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美しいくらし
「平林家」ってどんな場所? 「珈琲屋台 出茶屋」&「平林家」
鶴巻麻由子×平林秀夫
最終回 この場所の持つ力
JR武蔵小金井駅から少し離れた住宅街にある、築50年以上の木造平屋の一軒家に住む平林秀夫さん一家。その庭で週2回、鶴巻麻由子さんの「珈琲屋台 出茶屋」がオープンします。平日の昼間に珈琲を飲みに訪れるお客さんは、リタイアした方からフリーランスで仕事をする方、子ども連れのお母さんや女子高生までさまざまです。

※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『今日も珈琲日和』を好評発売中です(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。WEB連載「今日も珈琲日和」はこちら、著者・鶴巻麻由子さんのインタビュー記事はこちらです。

イラスト:平林秀夫
――どんな人でもすんなり受け入れてくれるこの雰囲気は、どこから生まれてくるのでしょう?

鶴巻 特別にそういう空気を作ろうとしているわけではありません。お客さん同士が作ってくれているのだと思います。初めて会った人にお客さんが「どこから来たの?」と話しかけて、会話が自然に生まれてくる。何も話さないで静かに珈琲を飲んで帰る人がいてもいい。あまりいろいろ決めつけないで、いろんな人が来てくれて、居心地よく過ごしてもらえたらそれでいい。そんな出茶屋のスタイルに平林家の縁側と居間がプラスしているところが、この場所の持つ力だと思っています。

――珈琲を飲みにここに来て、知っている人に会って近況を話したり、知らない人とお互いの情報を交わしたり。そこに“家”という暮らしの場がつながっていて、居間の和室の畳の上で赤ちゃんのおしめを交換したり、子どもが走り回って転んで泣いたり……。普段のなにげない生活が繰り広げられる。

平林 お客さんは珈琲を飲みながら、目の前で起こる普段の生活を勝手に見て楽しんでいるんだと思います。そのうちに他人事じゃなくなってきて、子どもたちが自分の甥っ子や姪っ子のように思えてくる。大人たちも親戚同士のような雰囲気に。そういえば、あるお子さんの「お食い初め」を平林家でやったこともありますよ。お赤飯を用意して、鯛を焼いて、お吸い物も作って、その場に居合わせた人たち全員でお祝いです。

鶴巻 赤ちゃんがひとくちも食べていない料理を、みんなで食べました。おいしかった~(笑)。子どもがいない人にとっては「お食い初め」の行事を初めて見る機会だったろうし、普段の自分の生活にないことができて新鮮な気持ちになれたんじゃないかな。

平林 誕生日会やクリスマス会のようなイベントは思いつくけれど、さすがに「お食い初め」は想像していなかったな(笑)。想定外の楽しい出来事でした。

――高度経済成長を経て、日本人の暮らしは飛躍的に便利で快適になった一方、人とのかかわりが希薄になり、対人関係のもつれによる事件や問題が連日、世を賑わせる。そんなご時世に現れた、小さな昭和の木造住居を舞台とするゆるやかであたたかな人々のつながり。ここに集う人たちは、ちょっとした「図々しさ」や「おせっかい」の気持ちが巻き起こす誰かのハプニングを、ちょっぴり期待しているところがあるようだ。

平林 今住んでいるこの家は昭和の時代に建てられたものだし、私自身も昭和生まれ。縁側、畳、ふすま、鴨居……こういう雰囲気を「昭和っぽい」と例えてひとくくりにしがちですが、特に“昭和”という時代に限定することはありません。この場所でどんなことをするのかが大事なんだと思います。

鶴巻 「昔に戻りたい」ということではなく、今は今でいいと思うんです。戦争中に生まれた人から若い子までがぽつぽつと来てくれて、この空間で一緒に過ごしているというのが面白いですよね。どんな年代の人でも心の片隅に持っている、人間の根本的な部分を共有しているような感覚がある。この先、どんな世の中になっても、誰もがそれを持っているということが希望になると思います。

――平林さんの楽しいおしゃべりと火鉢の温もり、そして鶴巻さんの珈琲があって、みんなに笑顔が広がる。言葉にしなくても伝わる共通の思いが、この空間の居心地のよさなのかもしれない。

(構成:山下あつこ、撮影:街道健太)



 平林秀夫挿画展「コトバと言葉の間」を、2016年1月5日(火)~11(月・祝)に武蔵小金井の「平林家」で開催します。鶴巻麻由子さんの『今日も珈琲日和』の出版を記念した特別展です。期間中は「珈琲屋台 出茶屋」も軒先でOPEN!
【開催期間】2016.1.5(火)~1.11(月・祝)
12:00~19:00
※10日(日)は出茶屋のみ14:00~
【会場】お絵描き教室・キュクロプスケッチ(平林家)
【お問い合わせ】キュクロプスケッチメール:kyklopsketch@gmail.com
珈琲屋台 出茶屋メール:dechaya@gmail.com  電話:090-5411-5248(平林)


【「珈琲屋台 出茶屋」のホームページアドレス】
http://www.de-cha-ya.com/

【平林さんのお絵かき教室のホームページアドレス】
http://kyklopsketch.jimdo.com/
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【つるまきまゆこ×ひらばやしひでお】
【鶴巻麻由子】
1979年千葉県生まれ。2004年に東京都小金井市に移り住む。同年、小金井市商工会が主催する「こがねい夢プラン支援事業」に応募し、珈琲屋台のプランが採用される。現在は主に市内3カ所に日替わりで出店。
【平林秀夫】
1969年東京都生まれ。お絵描き教室「Kyklopsketch」主幹。イラスト制作、ワークショップの企画立案、音楽制作、料理研究など、文化系何でも屋。
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