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美しいくらし
フランスの花の村を訪ねてみよう! 写真と文
木蓮
第3回 教えて! みずみずしい写真のヒミツ
 向こう側に何があるのかワクワクするトンネル、花びらのわずかな揺れが見えるようなバラのアップ、刻々と変わる朝焼けや夕焼けの色……。木蓮さんの写真には、多くの人を魅了するみずみずしさがあります。どうしたら、そんなに情感のある写真を撮れるの? そのヒミツをこっそり教えてもらいました。

◇詩情あふれる写真はこうして撮る!
 友人や村めぐりのツアーでご一緒した皆さんが私の写真を見て、「同じ場所に行ったはずなのに……」と言われることがあります。同じ時刻、同じポイントに立っていても、真っ先に目に飛び込んでくるものは人それぞれ。だからこそ、写真って面白いのだと思います。

石壁と水色のトビラに映えるフジ(モンペルー)。
 私の場合、もともと絵画やインテリアの仕事に携わっていたこともあり、自分の気になる場所がとても小さなものだったりします。例えば、家のドアやポスト、窓にかかるブドウの葉やアイアンに絡みつくツタ……。
訪れるたびに「美しい」と思う場所は変化しますから、毎回、違う視点で写真を撮るのが楽しいのです。

1.撮るまでに時間をかける
 とはいえ、写真の撮り方を習ったこともないし、取り立ててテクニックといわれても、そんなものはないんですよ(笑)。
 ただ、写真を撮る前は、さまざまな角度から被写体を眺めます。もちろん、一人でいるときにしかできませんが、しつこいくらい何度も何度も行ったり来たり。高い場所にのぼったり、逆に地べたに座ってみたりと、目線の高さを変え、繰り返しファインダーを覗きます。
 そして、「これ!」と思ったときにシャッターを押す。一瞬の感性で撮った写真もたくさんありますが、「村を可愛く撮りたい!」と思うと、一度、村を一周し、あらためて気になったところに戻り、そこから撮り始めるという感じです。

2.「偶然」を呼び込む

リラ冷えの朝(私の村)
 「この場所がいい!」と決めてから、しばらくじっと待っていることも。そうすると、イヌやネコが歩いてきたり、野鳥が飛んでくることも。そんなうれしい偶然を逃さないように、「今だ!」と思う瞬間がきたら、素早く撮ります。

3.時間で異なる表情も撮ってみよう
 一人のときには、朝の光の加減がピンとこなくて、夕方や夜にまた出直すこともよくあります。昼間に見て、自分の中で「この景色は朝の光の中で撮ったらきれいだろうなあ」というイメージが浮かんだら、翌朝、また訪ねて撮ることも。村めぐりでは、光の加減で異なる表情を見ることも楽しみの一つです。

◇すてきな瞬間を撮るためのアドバイス
 フランスの小さな村を訪れると、普段見ることができない光景に、ついつい写真ばかり撮りがち。ですが、せっかく美しい景色を見ることができたのですから、自分の目で見ることも大切です。

夕暮れの川辺の家並み(べナック・エ・カズナック)

1.感動した瞬間に1枚、その場を離れる前にもう1枚
 美しい夕日に照らされた村や可憐な花を見て感動すると、すぐに写真を撮りたくなりますよね。もちろん、その瞬間をとらえることはとても大切。ですが、一呼吸おいて、ゆっくり自然の景色を楽しんでみてください。
 ぼーっと景色を眺め、少し興奮が収まったころ、もう一度、周りをゆっくり見ながらシャッターを押す。そうすると、きっと最初とは別の写真が撮れると思います。
 そして、その場を立ち去るときに、そっともう1枚。気持ちの変化とともに、映る景色が変わってきます。

2.メモリや代替機も忘れずに
 とはいえ、花にあふれる村はどこを切り取っても絵になるもの。何カットでも写真を撮りたくなる気持ちもよくわかります。
 そこで、大事なアドバイス。写真を撮りすぎて、カメラやスマートフォンのメモリが足りなくなってしまう人たちがたくさんいます。小さな村では、メモリディスクをすぐに買うことはできないと考えておいたほうがいいと思いますので、ぜひ予備をお持ちください。
 また、カメラ本体が肝心なときに限って不具合を起こすことも、意外によく起こるトラブル。あとで後悔しないように、メインのカメラ以外に何か一つカメラ機能のあるものを持ちましょう。

オーヴェルニュの1コマ
3.撮影マナーも忘れずに
 「美しい花の村」は、住人の庭も村全体の景観を担う重要な要素。あまりの見事さに、つい庭に入って撮りたくなってしまうこともありますが、マナーは忘れずに。きちんとお願いすれば、快く庭に招き入れてくださることもあります。
 住人たちは皆、村をこよなく愛し、基本的には訪ねてくれる人たちを歓迎してくれます。その思いに応えるためにも、エチケットやマナーを大切にして、花の村を楽しんでください。

――ピンボケの画像は山ほど残っているのに、肝心なその場所の印象はあまり覚えていない……なんてこと、あるある。雰囲気を堪能したうえで、これぞという決めカット。頑張ります! さて、最終回では、「フランスの花の村」「フランスの美しい村」など村ブームに沸くフランスの新たなムーブメントについて伺います。

(構成・編集部)

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WEB連載「フランス 花の村をめぐるたび」はこちらをご覧ください。
WEB連載「フランスの花の村を訪ねる」はこちらをご覧ください。
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【もくれん】
神戸出身。フランスの「おへそ」にあたるオーヴェルニュの人口200人に満たない小さな村に在住する日本人女性。フランス人の夫との結婚を機に渡仏。さまざまな地域に接しているオーヴェルニュの地の利を生かし、名もなき小さな村を訪ねる旅にどっぷりはまる。フランスの小さな村の美しさに魅了され、「パリだけではないフランスの美しさを伝えたい」と、訪ねた村々をブログで紹介。みずみずしい写真と住んでいる人間ならではの視点で人気を呼んでいる。著書に『フランスの小さな村を旅してみよう』『フランスの花の村を訪ねる』(東海教育研究所)。
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