポテンシャルすら感じます。

 口にいれてみると、これまで食べたどんなフルーツとも違う、まるでハリボー(グミ)のような弾力のある不思議な食感。バブルガムのような強烈な甘みが口の中に広がりすっと消えていきました。蟹でも食べているかのように、夢中で掘っては食べ掘っては食べ……。この独特な味と食感のすっかり虜になり、しまいにはこの巨大フルーツを食べ尽くしてしまったのを覚えています。

 時は流れすっかりその存在を忘れたころ、サンパウロ(ブラジル)郊外をドライブしているときに、僕の記憶のさらに倍ぐらい大きなこの巨大フルーツに再会しました。それはポルトガル語でジャッカと呼ばれていました。南インドのケララ原産と言われ、現地のマラヤラム語で「チャッカ」と呼ばれるこのフルーツは、ブラジルに渡って「ジャッカ」となり、そこから英語の「ジャックフルーツ」となりました。(つづく)

サンパウロ郊外マウアの路上で売られていた「ジャッカ」



【森川寛信公式ウェブサイト】
http://worldbeater.tv/
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【もりかわ・ひろのぶ】
1981年生まれ。大手ゲーム会社に勤務する傍ら、世界最古の球技「スポールブール」日本代表として、2005年から2013年まで5回連続世界選手権出場(2007年世界10位)。 「大きく学び、自由に生きる」がテーマの学び場「自由大学」にて、「じぶんスタイル世界旅行」の講義を担当するなど、10年以上にわたってパラレルキャリアを実践している。海外出張、スポールブール遠征、世界放浪、世界一周新婚旅行などで訪れた国は50カ国以上。
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