ニース生まれのニース育ちで、日本が大好き。2019年からは毎週のようにフランスからインスタライブを配信し、流暢な日本語で地元ニースを中心にした素顔のフランスを伝えてくれると大好評のステファニーさんが、「かもめの本棚」に帰ってきました! 地元っ子ならではの視点で、南フランスの日々の暮らしと街歩きの魅力を教えてくれる12カ月のエッセイ。まずは6月、ラベンダーにまつわるお話から。 編み物、料理、サッカーを見るほかに、マミー(おばあちゃん)が昔から大好きなのはガーデニング。天気のいい日はお昼の休憩以外、朝から晩までずっと植物の手入れをしています。庭はマミーの「生きがい」。わが家の2世帯住宅とマミーの家は同じ敷地内にあって30メートルしか離れていないため、色とりどりの花にあふれたマミーの庭を毎日見ることができて、私はとても幸せです。
マミーの庭では4月からいろんな花が咲きます。ラベンダーの茎も少しずつ伸び始め、5月になるとちょうどいい長さになり、6月には満開に。私の家があるコート・ダジュールは地中海の近くにあるため気候が温暖すぎて、実はラベンダーの栽培にはあまり向いていません。同じ南フランスでもラベンダーの文化が根づいているプロヴァンスとは少し違います。とはいえ、やっぱりラベンダーはきれいでいい香り。それでマミーは自分の庭でラベンダーを育てているのです。
私は、数年前からこのラベンダーの花を乾燥させてサシェ(ポプリの小袋)を作ってお友だちにプレゼントしていました。でもそれだけではもったいないと思っていたとき、ラベンダーをリボンで編み込んだ「ラベンダースティック」の存在を知ったのです。これは18世紀にプロヴァンスで始まった伝統工芸品で、香りづけと虫よけのためにたんすに入れる習慣が生まれたそうです。花嫁さんのプレゼントとしても流行し、お守りにもなったのですが、20世紀からはサシェが工場で大量生産され始め、ラベンダースティックを作る伝統がなくなってしまったそうです。だから今まで私が目にすることがなかったのですね……。
さっそく作り方を調べてみたところ、リボンとラベンダーがあれば大丈夫。編み方はそんなに難しくないのですが、刈り取ったばかりのラベンダーでないと茎が切れてしまい、きれいに編めません。何度も何度も失敗しながら作り続けるうちに、少しずつきれいな形になりました。
以来、私は毎年のようにラベンダーが満開になるのを待つことになりました。毎夜、家族が寝静まってから薄暗い庭に出てマミーのラベンダーを刈り取り、優しい香りに包まれて瞑想のような時間を過ごす。それが楽しみとなりました。カラフルなリボンを結んで、何年も楽しめる美しいオブジェに変身したラベンダー。その香りとかわいい形は、毎日の暮らしの中で私の心を癒してくれます。
【マイ コートダジュール ツアーズ】
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https://www.instagram.com/mycotedazurtours★ステファニーさんが、日本人にも人気のコート・ダ・ジュールやプロヴァンスの観光スポットや通好みの穴場を紹介してくれる連載「ニースっ子の南仏観光案内」も併せてお読みください。