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美しいくらし
はんなりゆったり、林業女子
林業女子会@京都
第2回 「forestry girl」はサバイバルの達人!?

森林に手を加える枝打ち作業に出向いたメンバーたち



 映画『WOOD JOB!』(矢口史靖監督)を見ても、『神去なあなあ日常』(三浦しをん)を読んでも、爆笑しちゃう面白さとともに描かれているのは、自然を相手に厳しく気の抜けない林業の世界。重労働だし汚れるし……ところが、そんなイメージをゆるゆると変えていく「林業女子」たちが、京の都にいるのです!


──「林業の面白さをもっと伝えたい!」との思いから発足した「林業女子会@京都」。京都市内の大学で森林科学を学ぶ女子学生が中心となり、フリーペーパーを発行したり町屋でカフェを開いたり、ゆったりまったりパワフルな活動を展開している。広報担当の高味楽生(たかみ・らき)さんは、京都府立大の4年生。なぜ、「林業女子会」に入ったの?

広報担当の高味さん。京都・寺町通りにあるCafe「ヒノコ」にて(写真/編集部)
 入会してちょうど1年くらいですから、まだ新米なんです(笑)。大学の後輩が先にメンバーになっていて、「女子のチカラで林業を盛り上げようとしている会があるんだよ」と活動の様子を教えてくれたんです。大学の中にいるだけではどうしてもネットワークが限られてしまうので、いろいろな人に会える機会を作りたいと考えたのと、他の大学の学生とも一緒に学び、林業にかかわる活動をしたいと思ったんです。

──高味さんは、大学で男子が一緒の林業サークルにも所属している。それでも、女子ならではの自由で余裕のある林業女子会の活動は面白くてたまらない魅力があるという。

枝打ちされた木
 サークルは組織もきちんとしていて、森林に関する勉強もします。机上の勉強だけでは林業の現場がわからないので、山に入って枝打ちや間伐、下草刈りなどひと通りやらせてもらうんですよ。ただ、それってサークルのメンバーで行って大学の演習林や、山主のおじさんたちと作業をして帰って来て、それで終わってしまう。私はもっと、いろいろな人から話を聞きたいと思っていたんです。

 そんなときに、この林業女子会を知って、早速入会しました。そうしたらイベントの連絡がきたり、先輩の家に遊びに行ったら林業女子の人たちがいて、中には働いている人もいたりして。林業の現場で働くのはどのようなものなのか、実体験を聞かせてもらうこともできました。そんなふうにどんどんつながりができてくるのが、この女子会の魅力です。

──ほんとに楽しそうに話す高味さん。名は楽生(らき)さんという。普通はちょっと読めない名前だ。

 絶対に読めないですよね(笑)。両親が“楽しく生きなさい”と名づけてくれたようです。私は愛知県の小さな村の出身です。両親はもともと都会にいたのですが、自給自足の生活を目指して田舎暮らしを始めて。だから、姉が小学校高学年になるくらいまで、家には冷蔵庫もテレビもなかったそうですよ(笑)。

 家族は7人。私は末っ子で、上に4人います。山の中で自然の流れに沿った生き方をしてきて、村には近くに高校がないので名古屋に出て進学しました。高校3年生の時に進路を考えたとき、理系には行きたいけれど何にしたらいいんだろうといろいろ調べてみたら、たまたま森林科学科に出合ったんです。高校生活の間中、「自然の中に戻りたい!」という気持ちがどんどん大きくなっていたので、森林科学科という名称に「これだ!」と思ったんですよ。山里に住んでいたとはいえ、実際に森林を学び始めると知らないことがたくさんある。どんどんのめりこんでいって、この林業女子会に入ってからはもう林業のとりこですね(笑)。

「吉野貯木まちあるき」に参加したメンバーと、そこで出合った巨木
 私の場合は、それこそ田舎暮らしの延長でたまたま林業を学んでいますが、例えば土砂災害や水害などの自然災害は、森林が健康な状態で山が本来の保水能力を持っていれば起こりにくいもの。そう考えたら、林業を何とかしたらさまざまな問題が解決するのではないかとの思いが強くなりました。

 東日本大震災は大変な災害ですが、原発の事故があったり鉄道が止まったりして、人工的なものに頼り過ぎていると、それがなくなったときにどうやって生きていくのか考えるきっかけにもなったと思います。私は子どものころに電気もない暮らしをしていたので、家族皆でよく災害があったらどうするか、話してきました。両親は「家まで歩いておいで」と(笑)。京都からだと何百キロもあるので時間がかかりますが、それでも歩き通せる術と生きる力は身についていると思っています。でも町に住んでいる人たちは、火力がなくなったらどうするのか、建物が潰れてコンクリートのがれきだらけの町で何を食べるのか。林業を見直すことは、そういうことを日ごろから考えることにもつながっていると思います。だから、森林って実は大事なんだよと、多くの人に伝えたいんです。

──若さに似ず、高味さんの話は説得力がある。それは、机上の論ではなく林業を通して自然と向き合い、地に足がついているからなのだと思う。今ドキ林業女子は、時代の流れの中でしなやかに林業を捉え、しっかりサバイバルの術も身につけているんだ。すごい。そんな高味さんは広報担当として、ブログの更新やフェイスブックの運営などを担う。フリーペーパー『fg』(forestry girls and guysの略)の編集にも、毎回、携わっている。

主に京都市内のカフェなどで無料配布している『fg』。高味さんも編集で活躍している
 4年前から発行している『fg』は不定期発行です。企画、取材、編集、デザイン、モデルなど、すべて私たちメンバーが担当します。編集長は毎回変わって、幹部以外のメンバーがやることも。5000部ほど刷って、皆で手分けしてカフェなどに置いてもらうんです。もちろん、お店でお茶しながら女子会もしちゃいます(笑)。

 運営は広告費でまかなっています。「次号はこういうことをやるので、広告出してくれる方を探しています」とブログを通して企業やお店に聞いたり、先輩や林業カフェでつながりのできた人から「広告出すよ」と言っていただけたり。そうそう、インタビューの謝礼金やイベント時の売り上げなど、林業女子会のお財布からももちろん出しています。

 これまで「女の一生、木の一生」「狩猟女子」「炭系女子」など、林業にまつわるテーマを女子ならではの視点で取り上げてきました。最新号の6号では、映画『WOOD JOB!(ウッジョブ!)神去なあなあ日常』の公開に合わせた特集を組み、今年の1月から6人が編集作業に没頭。大変でしたが映画の公開日の5月10日に出せました! 全国的に展開できたらいいなと、1万部刷って各地の「林業女子会」にも送り、配ってもらっています。

森林に親しむためのイベントにも参加している。写真は「チャイムの鳴る森」で年に一度開催されているイベントにて
──すごい! 「かもめブックス」編集部も見習いたいと思います! 「林業女子会@京都」の活動はマスコミからも注目され、山での現場作業やカフェの様子などがテレビ番組や全国紙でも紹介されている。映画『WOOD JOB!』の封切りに合わせて、矢口史靖監督や主演の染谷将太さんとともに全国紙の紙上座談会にも参加。もちろん映画のロケ現場も訪ね、林業女子ならではの視点でのレポートもブログに掲載している。それがまた何とも楽しそうで。そんな彼女たちのような林業女子が今、全国に増殖中なんです。次号は、そのあたりから。


(構成・白田敦子/写真提供・林業女子会@京都)

【林業女子会@京都のホームページアドレス】
http://fg-kyoto.jugem.jp/
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【りんぎょうじょしかい@きょうと】
2010年7月24日発足の任意団体。京都市内の女子学生を中心に、環境教育、コンサルタント、山林所有者、森林組合、建築士など、「山にいても街にいても林業を盛り上げよう」という思いを共有する10代から60代の女子約30名が所属している。

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