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子どものこれから
絵本で学ぶ子どもの権利 早稲田大学教授
川名はつ子
第2回 ノーマンさんのイラストとの出会い
――川名先生が3月に出版した『はじめまして、子どもの権利条約』には、スウェーデンの画家チャーリー・ノーマンさんが描いたイラストが使われています。どのような経緯があったのでしょうか。

 ノーマンさんのイラストと出会ったのは、第1回でお話した李亮喜(イ・ヤンヒ)教授の講演を聴く3年前の2005年。私が研究のためにスウェーデンのストックホルム郊外の谷沢英夫さん宅にホームステイさせてもらったときでした。お連れ合いのインゲルさんが見せてくれた、子どもの権利条約を紹介したブックレットに、ノーマンさんのイラストが掲載されていたのです。子どもの置かれた状況を見事に表現している絵に強く魅了されました。

第2条「差別の禁止」を表現したイラストについて説明する川名先生
 それまでにも、さまざまな学者や団体が「子どもの権利条約」に関する本を出版していましたが、いずれも条文の解説を主とするものばかり。このブックレットのように、世界中の子どもたちが置かれている状況についてイメージを喚起させ、考えさせる本は初めてでした。

 たとえば、第2条のイラストには肌の色や衣装が違う子どもたちが描かれていますね。第2条は「差別の禁止」を定めた内容です。ひと目見れば、子どもたちを取り巻く状況を察し、条文が何を定めているかを想起することができるのです。

 「これを教材として授業で使いたい」――。そう思った私は、思わずコンパクトカメラでイラストの写真を撮りました。秋の始めの北欧は朝になってもまだうす暗く、しかも写真の技術はおぼつかない(笑)。それでも、無我夢中で撮影しました。

――実際に教材として使っての反応はどうだったのでしょう。

 私が所属している早稲田大学人間科学学術院や通信教育eスクールの講義で、スライドにした10数枚のイラストを学生に見せ、それぞれに該当する条文を紹介したうえで、一番好きなイラスト、気になったイラストについてレポートを書いてもらいました。その結果は、私の意図したとおり! 子どもが置かれた状況に思いを馳せ、各自の経験に照らして子どもの権利を守ることの重要性についての理解を深めるとともに、その実現のために何をすべきかを考察する素晴らしいレポートが、学生たちから続々と提出されたのです。ノーマンさんのイラストが持つ普遍性とイメージ喚起力が、見る人に「子どもの権利」について真剣に考えるきっかけを与えるのだと確信しました。

チャーリー・ノーマン氏のイラストは、子どもが置かれた状況を雄弁に物語る
  ノーマンさんのイラストとの出会いに続き、李教授の講演を聴いたことで、私は、「子どもの権利条約をより多くの人に知ってもらうために、イラストの展覧会を開き、本を出版しよう」と真剣に考えるようになりました。「ノーマンさんに会って、イラストの使用許可をいただきたい」との念願がかなったのは、10年後の2015年のこと。ノーマンさんと面識がなかったにもかかわらず、谷沢さんが私の思いに応えて居どころを探してくれたのです。夢を見るような気持ちでストックホルムのホテルでお会いしました。

 実際にノーマンさんと会ってお話ししてみると、年齢が同じだとわかったこともあって意気投合。イラストの意図や印象などについて語り合いました。そして、日本で子どもの権利条約を広めるためにイラストを使わせてほしいとお願いしたところ、快く承諾してくれました。
 こうして開催したのが「絵本から見る子どもの権利~スウェーデンの画家からの贈り物~」と題したイラスト展です。2016年11月に埼玉トヨペットのショールーム内ギャラリーで、今年2月には早稲田キャンパス内のワセダギャラリーで開き、また3月末からは京都府の観桜祭期間中に、府庁旧本館(重要文化財)に出展することができ、ともに大きな反響がありました。

――次回(最終回)は、ノーマンさんのイラストを通じて川名先生が本当に伝えたいことについて教えてもらいます。

(構成・川島省子)

※WEB連載原稿に加筆してまとめた絵本『はじめまして、子どもの権利条約』(監修:川名はつ子、発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)、絶賛発売中です。WEB連載「はじめまして、子どもの権利条約」はこちらをご覧ください。


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【かわな・はつこ】
1971年、お茶の水女子大学文教育学部卒業。博士(医学)帝京大学。社会福祉士。太平出版社編集部、帝京大学医学部助手、帝京平成短期大学福祉学科講師を経て、2003年4月から早稲田大学。専門は子ども家庭福祉(養子里親制度・障害児)。
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