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子どものこれから
絵本で学ぶ子どもの権利 早稲田大学教授
川名はつ子
最終回 条約を基盤に子どもの支援を
――2月から3月にかけて、都内と京都市内で子どもの権利条約を広めるためのイラスト展「絵本から見る子どもの権利~スウェーデン人作家の贈り物~」を開催し、3月末には『はじめまして、子どもの権利条約』を出版されました。こうした活動の目的はどんなところにあるのでしょう。

 里親制度を専門とする大学教員として、またソーシャルワーカーとして、子どもや親にどのようにかかわっていけばよいのかを模索する中、さまざまな出会いを通じて私が強く思うようになったのは、「社会的養護が必要な子どもたちの支援にあたっては、子どもたちの頭越しに生き方を決めてしまうことのないように、子どもの権利条約を基盤に据えなければならない」ということでした。それが、今回のイラスト展の開催と絵本の出版の原動力になりました。 

 私は大学の講義で、「おならをする自由」を例に子どもの権利について説明しています。自分の部屋があれば、一人で誰に気兼ねすることもなくおならができるでしょう? でも、大勢の子どもたちがいる施設の部屋でおならをしたら、からかわれたりして「いじめ」の原因になるかもしれません。施設で生活する子どもには、気持ちよくおならをする自由もないことが想像されます。

 子どもたちが一人の人格として尊重されるためには、周りのおとなたちがこうした日常の繊細なレベルまで理解する必要があると思っています。「おとなたち」とは、ソーシャルワーカーなど子どもの支援に携わる専門家だけの話ではありません。人は親になります。親にならなくても、地域社会の中で子どもとの接点はたくさんあるでしょう。子どもに対する際には必ず、「子どもの権利条約」を思い出してほしいのです。

 ノーマンさんのイラストは子どもの権利の重要性について、頭だけでなく心に訴える力強さを持っています。文章を読んで学ぶことも大切ですが、絵を見て想像したり考えたりすることで、子どもの権利をより身近に、具体的に感じられるのではないでしょうか。

――確かにノーマンさんのイラストは、子どもの状況について雄弁に語っているように思います。

 両手に包まれて子どもが眠っているイラストは、第20条「家庭環境を奪われても、ふさわしい環境で生活できる権利」を表しています。里親とともに暮らしているある子どもは、「この絵を見て、なぜ自分が里親の家にいるのかがわかった」と言いました。温かい家庭で、信頼できるおとな(里親)の元で暮らすことの大切さは、子どもにもしっかりと伝わったのです。

 ぜひ、自由な気持ちでイラストと向き合い、さまざまに思いを馳せてください。虐待や難民などといった大きな問題の解決ももちろん重要ですが、子どもには、友だちと遊んだり、日々の生活を楽しんだりする権利もあるのです。そうした基本的なことから、もう一度考えてみてください。そして、子どもの問題を他人ごとではなく自分自身の問題だと認識し、共感を持って理解してほしい――それが私の願いです。

 今回出版した『はじめまして、子どもの権利条約』やイラスト展を通じて、これからも「子どもの権利条約」を基盤とした支援を訴え、実践していきたいと思っています。

(構成・川島省子)

※WEB連載原稿に加筆してまとめた絵本『はじめまして、子どもの権利条約』(監修:川名はつ子、発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)、絶賛発売中です。WEB連載「はじめまして、子どもの権利条約」はこちらをご覧ください。

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【かわな・はつこ】
1971年、お茶の水女子大学文教育学部卒業。博士(医学)帝京大学。社会福祉士。太平出版社編集部、帝京大学医学部助手、帝京平成短期大学福祉学科講師を経て、2003年4月から早稲田大学。専門は子ども家庭福祉(養子里親制度・障害児)。
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