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食べるしあわせ
職人醤油のつくり方 「職人醤油」代表
高橋万太郎
第12回 宮崎から東アジアへ届ける地域の味わい(下)

醤油は丁寧に充填される
 長友味噌醤油醸造元は陽子さんのご実家で、結婚当初は家業を継ぐ気はなかったそうで……と、ここまではよく耳にする話なのですが、裕一郎さんの経歴を聞いて驚きました。かつてはスイス系の銀行に勤務し、結婚後は陽子さんとともにシンガポール在住。それが、先代の長友昭彦さんが亡くなったことをきっかけに、陽子さんの実家を継ぐことに。
 「100年をこえる伝統をもつ醤油蔵に自分たちがピリオドを打つことは簡単だけど、後悔してしまうかもしれない……と思ったんです。それならば、“やってから決めよう!”と」
 若いころから海外への憧れが強かったという雄一郎さんは、シンガポールに住んでいるうちに、「日本のよさがどんどんわかってきたことも、蔵を継ごうという気持ちを押した」と振り返ります。

 麹づくりから自社で手がける長友味噌醤油醸造元のやり方は、先代が頑なに守り続けたもの。陽子さんのお母さまである長友悠子さんは、「やっぱりうちの醤油は風味が違う。どんなに大変でも自分たちで一から手がけていきたい」と、今も現役で醤油づくりを支えています。

熟成の時を待つ諸味
 ひととおり現場を見学させてもらううちに、熱心に解説をしてくれる若い夫婦の人柄がすっかり好きになってしまい、その場で「ぜひ100mlサイズの醤油を作っていただけないか」とお願いしました。すると、驚いた表情をしながら、「正直、うちの醤油を扱っていただけるとは思っていませんでした」というのです。そのわけを聞いてみると、「だって、アミノ酸液が入っていますし、甘味料もたくさん入っている。県外の商談会などにいくと、もっとシンプルな原材料の醤油じゃないと扱えないよと言われますから」と答えてくれました。

 何でも正直に話してくれるご夫婦だとは、最初から感じていました。さらに、「もし扱っていただけるなら、サッカリンは抜いたほうがいいですよね?」と言います。「県外の大きな小売店さんや問屋さんからはサッカリンは抜いてほしいと言われるので、地元の方へはサッカリンが入ったもの、九州の外には抜いたものと、2種類つくっています」といいます。

 サッカリンというのは、かつてかき氷のシロップなどに使われていた甘味料。砂糖よりはるかに甘いので、砂糖だけでは出せない独特な甘さがあります。ただ、1960年代に発がん性があるのではないかという疑惑をかけられ、悪者扱いに。その後、さまざまな動物実験を経た結果、発がん性は示されず、現在では発がん性物質リストから削除されています。それでも昔のままのイメージで、小売店などからは九州の甘い醤油はほしいけれど「サッカリンは使っていないもの」とのリクエストがあるそうです。

日向灘から南国の風が吹き抜ける
 「地元では、どう言われているのですか?」と聞くと、「サッカリンが入っていないと怒られます。味が変わった、甘さが違うと言われるんですよ」
 地元の方にとっては、この甘さが子どものころから慣れ親しんだ味であり、地域の食文化にとって欠かせないもの。私は、「職人醤油で扱うなら、地元の方がおいしいからと、日常生活で使っているものがいい」と伝えました。

 そんなやり取りからお付き合いが始まって、もう6年ほどになるでしょうか。電話をするたびに、いつも「あ~、万太郎さん!」と元気のよい陽子さんの声が響き渡ります。裕一郎さんはかつての仕事の経験を生かし、頻繁にシンガポールに味噌や醤油を抱えて出向いているそうで、「宮崎からだと東京よりも東アジアの方が近いんですよ」と笑います。こんないつもながらのやり取りからも、ご夫婦の笑顔が想像できて、いつも元気をもらっています。


☆今月の醤油 カネナしょうゆ(宮崎県 長友味噌醤油醸造元)
価格:362円+税/原材料:アミノ酸液、食塩、脱脂加工大豆、小麦、果糖ぶどう糖液糖、カラメル色素、甘味料(ステビア、サッカリンNa、甘草)、調味料(アミノ酸等)、保存料(パラオキシ安息香酸)
詳細はこちらから↓
http://www.s-kura.com/?pid=37859690

【やっぱり九州の醤油は甘い!】


九州の醤油といえば、甘くてどろっとしているのが特徴的。中でも長友味噌醤油醸造元のカネナしょうゆは、南国宮崎・青島の自然の中で造られた醤油をベースに、地元に根ざした甘みをプラスしているので初めての人はその甘さに驚くことも。ただ、“どろっと”ではなく、“さらっと”しているため、魚の煮つけにもぴったり。おかかと一緒にご飯に混ぜておにぎりにするのもオススメだ。
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【たかはし・まんたろう】
1980年群馬県生まれ。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は、一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100mlの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。これまでに全国の400以上の醤油蔵を訪問した。
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