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子どものこれから
子どもの世界は無限大 ミュージシャン×版画家
石川浩司×蟹江 杏
第1回 一緒に過ごした「内緒」の時間
 版画家・蟹江杏さん初となるエッセイ集『あんずとないしょ話』が、2017年5月22日に発売されます。子どもたちとのおしゃべりを通して引き出した幼い心の奥底にあるホンネを、創作活動の原点ともいえる杏さん自身の子ども時代を振り返りつつ、エッセイと版画で表現した一冊です。この本の刊行を記念して、WEBマガジン連載時のパートナーでもあるミュージシャンの石川浩司さんと一緒に、子どもたちとのこれまでの出会いを振り返ってもらいました。

――新刊『あんずとないしょ話』に登場するのは、幼稚園児から中学生まで16人の子どもたち。そのうち、石川さんと杏さんの2人で一緒に話を聞いたのは10人。さて、その印象は?

石川 りおんくんとしおんくんは、僕が連載のパートナーとして加わっていちばん最初に話を聞いた男の子。2人のことは今でもよく覚えています。自閉症の双子の小学生、と聞いて最初はちょっと身構えちゃったけれど、話してみたら普通の男の子たちだった。もしかしたら気持ちに波があって、いろんな瞬間があるのかもしれない。でも、少なくとも僕と杏さんと話していた瞬間は“元気な男の子たち”っていう印象だったな。
そういえば、2人とも自分たちがデザインしたTシャツを着ていて、それもカッコよかったな~。しかも、お母さんがつけたTシャツのブランド名が『JIHEIJIN-rioshio』。我が子の才能を見抜いているお母さんもすごい!

 北千住のこうたろうくんも印象的でしたね。インタビュー中は恥ずかしそうであまり話さなかったのに、弟が来た瞬間、弾けるように飛び出して行っちゃった。大人に囲まれて、ものすごく緊張していたんだなって思いました。

――年齢を重ねてそれなりの大人になったはずの私だって、初対面の人と会うときにはちょっぴり緊張する。そう思えば、幼い子どもたちの緊張感はどれほどだったことか。でもその半面、「心を開いてくれたな」と思えた瞬間もきっとあったはず。

石川 粘土で作った映画のキャラクターやキリン、木材を切るところから手がけた木箱、ストーリーから考えた絵本など、次々に自慢の作品を披露してくれたかおるくんがそうだったけれど、“自分が本当に興味のあるもの”の話になった瞬間、子どもたちの目が輝きました。

 自分の宝物を見せてくれた、つむぎちゃんもそうでしたね。彼女の宝物は古いビーズ、お菓子のリボン、死んだ虫の羽、梅干しの種、小石などなど。どれも大人から見たら取るに足らないものなのかもしれません。でもそれらを見ていたら、私自身が大切にしていた子ども時代の宝物のことを思い出し、とても懐かしい気分になりました。

石川 にやちゃんは、お菓子の小箱に入れた手づくりの占いを持ってきてくれたよ。占いの結果は、杏さんが『絵が上手くなるかも』、僕は『人気者になれるよ』。お互いにビミョーに当たっていたのも面白かったね。

 毎回、好きな食べ物や興味のある遊びに関する質問から、会話を進めることにしていましたが、子どもはとっても素直。自分に興味がある話にしか反応してくれませんでした(笑)。これがもしも大人だったら、質問されたことに対しては何かしら返事をすると思いますが、子どもは違う。それでも、女の子たちはまだ私たちに合わせようとしていてくれたのかもしれません。

――広くいわれることではあるけれど、「同じ年齢だと女の子のほうが大人」というのが2人の共通意見。

 同級生の女の子から2回も告白されたエピソードを教えてくれた、はるきくん。大人顔負けの恋バナに、最初はとても小学生とは思えないような気がしましたが、もしかしたら、それはさっきの話に出た「自分が興味を持っていること」が、虫とかアニメとかじゃなくて、「モテる」ってことだったのかも。

石川 そうはいっても、女の子だって素顔はやっぱり子ども。遊園地に一緒に行ったなつみちゃんは、お父さんやお兄ちゃんのことを冷静に分析して、きれいな敬語で答えてくれた。まだ小学1年生だったけれど十分に大人だったよね。でも、最後に遊園地のチケットをあげた途端に顔がパァっと輝いて、急に年ごろの子どもに戻っちゃった。きっと、ちょっと頑張って大人の受け答えをしていたんだよ。

――「時間をかけてその子と向き合ううちに、自然と会話のポイントが見つかった」と話す杏さん。だからこそ、今さらながら会話を交わすことの大切さを実感したという。石川さんと杏さんの2人が、子どもたちの世界にうまく巻き込まれて生まれた特別な時間。次回はエッセイ執筆と版画制作の舞台裏を教えてもらいます。


(構成:山下あつこ、撮影:街道健太)

【石川浩司のひとりでアッハッハー】
http://ukyup.sr44.info/

【蟹江杏さんのホームページアドレス】
http://atelieranz.jp/


※蟹江杏さんの新作展「旅する絵」が、5月13日(土)~6月4日(日)に東京国際フォーラム1階のフォーラム・アート・ショップ内ギャラリーで開催されます。10時~20時(最終日は17時閉場)。会場内にて、杏さん初の版画エッセイ『あんずとないしょ話』を先行販売します。ぜひお立ち寄りください。

※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『あんずとないしょ話』が2017年5月22日に発売されます(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。WEB連載「あんずとないしょ話」はこちらをご覧ください。WEB連載「ママとパパには内緒だよ」はこちらをご覧ください。
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【いしかわこうじ×かにえあんず】
◆石川浩司◆1961年東京都にて逆子生まれ。神奈川県・群馬県育ち。バンド「たま」にてランニング姿でパーカッション、ボーカル担当。90年に「さよなら人類」でメジャーデビュー。同曲はヒットチャート初登場1位となり、レコード大賞新人賞などを受賞。2003年に解散後はソロで「出前ライブ」などの弾き語りおよびバンド「ホルモン鉄道」「パスカルズ」などで活動中。旅行記やエッセイなどの著作も多数ある。また今年4月には、10代女子2人とのユニット「えんがわ」としてアイドルデビューも飾った。

◆蟹江 杏◆東京都生まれ。ロンドンにて版画を学ぶ。NPO法人3.11こども文庫理事長。全国の百貨店や画廊で展覧会を行うかたわら、新宿区クリエーターズフェスタなどの都市型アートイベントにおいて子どもアートプログラムのプロデュースなどを手がける。東日本大震災の被災地の子どもたちに絵本や画材を届ける活動や、文部科学省復興教育支援事業としての講師やコーディネーターも務めている。
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