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今回のイチオシ記事は・・・
対談:伝え残したい味を求めて 「職人醤油」代表 × 「酢飯屋」店主
高橋万太郎 × 岡田大介
最終回 醤油で遊ぶ、醤油を楽しむ
 『にっぽん醤油蔵めぐり』の刊行を記念する特別対談も最終回。産地に足を運びながら自分の目と舌で確かめ、伝統的な醤油と寿司の世界に新たな道を切り開こうとしている高橋万太郎さんと岡田大介さんが、普段の醤油との向き合い方や今後の目標について語り合います。家庭での醤油の楽しみ方も紹介しますよ!

高橋万太郎さん(左)と岡田大介さん


――あらためて、醤油の役割についてそれぞれの考え方を教えてください。

高橋 醤油メーカーさんに言わせると、「醤油は縁の下の力持ち」。決して主役ではありません。
 だけど、実際には出汁のような味わいの白醤油に始まり、塩味のきいた淡口醤油、九州や北陸では一般的な甘口醤油、幅広く使える万能型の濃口醤油、赤身の刺し身によく合う再仕込醤油、最も濃厚な溜醤油まで、バラエティー豊かです。料理や素材に合わせて使い分けることで、驚くほど味わいが変わります。それを、もっと多くの人に知ってほしいと思います。

岡田 醤油と寿司は、切っても切れない関係です。寿司がオーケストラだとしたら、醤油はトランペットの位置づけ。トランペットは確かに主役ではありませんが、わき役に徹しているとはいえ、曲の彩りを際立たせる華やかな音色。トランペット次第で音楽そのものが左右されるといってもいい存在です。
 「このお寿司、とってもおいしい!」と思うときは、醤油に助けられていることも多いと思うんですよ。

高橋さんは「利き醤油の会」の講師も務める

「郷土寿司」をテーマに各地で講演もする岡田さん


高橋 うまいこと言いますね!(笑)

岡田 だから、万太郎くんの次のステージとして僕たち寿司職人に提案してほしいのは、「ピンポイントな醤油」。今でも肉ジャガにはこの醤油、コロッケのタネにはこの醤油がいいと勧めているけれど、これからは「イクラの醤油漬けならこれで」「この醤油はキスで」とか、ネタ一つひとつにまで攻め入ってほしい。

 そうなれば、寿司の味わいもさらに広がると思うし、新しい楽しみ方が出てくるかもしれません。醤油業界にとっても寿司職人にとっても、万太郎くんはますます重要な人になっていくと思います。

高橋 これは、大変な宿題をもらってしまいました(笑)。そういえば以前、「このお寿司にはこの醤油が合う」と、遊び感覚でやったことがありましたね。

岡田 それを今度は本格的にやってみませんか? その実験結果を踏まえて新しい提案をしていけたら、お客さんにも喜んでもらえるのではないでしょうか。

――それは楽しみです! ちなみに、プライベートではどんな醤油の使い方をしていますか?

150年の歴史をもつヤマロク醤油の蔵

岡田 『にっぽん醤油蔵めぐり』にも出てくる小豆島のヤマロク醤油さんを訪れた際、タンク仕込みなら3~6カ月でできあがる醤油を、昔ながらの木桶を使い、濃口醤油なら2年半、再仕込醤油は実に4年半という長い時間をかけて熟成させ、理想的な醤油造りをしている現場を見ました。

 それ以来、手塩皿に残った醤油を捨てるのはもったいない、真面目に造っている人に対して申し訳ないと思うようになりました。ですから、家では醤油を必要な量だけ皿に出し、いい意味でケチケチ残さず使っています。子どもはそのことをすぐに理解してくれましたね。

高橋 僕は料理をほとんどしませんが、醤油がおいしいと料理の味わいがさらに増すことは知っています。だから、醤油を店に持ち込むこともあります。
 例えば、回転寿司においしい醤油を持っていくと全然違いますよ。先日、インターネットの寿司ネタランキングでサーモンが1位だったのを見て、回転寿司でひたすらサーモンの皿を取り、さまざまな醤油で味比べをしてみました。その結果は、『にっぽん醤油蔵めぐり』でも紹介しているので、興味があればぜひ読んでほしいですね(148ページ「コラム」)。

さまざまなバリエーションのサーモンで醤油の味比べを実施

――なるほど、そういう醤油の楽しみ方もあるのですね! 読者が醤油と料理の相性を知るための、おすすめの方法はありますか?

高橋 最近、僕がハマっているのは豆腐を使った味比べです。まず、スーパーでいちばん安い50~60円の豆腐と、高級な500円くらいの豆腐の2種類を用意します。最初は何もかけないでそのまま味わい、次に淡口醤油と溜醤油をかけて、どちらがおいしいか判断してみます。

 この実験をセミナーでやったところ、高い豆腐には9割の人が「淡口醤油が合う」と感じ、安い豆腐には9割が「濃口醤油が合う」という真逆の結果に。ひとくちに豆腐といっても、中身が変わると相性のいい醤油が全く変わるという体験をすると、みなさん「おぉ!」と感動する。
 理由づけとしては、高い豆腐はもともと「豆の味がして甘みがある」ので、しょっぱくてうまみを抑えた淡口醤油のほうが、甘みがより引き立つこと。一方の安い豆腐は「やや苦みやえぐみがある」ので、濃くてうまみの高い濃口醤油をかけると、醤油の味で豆腐がぐっとおいしくなることが挙げられます。

 このような違いを実感すると、刺し身に合う醤油も1本ではないことがわかってきます。相性のいい傾向としては、白身魚には淡口醤油、赤身の魚には溜醤油を合わせると、それぞれの魚をよりおいしく食べることができますよ。

――うちでも早速、試してみます! 最後に、お二人の今後の抱負を聞かせてください。

岡田 万太郎くんは、全国を回って地元に愛されているこだわりの醤油を100ミリリットルの瓶に入れて売っている。今後、醤油以外でも誰かがやるべき「型」をつくっているのだと思います。日本の伝統的なもので皆が好きなもの、でも、まだ知られていないものを丁寧に集めていくと、きちんとお客さんに伝わることを最初に見せてくれた人。その社会的な影響は大きいと感じるし、僕は寿司でそれをやらないといけない。

 郷土寿司は誰も手をつけていない分野なので、これからも全国に足を運び、昔から現在まで引き継がれた寿司を調べ、そこからさらに新しい寿司を生み出し、情報発信することをライフワークとして続けていきたいですね。

高橋 ますます岡田さんから目が離せません(笑)。僕はこの先、「きちんと醤油の目利きができること」をいちばんの強みにしていきたい。まだ日の目を見ていない“ちゃんとした”醤油にスポットライトが当たるように僕らが考え、行動していくことが、よりよいものづくりにつながると感じています。そのためには、もっともっと情報の発信力を上げていかないと。
 また、お客さんが求めるもの、望んでいるもののさらに裏側まで想像して、「醤油と料理のおいしい関係」を広く提案していきたいと思います。



――二人の話を聞いているうちに、今までの醤油の常識が変わりました。これまで料理と醤油を合わせる楽しみを知らずに、損をしていたかも!? 日ごろから使い慣れた醤油のほかに、淡口を1本、濃いめの醤油を1本常備しておくだけで、いつもの家庭料理がとびきりのごちそうに変身する予感がします。これをきっかけに、皆さんも食への「好奇心」をふくらませてみては? 高橋さん、岡田さん、ありがとうございました!

(構成・宮嶋尚美)

「赤身」と「白身」に合う醤油とは?
7月21日(日)、酢飯屋でイベント「一魚一醤」を開催



 この特別対談で醤油と寿司のおいしい関係について盛り上がった高橋さんと岡田さん。話題にも出た「このお寿司にはこの醤油が合う」との相性を探る、食いしん坊の皆さん向けのすてきなイベントが実現します! ぜひご参加ください。

日時:2019年7月21日(日)午後12時~1時30分
会場:酢飯屋(東京都文京区水道2-6-8)
会費:6,000円(税別)
イベントの詳細および予約方法はコチラから

全国400以上の醤油蔵を訪ね歩いた“醤油のプロ”高橋万太郎さんが厳選した45蔵と「この1本」を紹介する

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※書籍の元になった連載「にっぽん醤油蔵めぐり」はコチラから、「職人醤油のつくりかた」はコチラからどうぞ

【職人醤油―こだわる人の醤油専門サイト】 https://www.s-shoyu.com
【寿司・酢飯屋 公式サイト】 https://http://www.sumeshiya.com
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【たかはし・まんたろう × おかだ・だいすけ】
●たかはし・まんたろう 1980年群馬県前橋市生まれ。立命館大学卒業後、㈱キーエンスにて精密工学機器の営業に従事し2006年に退職。伝統産業や地域産業の魅力を追求していきたいとの思いから、180度転身して07年に㈱伝統デザイン工房を設立する。現在は、蔵元仕込みの醤油を「気軽に味比べして味わいの違いを楽しみ、醤油の奥深い世界への入り口にしてほしい」と、100ミリリットルの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。自ら軽トラックを駆って、まだ見ぬ敬愛すべき職人とおいしい醤油を求め、全国の醤油蔵を訪ね歩いている。

●おかだ・だいすけ 1979年千葉県野田市生まれ。大学浪人中、母親の急死をきっかけに18歳で食の世界へ。地元の割烹料理店、東京・秋葉原の寿司店で修業し、24歳のときに独立。八丁堀の自宅マンションの一室で1日1組限定の寿司屋を開く。次第に自分が扱うサカナから野菜、調味料、器などの生産者や現場に興味を持ち、全国をめぐり始める。並行して、各地の郷土寿司にも関心を向ける。2008年、東京・文京区にカフェ・ギャラリーを併設する完全紹介制・完全予約制の「酢飯屋」を開業。日々、伝統と革新の寿司の道を究める。
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