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美しいくらし
はんなりゆったり、林業女子
林業女子会@京都
第1回 「林業女子会」って何?
 映画『WOOD JOB!(ウッジョブ!)神去なあなあ日常』、ご覧になりましたか? ざっくりご紹介すると、都会育ちのちゃらんぽらんな青年がひょんなことから山深い村の林業の現場に放り込まれ、人と人とのつながりや自然への畏怖、働くことの尊さに目覚めながらたくましい「林業男子」へと成長していくストーリー。主人公の悪戦苦闘ぶりに見られるように重労働の林業はガテン系の男子の世界──そう思っていたら、林業を盛り上げる活動をしている女子学生たちがいるという情報が。京の町家に、その元祖「林業女子会@京都」を訪ねてみると……。

「Cafeヒノコ」にて広報担当の高味楽生さん。後ろにあるのは様々な木材の見本帖(写真:編集部)
──京を南北に貫く通りのひとつ、寺町通り。この通りに面した老舗燃料店の町家にある「Cafeヒノコ」が、「林業女子会@京都」の活動拠点だ。広報担当の高味楽生(たかみ・らき)さんと待ち合わせたら、「ちょっと遅れます!」との電話。折しも名残の桜見物の観光客で京の都は大渋滞なのだ。間もなく現れた高味さんは、凛とした着物姿。……え? 林業女子なんだよね、なんて戸惑いながらも早速インタビュー開始。そもそも「林業女子会」って、どんな活動をしているの?

ある日の定例女子会での「林業女子会@京都」のメンバー
 私たち「林業女子会@京都」が発足したのは2010年7月。もうすぐ丸4年になります。もともとは京都大学と京都府立大学で林業を学ぶ学生が中心となり、林業の面白さをもっと広めたいと設立しました。現在、中心になって活動をしているのは両大学の森林科学科で学ぶ10人ほどの大学生と大学院生。また、日ごろの活動には参加しないものの、OGをはじめ活動に興味を持って加入してくださる方など、全体では40人ほどの会員がいます。もちろん、全員女子です!

 月に1回、定例の女子会があります。だって女子なんだから女子会しなきゃ(笑)。これからの活動について話したり、時には恋バナみたいなガールズトークも。楽しいですよ。4年前から活動を紹介するフリーペーパー『fg』(forestry girls and guysの略)も発行しています。それと林業の現場を見学したり講師を招いて勉強する「林業女学校」、町家をお借りしていろいろな方とお茶しながら話す「林業カフェ」が現在の活動の3本柱です。

創刊号から最新号までの『fg』
──高味さんは現在、京都府立大学生命環境学部森林科学科4年生。黒ぶち眼鏡の中できらきら笑っている大きな目が好奇心旺盛さを物語っている。恋バナやらガールズトークと聞くと普通の女子学生と何ら変わりないが、森林科学科とは耳慣れない学科。なんだか難しそう。

 あまり知られていない学科だと思いますが、京都では京大、府立大、それに2012年に京都府立林業大学校が開校したので、3大学に設置されています。学んでいるのは森林に関すること全般。木材の成分を調べる実験もありますし、ある植物が別の植生へと変化していく遷移についても学びます。立っている1本の木を見るときもあれば、山全体を見るときもあり、生物学、化学、土木などの知識を用いて森林について学びます。林業を学ぶことはそれらを包括的に学ぶことであり、さらには環境問題を考えることにもなると思います。

 メンバーが通う京大と府立大では林業に関するサークル活動も盛んで、府立大には森林ボランティアサークルの「森なかま」、京大には山仕事サークルの「杉良太郎(すぎよしたろう)」があります。いずれも森林ボランティアサークル。大学の演習林やきちんと管理することができなくなった山などに入り、山仕事をさせてもらう。「林業女子会@京都」も、そのような活動を通して知り合った先輩たちが作ったものです。

──なるほど。林業って、奥深くて広いんだ。「鉄子」や「山ガール」など、それまで男子の世界と思われていた分野にヒラリと飛び込んでいく女子が社会現象として取り上げられてから久しい。それでも、林業の現場は男性が中心というイメージがある。聞いてみると府立大学の森林科学科で学ぶ学生は男女半々だそう。サークルにはもちろん、男子もいる。その枠をこえて、あえてなぜ「女子会」なのだろう。

町屋での林業カフェ
 もちろん各サークルの活動は活発で、しっかり組織化されています。それに比べると、この女子会はもっと自由にゆったりと自分の好きなことができるのが魅力かも。女の子だけだと、すぐ「カフェしようか」となっちゃう。例えば『fg』を置いていただくのにも「10部置かせてもらえませんか?」とメンバーでいろいろなカフェを100カ所くらい回りました。そういうのって、男子は苦手でしょ?(笑)

 「林業女子会@京都」の設立以来の活動目的は、女子から女子へ林業の魅力を伝えることと、林業女子同士がつながる場づくりなんです。だから、植林とか伐採とかいわゆる林業そのままではなくて、森を歩くと楽しいとか、木のアクセサリーやスプーンがかわいい、木製家具が好きなど、そこを入り口に林業にもかかわれることを伝えたいと思うんです。

 メンバー同士でよく言っているのは、林業関係の組織がいろいろあるうちの「林業女子会」でなく、たくさんある女子会のうちの「林業女子会」なんだということ。林業が先にありきではなく、女子会が先にあるんです。定例会でガールズトークになるのも女子会ならではの楽しみ方だと思います。


映画『WOOD JOB!』のロケ地を訪ねた林業女子会のメンバー。「映画の中で伊藤英明さんが伐り倒す巨木の切り株です!」
──うん、うん、わかる気がする。私はほぼ女子校育ち(注:決して好んだわけではありません)。何でも女子同士で話し合って決めるのは時にキツいこともあったし、文化祭の大工仕事は男手があればいいのにと思ったこともあったけれど、「女の子だから」という枠をこえられるような開放感があったっけ。それにしても、素敵な着物姿ながらなんとも自然体の高味さん。今ドキ森林女子の彼女にも興味がわいてきた。次回はそのあたりから。

(構成・白田敦子/写真提供・林業女子会@京都)

【林業女子会@京都のホームページアドレス】
http://fg-kyoto.jugem.jp/
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【りんぎょうじょしかい@きょうと】
2010年7月24日発足の任意団体。京都市内の女子学生を中心に、環境教育、コンサルタント、山林所有者、森林組合、建築士など、「山にいても街にいても林業を盛り上げよう」という思いを共有する10代から60代の女子約30名が所属している。

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