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“旅のメニュー”ができるまで 『旅の食堂ととら亭』シェフ
久保智子
最終回 ととら亭ができるまで、これから
 世界を旅し、そこで出会った料理を再現し続けている久保さん夫婦。料理を担当するのは妻の智子さんですが、でも、どうやって“旅の料理人”になったの? インタビューの最終回では、新刊『世界まるごとギョーザの旅』にも載っていない、ととら亭のアナザーストーリーです。

――旅がきっかけで出会ったという久保さんご夫妻。智子さんの旅行好きはいつから始まったのですか?

 積極的に旅を始めたのは北海道の大学に進学してから。キャンプをしたり、電車や夜行バスを使って出かけたり、北海道内はもちろん国内のいろんなところに行きました。私たち夫婦の出会いも旅先だったんですよ。ととら亭といえば海外旅行のイメージが強いと思いますが、実は私が海外に出かけたのは30歳になってから。それまでは全く興味がなくて……。えーじと一緒に1999年に香港に行ったのが最初です。そのときはまさか、その後の人生でこんなに海外に行くことになるとは考えてもいませんでしたね(笑)。

――そうして今日までに世界の50カ国以上を訪れているというから驚き。その旅先での体験をもとに、作り方も全くわからない料理を再現して店で提供する智子さんだが、料理人を目指したのも、えーじさんと付き合い始めてから。

 母が料理上手でおやつから毎日の食事まですべてが手作りだった影響からか、小さいときから料理が大好き。でも、学生時代には自分が料理人になるとは思ってもいませんでした。
 大学の学びの延長で食品成分分析会社に就職しましたが、その後、旅好きが高じてペンションに住み込みで働きながら、本当にやりたい仕事を探していたんです。そんなとき、知り合いから紹介された箱根のオーベルジュで、尊敬するフランス料理のシェフと出会えたことが私の料理人としての人生の始まりになりました。

――料理学校に通うことなく、いきなり実践の道へと飛び込んだ智子さん。初心者とはいえ、少人数のスタッフで営むオーベルジュでは貴重な戦力で、とにかく何でもやらなければいけなかった。

 でもその反面、自家製のパンやパスタづくりなど、私が「やってみたい」と思ったことをシェフは何でも自由に挑戦させてくれました。それが、現在の“旅のメニュー”づくりに役立っている。その後に働いたドイツ料理レストランのオーナーにも、たくさんのことを教わりました。この方々との出会いがあって、今の私があると感謝しています。

――フランス料理とドイツ料理のレストランで修業を積んだ後、2010年3月に東京・中野区野方に『旅の食堂ととら亭』を開業した久保さん夫婦。2人が旅先で出会った感動の味を再現した旅のメニューを期間限定で提供するのが特徴の店だ。でも、ポーランド料理を出したかと思ったら次はエチオピア料理と、おおよそ3カ月ごとに違う国の料理を提供しなければならない。店を開業するにあたって不安はなかったのでしょうか。

 実は私、ものすごく心配性で、準備はバッチリしないと気が済まない性格。夫婦2人ともそういうところは似ているのですが、えーじは「やる!」と言ったら何が何でも実行するタイプだから実現できたんでしょうね。きっと私一人だったら、お店をやりたいと思っていても始められなかったはずです。

――とはいえ開業以来7年間、さまざまな国の料理を再現できたのは智子さんの料理の才能があってこそ。2人の持つそれぞれのよさが生かされて、今日のととら亭がある。

 なるべく多くの方に利用してもらいたくて、ととら亭では開業当初から期間限定の“旅のメニュー”のほかに、オムライスやムニエルといった定番の洋食メニューも用意してきました。このスタイルは今も基本的には同じですが、今後は人気のあった旅のメニューを定番に加えるなどして、もっとたくさんの国の料理を一度に味わってもらいたいと考えています。
 これまで50カ国以上を旅して感じたのは、日本ほど、さまざまなジャンルの料理を普段の食卓でも積極的に取り入れて食べる国は少ないということです。だからこそ、「各国のおいしい料理を紹介する」という『旅の食堂ととら亭』ならではの特色をもっともっと出していけたらいいですね。

――ととら亭の「ととら」とは、南米大陸のペルーとボリビアに広がるチチカカ湖畔に群生する葦(アシ)の名前からつけられた。久保さん夫婦の乗った「ととらの小さな葦舟」は、支流からいよいよ本流へとさしかかる。舟の行方から、今後も目が離せない。

(構成:山下あつこ)


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【「旅の食堂ととら亭」のホームページアドレス】
http://www.totora.jp/
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【くぼ・ともこ】
1970年群馬県高崎市生まれ。食品成分分析会社、求人誌営業を経て料理業界へ転身。フランス料理、ドイツ料理のレストランで修業した後、夫にして旅の相棒でもあるえーじとともに、2人が旅先で出会った感動の味を再現した“旅のメニュー”を提供する『旅の食堂ととら亭』を2010年に開業。旅の料理人となる。見かけは地味だが、スリルとサスペンスに満ちたジリ貧の旅を好む。特技は世界中どこでも押し通す日本語を使った値切り。
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