× close

お問い合せ

かもめの本棚に関するお問い合せは、下記メールアドレスで受けつけております。
kamome@tokaiedu.co.jp

かもめの本棚 online
トップページ かもめの本棚とは コンテンツ一覧 イベント・キャンペーン 新刊・既刊案内 お問い合せ
来て見てイベント
読者モニターと行く初めての歌舞伎見物 エンタメ水先案内人
仲野マリ
第3回 どこの席で観ればいいの?


――2人は、今日観劇する3階の客席に到着したようです。舞台の見づらさを気にしていた加藤さん、3階A席に座ってみた率直な感想はどうでしょう?

加藤さん わー、とても見晴らしがいいですねー。舞台が端から端までよく観えます。
仲野さん 3階席でも意外と楽しめそうでしょ。

――加藤さんから安堵の笑顔が飛び出し、ホッとひと安心です。

確かに、高い位置から見おろすようになるため、舞台全体が見渡せるという点は予想以上。ただ、さすがに役者さんの表情までしっかり肉眼で捉えるのは難しく、2階や3階は双眼鏡(オペラグラス)が必携です。また、同じ3階でも位置によっては花道が観えない客席もあるそうです。見やすさの感覚はその人によって違うので、いろいろな場所を試してみると、お気に入りの席を見つけた、なんて発見もあるかもしれません。

3階A席からの眺め。舞台全体がよく見える

 ところで客席といえば、初心者なら当然気になるのが”価格”について。「いつかは憧れの桟敷席や、舞台間近の1等席で観てみたい」と思う加藤さんですが、果たして歌舞伎座のチケットはいくらぐらいなのでしょう?

仲野さん 通常1等席は1万8000円、2等席は1万4000円なので少々高めというイメージを持っている人も多いでしょう。でも、歌舞伎は1回の上演が約4時間という見応えたっぷりの舞台ですし、のちほど紹介しますが、歌舞伎座は芝居以外にも楽しめる要素が盛りだくさんの劇場です。

「舞台に近い客席で一度洗礼を受けると、上階に行っても、そのときの感覚がよみがえってくるものなの」
そう考えると、私は歌舞伎だけが特別に高い舞台だとは思いません。もちろん、今座っている3階A席(6000円)や3階B席(4000円)のように、お手ごろな客席でも臨場感を十分味わえます。それぞれ客席ごとの楽しみ方があるのです。

――「3階席なら気軽に来られるかも」と納得した様子の加藤さん。仲野さんは「でも……」と話を続けます。

仲野さん 機会があれば、初心者ほど一度は舞台の前列や花道近くの客席で観てほしいというのが私の本音です。磨き抜かれた伝道芸、国宝級のきらびやかな衣装を間近にしたときの感動といったらありません。一度心に刻み込まれた光景は、その後どの席から観てもすぐによみがえり、迫力のある舞台として楽しませてくれることでしょう。

「役者さんに近いと、惚れ惚れしてしまいそうですね」

 それに、前方の客席だと「今、あの役者さんと目が合った!」なんて思うこともしょっちゅう。それはもう、キュンキュンしますよ(笑)。

加藤さん 役者さんと距離が近いのは1等席の醍醐味ですね。それにしても役者さんと目が合うかもってホントですか? キャー、どうしよう!

――好きになった役者さんなら勘違いでも錯覚でも構わないので、「目が合う体験をしてみたい!」と思うがファン心理。役者さんの細かい表情や仕草まで見逃したくないときは、客席にもこだわりが出てくるかもしれませんね。(第4回につづく)


      【仲野マリさんの歌舞伎ミニ講座!】
          「お財布に優しい一幕見席」


 一幕見席といって、好きな幕だけが観られる当日販売のチケットがあります。4階席の自由席で、価格は1000円台とかなりお買い得。価格は公演ごとに異なりますが、すべての幕を観ると、だいたい3階B席のチケットと同じ料金になります。「この芝居だけもう一度観たい」というリピーターのほか、「会社帰りや空き時間にふらっと行きたい」という人にも人気です。


【仲野マリの歌舞伎ビギナーズガイド】http://kabukilecture.blog.jp/
【エンタメ水先案内人】http://www.nakanomari.net


(構成:狭間由恵、撮影:川島省子)


※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『恋と歌舞伎と女の事情』が(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)が好評発売中です。
 新刊の魅力を伝える”新刊ナビ”では、本の見どころ(第1回)装丁(表紙デザイン)の秘密(第2回)をわかりやすく紹介! 新刊発売を記念して開かれた著者・仲野マリさんとイラストレーター・いずみ朔庵さんのトークショーの模様はコチラをご覧ください。
ページの先頭へもどる
【なかの・まり】
1958年東京都生まれ、早稲田大学第一文学部卒。演劇、映画ライター。歌舞伎・文楽をはじめ、ストレートプレイ、ミュージカル、バレエなど年100本以上の舞台を観劇、歌舞伎俳優や宝塚トップ、舞踊家、演出家、落語家、ピアニストほかアーティストのインタビューや劇評を書く。作品のテーマに踏み込みつつ観客の視点も重視したわかりやすい劇評に定評がある。2013年12月よりGINZA楽・学倶楽部で歌舞伎講座「女性の視点で読み直す歌舞伎」を開始。ほかに松竹シネマ歌舞伎の上映前解説など、歌舞伎を身近なエンタメとして楽しむためのビギナーズ向け講座多数。
 2001年第11回日本ダンス評論賞(財団法人日本舞台芸術振興会/新書館ダンスマガジン)「同性愛の至福と絶望-AMP版『白鳥の湖』をプルースト世界から読み解く」で佳作入賞。日本劇作家協会会員。『歌舞伎彩歌』(衛星劇場での歌舞伎放送に合わせた作品紹介コラムhttp://www.eigeki.com/special/column/kabukisaika_n01)、雑誌『月刊スカパー!』でコラム「舞台のミカタ」をそれぞれ連載中。
新刊案内