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TOKYO銀座めぐり
イラストレーター(文と貼り絵)
きりたにかほり
第1回 戸越銀座
過ぎ去りし、3月の火曜日。
桜満開の戸越銀座に参りました。


目黒川の桜を下に見ながら、JR五反田駅で乗った3両の電車。
窓越しの風景は、どれも静かに緑萌えていて
春に向かうように穏やかな心地だったと思い出します。
そんな空気にうとうとする間もなく、
たった2駅で、戸越銀座駅にたどり着きました。

改札を出てすぐ、線路をまたぐように東西にのびるのが、
戸越銀座商店街。
日本一長い商店街は平日の午後にもかかわらず、
人通り多く、にぎやかです。

連載はじめましての今回は
どきどきの初取材につきあってくださる編集さんと
ここで待ち合わせ。

せっかくの心強いお申し出にもかかわらず、
駅そばにあった「だんご」ののぼり旗を眺めている間に、
うっかりぼんやりすれ違うところでした。

どこから出てきたんですか? の質問に
「だんごです」と答えられるはずもなく
訝しがられながらの出発です。


ところで「TOKYO銀座めぐり」の連載にあたり、
ここがいい!と 初回に選んだ
日本初の○○銀座、戸越銀座ですが、
いざやってくると、どこから巡っていいものやら
さっそく途方に暮れてしまいました。


そこで、戸越銀座商店街会館で先行きのご相談をすることに。

「こんにちは。すみません、戸越銀座の見どころを教えてください」

唐突とはこのことです。

「ええと……見るところですか? 食べるところですか?」

とまどいながらも
手ぶらな観光客の問いかけに
真摯に答えてくださるスタッフさん。

しかし、ふたことめには、その笑顔を曇らせ、
「でも、今日、休みなんですよね~」とおっしゃる。

それがあまりに続くので、たしかめてみると
なるほど、指差す先に相次いで目に入る
「火曜日休業」の文字。

……戸越銀座、なかなかの手練です。


それでも、と、いくつかの注目スポットを教えていただき、
親切な会館をあとにしました。


あらためまして、
ようやく戸越銀座をめぐりましょう。


さて、まず教えていただいたのは戸越銀座温泉。
日本に数多ある「○○銀座」の中でも、
温泉がある銀座は珍しいのではないでしょうか。
メインの通りからはずれ、
右手に曲がったゆるやかな坂の途中にそれはありました。
白地にシャープな茶色い文字の看板をかかげ、
15時から、の営業時間は黒板に。
2007年改装の輝きを未だ放つおしゃれな外観でした。
銭湯料金で入れる温泉というのは
たしかになかなか魅力的です。

順調な滑り出しに気をよくし、
さっそく隣の公園で休憩。
鉄棒の裏にひとつだけあった馬の乗り物が愛らしかったです。


つづいて訪れたのは戸越八幡神社。
こちらも商店街をはずれた住宅街の中にあり、
静かで赴き深い神社でした。
白く立派な鳥居をくぐり、杉に囲まれた参道を進むと
なめらかな狛犬が待ち受けています。
この狛犬、今から約270年前に
戸越村の住民がお金を出し合って造立。
この神社へ奉納したものだそう。
土地の記憶を感じます。
脇に控えるは、 挿絵が新しい華やかな神楽殿。

手入れの行き届いたその風情から、
今もたしかにここで時が刻まれていると伝わり、
なんだかうれしい心地で、新たな始まりに感謝を捧げました。
ちなみに、無事を願って引いたおみくじは大吉でした。


神社を出て、向かったのは、
文庫の森公園。
ベンチでは杖をたずさえた老人がまどろみ、
こどもたちはあたりを駆け回ってはしゃいでいて、
それを見守る女性たちもにこやかで、
春にここへ来てよかったなあ、と
満開の桜の下、幸せに浸りました。
広場には角の丸い木片が敷き詰められており、
踏み心地よかったです。

すっかりのんびり時を過ごしたあとは
小豆色、厚揚げ色のおいしそうな建物を横目に、
商店街に戻って、ソース、パン、お菓子と
いくつかのおなか膨らむお土産を購入。

そして、火曜日だからこその楽しみである、
休業中の店の中をひとつひとつのぞきこむという
一大レジャーをたのしんで
桜吹雪の中、夢が膨らむ戸越銀座をあとにしたのでした。


今度は土曜日に行ってみたいです。



【かもめ編集部から】
 約400軒のお店が立ち並ぶ戸越銀座商店街は、全長約1.3kmと都内で最も長い商店街。実はここ、日本で初めて「○○銀座」を名乗った由緒ある商店街なのです。関東大震災で被害を受けた本家・銀座が、その復興にあたって処分に困っていたレンガを、水はけの悪さに悩まされていた戸越銀座の人々が譲り受けたのがきっかけなのだとか。まさに連載第1回を飾るのにふさわしい商店街でした。
 さて、東京都内の「銀座」と名のつく商店街をめぐる新連載。「世界をあたためたい」と絵を描き続けているきりたにさんが、個性的で彩り豊かな「銀座」をポエムのようなエッセイと貼り絵で紹介します。ふんわり、優しく、そしてちょっぴり不思議な“きりたにワールド”をお楽しみください。

※戸越銀座商店街は東急池上線「戸越銀座駅」、都営浅草線「戸越駅」下車すぐ


※きりたにさんのホームページ「たいようのみやこ」
http://taiyonomiyako.com/index.html
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【きりたに・かほり】
1984年秋田県生まれの香川県育ち。熊本県立大学卒業後に上京し、都内制作会社にデザイナーとして勤務。現在は「世界をあたためたい」と絵を描き、関東を中心にイラストの制作や似顔絵屋さんなど行っている。
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