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TOKYO銀座めぐり
イラストレーター(文と貼り絵)
きりたにかほり
第11回 とけあう街、西荻窪銀座界隈
気づけば立春を過ぎ、
午後はあたたかく過ごせる日も増えてきました。
西荻窪銀座周辺をめぐったのは
2月の初め、節分を迎える前のこと。
入り組んだ細い道には古くても新しそうでも、
小さくて味のあるお店が多く、ゆったり気分で楽しめました。














すっかり日が長くなりましたね、と言いながら
駅の改札で昼下がりの待ち合わせ。
編集さんはふかふかの帽子姿。

あ、ちょっと失敗。

というのも、あらかじめの情報によれば、
西荻窪には、駅を挟んでこれまで最多、
4つの銀座があるそうで、
南口方面は西荻窪銀座にはじまり、
西荻東銀座、西荻南銀座へ。

そのあと駅へ戻って
北口方面、3つの商店会からなる
西荻北銀座をめぐるのが本日のプラン。

今日が終わる頃にはずいぶん寒くなりそうです。
わたしの帽子は今頃家でぬくぬくしていることでしょう。



南口を出てすぐ
子どもが乗った象の像を発見。
周辺に6つあるという貴重な像のひとつを左にみて
交差点を右折すると、さっそく西荻窪銀座が現れました。

車道を挟んで続く天井付きの銀座通り。
200メートルほどの道筋には38のお店が立ち並んでいるそうです。

いくつか目に入る喫茶店、茶葉のお店に心をうばわれながら
さしかかった新しい分かれ道。
誘われるままに左に曲がり、
銀座を離れてちょっと寄り道。
屋根のない道に繰り出しました。


民族衣装のイラストがかわいいフランス料理屋、
古本屋を越え、白い建物へ。

1階部分中央の通路を挟んで、
向かい合うように美容室やギャラリーなどの
小さなお店が営業中のようです。

つきあたって奥、目に入るのは
赤い屋根のついた台車。
高さ1.5メートルほどのこの小さなを台車を
1日単位で貸し出してもらえるそうです。
なんてかわいい!


傍の白い棚には、羊や馬など、
リアルな動物のお面が飾ってありました。

さっそくこの楽しそうなお店の扉を開けて、ご質問。
「こんにちは、こちらは何屋さんなのですか?」

「基本的にはDIYのお店ですよ。
壁紙とか、ペンキとか。違う物もありますけど、えへへ。」

店員さんのお返事に改めて店内を見回すと、
珍しい柄のタイルや壁紙、
キラキラした取手もありました。
たしかに、おしゃれなDIY屋さんでした。



再びさきほどの古本屋さんたちの前を通って、
細い道へ曲がるとスーパーマーケットがありました。
その向かいにはまた別の古本屋。

文化の厚さに感心しながら、街灯を見上げて気づきました。

どうやらわたしたちは
本日2つ目の銀座、西荻東銀座を歩いているようです。
東銀座は西荻南1・2・3丁目あたりに連なる400メートルほどの商店街。

ちゃんと銀座をめぐっているとわかり、
足取り軽やかになってきたところで、
何かがひらひらしているお店を見つけました。

「気になるからいってみましょう」

遠くからだと、
店先のテントから通りに向かってつり下げられた
七夕飾りのようなものが揺れているように見えますが、
その正体は紙でできた鬼とおかめのお面でした。

テグスでつながれたいろんなお面が、
店先で風に揺られていたのでした。

新鮮なディスプレイ。

珍しい光景をひとしきり鑑賞したあと、
そのお店で節分用の福豆を買いました。
サービスで、新しい鬼のお面もいただきました。


いくつものすてきな花屋さんを諦め、
乙女チックな布屋さんをこらえ、
東銀座のはじっこにたどり着きました。

近くの文具屋さんで少しのお買い物。
割引になっていた大きなカレンダーを選びました。

「書き込みやすいって、毎年人気なんですよ。」

と、後押しいただきました。



まだ見ぬ南銀座をもとめて駅の方へ引き返します。

西荻デパートを通って天井のある西荻窪銀座へもどり、
細い道をぐるぐる回ると、
飲食店が多いことに気づきました。

特に線路沿いの飲み屋街は、湯気や煙が立ちこめていて、
通るだけでわたしも立派な酔っぱらいになれそうです。

合間にひっそりあらわれる
小さなギャラリーや紙もの、雑貨、古本屋さんをのぞきながら
西荻南銀座を探しましたが、
ついぞみつけられないまま、西荻窪駅へ。
北銀座をめざすことにしました。


西荻北銀座は駅の北口から善福寺川までを結ぶ
約450メートルほどの通り。

銀行や、八百屋さん、パン屋さんと、
暮らしに便利なお店が並んでいます。
たくさんの脇道が冒険心をくすぐる南口側とはまた雰囲気が違います。


歩きはじめにはあった屋根が途中でとぎれ、
そのあとで電灯が違う物に変わりました。
この2回の変化は、商店会の違いによる演出のようです。

黒猫のオブジェが乗った「茶」の看板、
使い勝手の良さそうな品揃えの古道具屋さん。

川に近づくほど、
洋服、アンティーク雑貨、ギャラリー、カフェと、
キュートなお店が増えていき、
外から覗くだけでもわくわくしてきます。


近頃欲しいものの話をしながら
和菓子屋さんで桜餅と黒い大福をひとつずつ、
食パン屋さんで食パンを1斤購入。

たどり着いた関根橋のたもとで
ゆるやかな川の流れを眺め、
冷たくなった夕暮れの中、北銀座を遡りました。


帰り道、すれ違う人々は、
来たときよりもあたたかそうにみえて
帽子がいっそう恋しい夜でした。









〈次回はどこの銀座を歩きましょうか?〉

※西荻窪銀座、西荻東銀座はJR中央線「西荻窪」駅南口、西荻北銀座は同駅北口

※きりたにさんのホームページ「たいようのみやこ」
http://taiyonomiyako.com/index.html
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【きりたに・かほり】
1984年秋田県生まれの香川県育ち。熊本県立大学卒業後に上京し、都内制作会社にデザイナーとして勤務。現在は「世界をあたためたい」と絵を描き、関東を中心にイラストの制作や似顔絵屋さんなど行っている。
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