第2回【組織編】石坂典子さん(石坂産業株式会社 代表取締役社長) ~第3話~組織の中で働く
当社のようにメンテナンスや重機の操縦など職人的な業務が多い工場生産では、組織力の強化が大きな課題でした。最初はチームでやろうとしてもなかなかまとまらず、社内のあちらこちらでけんかが起きている状態。価値観や考え方が多様な中、全社一致の感覚を持ってもらうまで試行錯誤を繰り返してきました。
■仕事の醍醐味
社員教育の一環として実施している「石坂技塾」。社内勉強会だけでなく、外部から特別講師を招いて行う特別公開講座などを開講し、資格取得のほか、スキルやコミュニケーション力、自発性の向上をサポートしている
(写真提供:石坂典子さん)
組織力強化のために、私がまず社員に求めたのは「考える」こと。会社のビジョンを見据えながら、「今年度の目標を達成するにはどうしたらよいか」「目の前の案件はどうやったら解決できるか」。所属部署の一員として、時に組織の枠組みをこえたプロジェクトチームの一員として「とにかく自分の頭で考えみて」。そう促してきました。
廃棄物の選別でいえば、木や紙を効率的に採取しようと考えて1日を過ごす人とそうでない人とでは、ラインの生産性が変わってきます。イベントの企画では、「お客さまが少ないから売上アップは難しい」で終わる人と、「どうやってお客さまに来ていただくか」「どうしたらイベントの魅力が伝わるか」を工夫する人では、その後の展開そのものが違ってくるでしょう。
伝票整理や廃棄物の選別を淡々とこなすだけでも1日は終わりますが、仕事と作業は違います。「どうやったら無駄が省けるか」「どうしたら効率よく回せるか」。考えるから気づき、工夫が生まれ、進化します。
仕事の醍醐味とは「考える」こと。一人ひとりの考える力が組織を支えているのです。■経営者の役割
『五感経営 産廃会社の娘、逆転を語る』
石坂 典子 著
本体価格: 1600円+税
発行元:日経BP社
縁あってこの会社に勤めている以上、社員には自分らしくイキイキと働いてほしいと思っています。そのために必要な、働きやすい環境づくりと仕事への魅力づけは、経営者である私の役目です。働く楽しさや自分自身の可能性に気づいてもらうために、さまざまな根回しをし、二の手三の手も使うけれど、それにどう応えるかはその人次第。やりがいを感じる心持ちは、社員一人ひとりの中にあるものだからです。
【今日のまとめ】多様な考える力が組織を支えている!―取材を終えて 時に母親やお姉さんのように親しみやすく、時に経営者視点で厳しく、メリハリを効かせながら目配り気配りのフル回転で社員をサポートする石坂典子社長。人をやる気にさせる絶妙なコミュニケーション力と人を見る目は、持って生まれたリーダーとしての素質なのかもしれません。素質といえば、社長就任から約10年で成し遂げた斬新な大改革も、人の心に訴えかける熱意と逆境をはね返す力がなければ成し得なかったこと。「仕事に臨む姿勢に、その人の個性が表れます」(第1話)というその言葉どおり、会社再生にかけた経営者としての熱い道のりに、石坂典子さんの「個性」が表れているように思います。
さて、「白熱! 個性論」第2回は「組織編」と題して、経営者の立場から石坂典子社長に語ってもらいました。多様な人材が集まるからこそ、一人ひとりの個性を生かせるように適材適所を常に考えているという石坂さん。個がしっかりパフォーマンスできる入念な舞台づくりは経営者の役割だ、と言います。しかし、どうやったらその舞台で輝けるかは自分次第。「個性を伸ばす」「個性を発揮する」を人にゆだねるのはどうやら筋違いで、“自分の個性は自分で磨くもの”のようです。
ますます熱くなる「白熱! 個性論」。次回はさらに違う角度から「個性」を切り込みます!
【石原産業株式会社ホームページ】
http://ishizaka-group.co.jp/(構成:狭間由恵)