大手ゲーム会社に勤務する傍ら、海外出張や世界放浪、世界一周新婚旅行など、これまで訪れた国は50カ国以上! 「新しい場所を訪れたら、まだ見ぬ新しいフルーツを探すことを欠かしません」と語る森川寛信さんの新連載「フルーツをめぐる冒険」がスタートしました。美しく、美味しく、珍しく、そして奥深いフルーツの世界をひもといていきます。 毎年4月になると、ソワソワしていてもたってもいられなくなります。新年度を迎えて気持ちが引き締まる……というわけでは決してなく、ペナン島(マレーシア)のドリアンシーズンの到来が近いという、およそ誰からも理解されることがないであろう理由で。
ドリアン天国ペナン島のドリアンシーズンは6~7月、そしてその食べごろは花が咲いてから約100日後。ということは、逆算するとちょうど4月のこの時期に咲いた花が、その年に現地でお目にかかるドリアンなわけです。今年は美味しく育つかしら。

花が咲いたら、ドリアンシーズンまでカウントダウン!
感動は想像を超えた瞬間に生まれる 昔から僕はとにかくフルーツが好き。旅行や出張で新しい場所を訪れると、スーパーやマーケットでまだ見ぬ新しいフルーツを探すことは欠かしません。なので、当然ドリアンの味も知っていた、つもりでした。
よく言われるように、ドリアンが臭いと感じたことはありません。ただ、あれば食べるといった程度で、好きなフルーツランキングでは残念ながら圏外。そんなドリアンを不動のナンバーワンに押し上げたのが、ペナン島でした。
さかのぼることたぶん7年、はじめてのペナン島は仕事の出張でした。取引先に食事をご馳走になって、〆に向かったのがドリアン屋台。いま思えば、これがただの東南アジア出張あるあるで終わらないところが、ペナン島のすごいところです。
「スイート、それともビター?食べたい味を言ってごらん」
「うーん、じゃあスーパースイートで」
「オーケー!」
急に真顔になって、かわりばんこにいくつかのドリアンを手にとり目利きをはじめるドリアン屋。おもむろに大きなナイフをグサリ、慣れた手つきで固そうなトゲトゲの殻をこじあけます。「さあ食え」と差し出されたドリアンを口に運ぶと……。
「んんんめえぇぇ……」
言葉にできない口福感で満たされました。次はビター、その次はスイート&ビター……。中国の会食で白酒の杯を次々とあけるかのごとく、お腹がはちきれそうになるまで取引先とのドリアンセッションは続きました。

ペナン島のドリアン屋台

屋台で食べるドリアン
ついでにドリアンから、ついにドリアンを食べる旅へ 当時、月1~2回は海外出張で東南アジア各地をウロウロしておりました。出張計画にあたっては、当然ながら日本のカレンダーと現地のカレンダーをチェックします。それがペナン島以降、まず最初にドリアンカレンダーをチェックするようになりました。
ドリアンは産地によって旬が変わります。ペナン島のドリアンシーズンは6~7月ですが、年中主にアジアのどこかでドリアンが旬を迎えているのです。ビフォー・ペナン島とアフター・ペナン島で、出張の組み方も変わってしまったわけです(苦笑)。

メダンにあるスマトラ島No.1のドリアン屋『UCOK DURIAN』
通勤ばりの頻度で通っていたジャカルタ(インドネシア)、クアラルンプール(マレーシア)、シンガポールなどでローカルに人気のドリアン屋台を拠点に、たまにメダン(インドネシア)、ジョホールバル(マレーシア)あたりの中規模地方都市を訪れました。
インドネシアきってのドリアン名産地メダンへの出張が決まったときは、なんとかシーズンの12~1月になるように必死で調整しました(苦笑)。もっというと、何とか現地で仕事をつくってメダンへの出張を決めたんですけどね。
ただ、タイのフルーツ首都チャンタブリ、マレーシアが誇る最高級ドリアン「猫山王」の名産地であるパハン、野生種のドリアンが多くあるボルネオ島あたりになると、さすがに現地での仕事を創り出すのは至難の業です。30代半ばにして探求心に火がつき、ついには週末+1~2日を駆使して、年数回はドリアンハンティングがメインの旅にでるようになりました。(つづく)
【森川寛信公式ウェブサイト】
http://worldbeater.tv/