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子どもの世界は無限大 ミュージシャン×版画家
石川浩司×蟹江 杏
第2回 再確認した「子ども」の魅力
 本日(2017年5月22日)に書店発売がスタートした、版画家・蟹江杏さんの初エッセイ集『あんずとないしょ話』。その土台となったのが、“旧知の仲”というミュージシャンの石川浩司さんをパートナーに迎えてWEBマガジンに連載した「ママとパパには内緒だよ」です。年齢も性別もジャンルも異なる2人の間には、どんな化学反応があったのでしょう。

――連載当初は杏さんが1人で子どもと向き合い、それをエッセイと版画で表現するスタイルでしたが、やがて石川さんがパートナーとして加わってパワーアップ。前編は石川さんの軽妙なエッセイ、そして後編では杏さんが版画に込めた思いを語る2部構成で展開していった。

 今振り返ると、一人で子どもと向き合っていたときは「版画家・蟹江杏」として何かしなくては……と考えすぎていたところがあったと思います。石川さんが一緒にいてくれたおかげで肩の力が抜けたのかな。石川さんが横にいるからこそ、一人の人間として子どもと素直に向き合えていた気がします。
 この“いい意味”での脱力が、版画にも少しは影響を与えたのかもしれません。石川さんがクマ、私がウサギで登場したり、現実を映し出すことから離れて、より自由な絵を描くようになりました。でも、すべての絵に共通するのは、話をした子どもたち自身が登場していること。やっぱり実際に会ったら、その子の姿を描いてあげたくなりましたね。


――杏さんの創作活動に少なからず刺激を与えた石川さん。いつも軽妙な発言で場を和ませてくれるのだけど、人との接し方はとっても真面目。そんな石川さんの目を通して見えた子どもたちの姿が、連載では独特のリズムを持った文章で表現されている。

石川 どんな子どもにもいいところがあるから、エッセイを書くにあたってはその部分を膨らましてあげることを心がけました。褒められて伸びる子どもが多いはずだし、そういう部分を見つけてあげることが大人の責任だと思うんだ。
 実は僕、後輩のミュージシャンにコメントを求められることが多いのですが、そんなときもできるだけいい部分を見つけてあげるように心がけています。残念ながら褒める部分がほとんどない場合には、「あそこをこうすれば、もっとよくなるんじゃないかな?」と具体的な代案を伝えるようにしている。自分で考えることも必要なのかもしれないけれど、何かヒントを欲しがっていることも多いからね。ただ単にダメだと言っても意味がなくて、結果として成長ができない。だからこそできるだけ前向きなアドバイスをすることが、その人のためになるはずだと考えています。

――子どもたちと向き合うことで、自分自身の子ども時代を振り返ることが多かったという石川さんと杏さん。でも、子どものころの自分たちと比べると、みんなとっても素直でいい子に思えたようで……。

 たとえば中学3年生のまりちゃんは、お父さんの仕事の都合で転校を繰り返しているけれど、とっても明るく素直でいい子。私の中学生のころとはあまりに違っていて、衝撃的でした。大人たちは「今の時代の子どもは……」ってよく言うけれど、周りが騒ぎ立てるほど、今を生きる子どもたち自身は何もゆがんでいないと感じましたね。そういう子どもたちが、自由な、健康な精神のまま、自分の力を十分に発揮できるような社会になったらいいなと思いました。

――子どもが集中力を保って大人と会話できる限界を考えて、毎回のインタビュー時間は1時間弱程度。限られた時間の中でたくさんお話しする子、緊張してあまり話せない子など十人十色だったが、一緒に過ごした時間の中で2人が感じた、得たことの多さには驚かされる。この辺りの感受性の高さがアーティストたるゆえんなのだろう。次回(最終回)は、子どもとの接し方について聞きます。


(構成:山下あつこ、撮影:街道健太)

【石川浩司のひとりでアッハッハー】
http://ukyup.sr44.info/

【蟹江杏さんのホームページアドレス】
http://atelieranz.jp/


※蟹江杏さんの新作展「旅する絵」が、2017年6月4日(日)まで東京国際フォーラム1階のフォーラム・アート・ショップ内ギャラリーで開催中です。10時~20時(最終日は17時閉場)。会場内にて、杏さん初の版画エッセイ『あんずとないしょ話』も販売しています。ぜひお立ち寄りください。

※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『あんずとないしょ話』が2017年5月22日に発売されました(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。WEB連載「あんずとないしょ話」はこちらをご覧ください。WEB連載「ママとパパには内緒だよ」はこちらをご覧ください。
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【いしかわこうじ×かにえあんず】
◆石川浩司◆1961年東京都にて逆子生まれ。神奈川県・群馬県育ち。バンド「たま」にてランニング姿でパーカッション、ボーカル担当。90年に「さよなら人類」でメジャーデビュー。同曲はヒットチャート初登場1位となり、レコード大賞新人賞などを受賞。2003年に解散後はソロで「出前ライブ」などの弾き語りおよびバンド「ホルモン鉄道」「パスカルズ」などで活動中。旅行記やエッセイなどの著作も多数ある。また今年4月には、10代女子2人とのユニット「えんがわ」としてアイドルデビューも飾った。

◆蟹江 杏◆東京都生まれ。ロンドンにて版画を学ぶ。NPO法人3.11こども文庫理事長。全国の百貨店や画廊で展覧会を行うかたわら、新宿区クリエーターズフェスタなどの都市型アートイベントにおいて子どもアートプログラムのプロデュースなどを手がける。東日本大震災の被災地の子どもたちに絵本や画材を届ける活動や、文部科学省復興教育支援事業としての講師やコーディネーターも務めている。
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