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美しいくらし
「平林家」ってどんな場所? 「珈琲屋台 出茶屋」&「平林家」
鶴巻麻由子×平林秀夫
第3回 庭から縁側、そして居間へ
 武蔵小金井の住宅街にある「平林家」で、週2回出店する「珈琲屋台 出茶屋」。決まった曜日に店主の鶴巻さんが屋台のリヤカーを引いてきて、庭にちゃぶ台と火鉢、イスを並べ、ぼんぼん時計が12回鳴るころには小さな珈琲屋さんのオープンです。

※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『今日も珈琲日和』を好評発売中です(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。WEB連載「今日も珈琲日和」はこちら、著者・鶴巻麻由子さんのインタビュー記事はこちらです。

――平林家は、秀夫さん、ちさとさん、一人娘のつむぎちゃんの三人家族。一家が暮らす木造平屋の一軒家は、築50年は経つという昭和の趣あふれる場所です。

イラスト:平林秀夫

平林 この家に引っ越すことになったきっかけは、たまたまこの家の大家さんと知り合いになったから。とあるイベントで初めて出会ったときに「こういう家があるけど、誰か住みたい人はいないかな~」と相談されたんです。見に行ってみたら、かみさんが好きそうな建物だったので、ウチが住むべきなんじゃないだろうかと思って、すぐに相談しました。今後の子育てのことなども考えてアパートより一軒家のほうがいいとか、いろんな理由もあったけれど、実は僕は見た瞬間から気に入っていたんです。でも、引っ越しを決めたときには、まさか自分の家の庭に「出茶屋」が出店することになるとは、考えてもいませんでしたね(笑)。

――そうは言っても推定築50年の木造平屋の一軒家。家の中には、あちらこちら手を加えたほうがいいところが、たくさんあったそうですね。

鶴巻 普通にリフォームなんてしたらえらいことに。そこで自分たちの手によるおうち改造計画が持ち上がり、私はもちろん出茶屋に来ていたお客さんも、ワクワクしながら壁を塗り直したり、基礎を修繕したりと、古い家の手直しをみんなで手伝いました。そんなこんなで、無事に引っ越しが終わった後も「みんなの家」というような感情が芽生えていましたね。

平林秀夫さんと奥さんのちさとさん
――だからこそ、鶴巻さんが出店先を探していたときに平林さんが「自宅の庭を提供する」と言ったのはごく自然な流れだったのですね。とはいえ居間まで開放することになるとは……。

平林 「ウチで出茶屋をやったらどう?」と言ったときから、自宅の居間も開放するつもりでした。私もかみさんも、絵を描いたり、写真を撮ったり、アーティストとしての活動をしていましたから、鴨居の部分に作品を飾ってギャラリーのようにして、いろんな人に楽しんでもらいたいと思っていたんです。それなのに最初は出茶屋のお客さんが我が家に上がってくれなくて、むしろ寂しかったくらいでした(笑)。

鶴巻 だから出茶屋が庭に入ったことで、庭から縁側を上がって和室の居間でくつろぐ……。そんな自然な流れができたように感じます。縁側の向かいのイスに腰掛けて家の中を見ると、まるで舞台を見ているみたい。それが面白かったりもします。

――「舞台のように見える」という特徴を生かして、これまでバリ舞踊や落語の会も企画・開催した。これらは平林さんの開催する絵画教室「KyklopSketch(キュクロプスケッチ)」のイベントの一つだ。

「平林家」で開催されている深水祐子さんの「絵本とわらべうたの会」
平林 出茶屋が出店して1年ほど経ったころ、この居間でお絵かき教室ができるんじゃないかと思ったんです。当時、板橋や深川に古い家を改装したギャラリー兼絵画教室のような場所があったので、そこを参考にしました。これまでそういうことをやったことがなかったので、どうなるかは全く予想がつきませんでした。アート感を前面に押し出しすぎると、普段はアートに触れる機会のない人にはとっつきにくい。だからこそ、民家で、珈琲を飲みながら、ふと作品に触れることでじわじわとアートを浸透させたいと思ったのです。

――第1回開催の絵画教室のテーマは「丸を描く」だった。丸は大人も子どもも描くことのできる簡単な図形だけど、丸を一つ描いた後にどうするか? すぐには思い浮かばない人も多いけれど、そのままそっと見守っている。すると、丸をつなげるとか、丸の中に丸を描くとか、自分で次にどうするのかを考え出して、やがて作品ができあがっていく。「自分で考え、発見する場を設けたい」というのが、平林さんの絵画教室の目的だ。

鶴巻 この絵画教室は子どもから大人まで誰でも参加OKなので、屋台営業の合間に私も参加することがあります。でも、参加者の多くは子どもたち。子どもが絵を描くことに没頭している間に、お母さんたちは庭でゆっくり珈琲を飲んでいることが多いですね。でもたまに大人が参加すると、平林さんはうれしそう。子どもより大人のほうが一生懸命になっているのを見かけたりしますよ。日常生活の中では創作に向き合ったり、何かに集中したりする機会はあまりないので、いざ、となると急にスイッチが入っちゃうみたいです(笑)。

――出茶屋のお客さんが絵画教室に参加することもあれば、キュクロプスケッチのイベントで出茶屋の珈琲を知る人が増えることもある。鶴巻さんの出茶屋に平林さんが訪れてから、人と人との楽しい輪が生まれて大きく膨らんでいます。今後、この空間はどう広がっていくのでしょう。最終回は鶴巻さんと平林さんに今後の展望を聞きます。

(構成:山下あつこ、撮影:街道健太)


 平林秀夫挿画展「コトバと言葉の間」を、2016年1月5日(火)~11(月・祝)に武蔵小金井の「平林家」で開催します。鶴巻麻由子さんの『今日も珈琲日和』の出版を記念した特別展です。期間中は「珈琲屋台 出茶屋」も軒先でOPEN!
【開催期間】2016.1.5(火)~1.11(月・祝)
12:00~19:00
※10日(日)は出茶屋のみ14:00~
【会場】お絵描き教室・キュクロプスケッチ(平林家)
【お問い合わせ】キュクロプスケッチメール:kyklopsketch@gmail.com
珈琲屋台 出茶屋メール:dechaya@gmail.com  電話:090-5411-5248(平林)


【「珈琲屋台 出茶屋」のホームページアドレス】
http://www.de-cha-ya.com/

【平林さんのお絵かき教室のホームページアドレス】
http://kyklopsketch.jimdo.com/
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【つるまきまゆこ×ひらばやしひでお】
【鶴巻麻由子】
1979年千葉県生まれ。2004年に東京都小金井市に移り住む。同年、小金井市商工会が主催する「こがねい夢プラン支援事業」に応募し、珈琲屋台のプランが採用される。現在は主に市内3カ所に日替わりで出店。
【平林秀夫】
1969年東京都生まれ。お絵描き教室「Kyklopsketch」主幹。イラスト制作、ワークショップの企画立案、音楽制作、料理研究など、文化系何でも屋。
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