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美しいくらし
はんなりゆったり、林業女子
林業女子会@京都
最終回 林業女子が日本を元気にする!


 『WOOD JOB!(ウッジョブ!)神去なあなあ日常』は、高齢化が進む林業の現場に飛び込んだ若者が主役の映画です。一方、リアル林業の世界では、女子ならではの視点で林業を元気にしようとする林業女子が増殖中! あなたの近くにも、きっといますよ。


──「林業女子会」は現在、全国9都府県に広がっている。「林業女子会@京都」は、その元祖、先駆けだ。広報担当の高味楽生(たかみ・らき)さんは、京都府立大学生命環境学部森林科学科4年生。最終回の今回は、全国に広がっている林業女子の話題から。

全国に広がる林業女子会
 「林業女子会」は、ひとことでいえば「林業Loveな女子のネットワーク」です。私たちが最初から「@京都」をつけているのは、ほかの土地でも「女子のチカラで林業を盛り上げたい!」「林業の魅力をもっと伝えたい!」という思いに共感してくださる方がいたら、「どうぞご自由に作ってください」ということなんです。

 現在は「林業女子会@静岡」をはじめ、岐阜、東京、栃木、愛媛、石川、長崎、兵庫、それに最近、新潟も加わり、10都府県に「林業女子会」広がりました。日本の林業が地域によって多様であるように、林業女子も地域のカラーを発揮して独自の活動を展開できればいいと思います。今はまだお互いの活動を見たり情報交換をしたり、それぞれのイベントに参加するくらいですが、いずれは全国の「林業女子会」が一堂に会するような機会を持てればいいですね。「林業女子会」はほかの土地に引っ越したりすると“卒業”というシステムなので、大学を出ても京都にいれば「@京都」のメンバーです。「@東京」に入ったり、場所は変わっても「林業女子」というつながりが続くのはうれしいですね。

──今、まさに「林業女子」の風が吹いている。さわさわとゆるやかに、でもしっかり根を張っている元気な木々から吹いてくるさわやかで力強い風だ。そんな林業女子から見た、現在の林業は?

新企画「林業女子と話そう!」は素敵なカフェで。サラダボールももちろん木製
 林業を本格的に学んでいる林業女子としてはさらに学びを深めたいと、昨年の7月から「林業女学校」も開講しました。そこでは林業だけに特化したものではなく、木材製品などを幅広い側面から見たいと思って、現場見学会なども実施しています。例えば木材市場に行って、間伐材の競りを実際に見せてもらいました。早口でわからなかったけれど、面白かった! 一方で、「木材ってこんなに安いんだ」と愕然としましたけれど。

 イベントにも参加しています。北山杉で有名な中川の町歩きや、奈良の吉野の町歩きなど、林業の現場を見ながら歩く。そのなかで、ものすごい技術で木を薄く加工してこだわりのスマートフォンカバーを作っている工房なども見せていただきました。昔と今のやり方の違い、ニーズの違いなど、現場の人たちの話を伺うのも勉強になります。林業に興味を持っていないと気づかないけれど、現場に行ってみると皆さん、生き生きしている。「聞いたら教えてあげるよ」「どうぞ見に来てください」という雰囲気が伝わってくるんです。そういう元気をもっとPRできればいいのにと思います。

 木材の場合、輸入される外材は安いけれど日本材は高すぎてダメという固定概念がありますよね。外材が入ってきたのは実は仕方がなかったという事情も知りました。戦後の住宅建設ラッシュでどんどん木を切ってしまい、多くの山がハゲ山になってしまったそうです。あまりにも災害が多くなり、それを受けて政府が拡大造林政策を打ち出したところ、一気に日本全土の67%が森林に、そのうち40%が人工林になった。でも、すぐ家を建てたいのに木を育てるには時間がかかるでしょう? それで関税なしの自由貿易で外国から木材が大量に入ってきたのだそうです。

中川の町歩きで出合った「台杉」。樹齢400年をこえるといわれている
 日本の山は急斜面だという特徴も裏目に出たようです。冬場に雪が積もると切り出した木材が降ろせないから、年間を通して安定的に木材を確保したい大企業の人たちは海外から輸入してしまう。でも、輸入材に多い熱帯林の木は成長が早い分、年輪と年輪の幅が広いから弱い。それよりも吉野の山のように管理されている日本の木材は、木目が詰まっていて芯がしっかりしているから圧倒的に質がいいんです。でも、一度林業がすたれてしまい管理されなくなった森林に、再び入っていく人手はなかなか確保できないのが現状のようです。

 林業女子会として日本の林業の未来にどう手助けしたいかと考えると……やはり女子だから男子に比べて体力はありません。チェーンソーを持って山歩きしなければならない林業の現場に入るのは、難しいことも多いです。それよりも林業の魅力を多くの人に伝え、そうしてできるネットワークをつなげていく活動に集中していきたいですね。川上(山)の人と川下(町)の人を橋渡ししていくという役割を担うのが林業女子だと思います。

──そうした活動のひとつ、「林業カフェ」は昨年の秋から開始してこの3月まで、四条の町家を借りて開いた。『WOOD JOB!』の封切り以前から原作の『神去なあなあ日常』(三浦しをん)をめぐり、カフェにいらしたさまざまな方と読後感などの話題で盛り上がったそうだ。

 あるとき、女性2人が和やかに話をしているので友だちかと思ったら、全く別々のルートからカフェを知って来てくれた人たちでした。一人は木材を扱っている仕事に就いている方で、もう一人はご自身が花粉症に悩んでいることから林業に興味を持った方。そのように、まだ漠然とではありますが林業に興味を持つ人が増えてきているのではないかと感じることが多くなりました。

 今年に入って開いた「七輪カフェ」は「林業カフェ」のアレンジ版です。私たちがおもてなしして炭がどういうものかを知ってもらい、実際に静けさの中で七輪の炭がパチッとはじける音を聞いてもらったり。炭というものを通してその先にある林業を見てもらう機会になればと思ってやったんですよ。

──―林業女子は、何でもしなやかに林業と結びつけていく。林業女子は、これからもさまざまな場面でネットワークを作っていくのだろう。これからの活動は?

ある日の定例会。真ん中が広報担当の高味さん
 基本的に幹部は1年で交代するので、これからの活動は新しい幹部が考えていきます。その時々のメンバーでやり方や内容が変わるのも、林業の新たな魅力を発見していくことになっていくと思います。この3月に40人ほどの会員で感謝パーティーを開いたのですが、10代から上は60歳くらいの方まで集まりました。そこで初めて会った会員もいます。社会人の方だとどうしても時間がなくて女子会やイベントに参加しにくいものですが、「林業カフェ」にふらりと来てくれればうれしいですね。私たちの会は年齢問わず女子なら大歓迎。ぜひ、多くの人に参加してもらいたいと思います。1~2カ月に一度、「林業女子会と話そう!」というカフェ・イベントも企画中です。こちらは女性または男女ペアならどなたでも!

 私は、都会に暮らして林業にはあまり関心がない人たちや、林業といえば木こりが「カーン! カーン!」と木を切っているイメージくらいしか持っていない女の子たちに、「林業ってこんな面もあるんだよ」と伝えたいと思って入会し、活動しています。これからも林業の魅力を伝えたいと思います。1日枝打ちしたら、先が見えるくらい明るくなったなというのが、その日の仕事終わりに見られる。一方で、木が伸びるスピードが40年、100年のスパンなので、植えたものがこの先どうなってどう製品化されるのかが見えない。1日でわかることと長期間かかるということと相反することだけど、それを合わせたのが林業なんです。

 今のことだけを考えたら山の木を全部切ってもいいけれど、そうしたらこれから先、子孫がどうなるのか。そういうことを考える機会を作ってくれるのが林業だと思います。山や森では、春には山菜が芽を出し、やがて鮮やかな緑に覆われ、紅葉の後に葉を落として厳しい冬を凛と耐える。そしてまた春になって……と年中自然を感じられる。森林のことを少しでも知れば、ぜったいハマりますよ!

(構成・白田敦子/写真提供・林業女子会@京都)

【林業女子会@京都のホームページアドレス】
http://fg-kyoto.jugem.jp/
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【りんぎょうじょしかい@きょうと】
2010年7月24日発足の任意団体。京都市内の女子学生を中心に、環境教育、コンサルタント、山林所有者、森林組合、建築士など、「山にいても街にいても林業を盛り上げよう」という思いを共有する10代から60代の女子約30名が所属している。

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