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美しいくらし
東京ぶらり老舗散歩 江戸文化研究家
安原眞琴
第1回 江戸の鬼門を守る寛永寺の節分?
下山コースは路地歩きが楽しい

 〈豆まき散歩〉の後は、老舗でクールダウン!
 護国院は、東叡山という〈山〉の一番端にあり、その山を下りると〈根津〉という町になります。下山コースには、〈言問通り〉という大通りを行くのが分かりやすいのですが、谷中・根津・千駄木、通称〈谷根千〉(やねせん)の魅力と言えば、やはり路地歩き。そこで、細い路地裏をご案内します。

路地は昭和レトロな雰囲気満点
 護国院近くの「谷中清水町公園」の中に階段があるので下りましょう。道なりに進むと、どんどん昭和レトロな雰囲気になってきます。路地の途中に共同井戸も出てきます。
 坂を降りきって少し大きな道に出ると、目の前にとつぜん木造三階建ての建物があらわれます。ここが目的地の「はん亭」という串揚げ屋さんです。串揚げ屋さんとしての歴史は50年ほどですが、建物は大正初期のもので、国の有形文化財に登録されています。

「はん亭」の入り口
 今では根津という町名になっていますが、それは昭和40年からの新しい呼び方で、ちょっと昔の人たちは、はん亭の辺りを宮永町と言っていました。お店の前に旧町名について書かれた看板もあるのでチェックしてみましょう。
 竹矢来(たけやらい)の脇にある引き戸が入口です。黒光りするウッディでシックな空間は、土足であがるのがためらわれますが、靴のままでOK。また、椅子席なので正座が苦手な方も安心です。昔ながらの木の階段の途中には土蔵の扉があって、その奥に隠れ家的な個室もあります。

 串揚げと言えば大阪が有名ですね。一杯やりながらちょいとつまむ串揚げも美味しいですが、はん亭はそんな庶民的な大阪スタイルとはちょっと違うタイプ。一口サイズで、食材も良質な上に、種類も豊富。途中に甘味の串揚げも入るので、飽きることもありません。

 二本ずつ揚げたての串揚げが運ばれてくるのですが、揚げるのに時間がかかるので、ワインやお酒を呑みながら、ゆっくりいただくのがよいでしょう。串揚げに付けるのは、ソースか塩か味噌。その自家製味噌も絶品で、付け合わせのキャベツや野菜スティックにもピッタリです。そして、白米かお茶漬けでシメ。これまた美味しくって、お腹も心も満たされます。

 趣のある木造の建物で、ほっこり一口サイズの上品な串揚げをいただけば、〈豆まき散歩〉の疲れが癒やされること間違いなしです。

【はん亭 根津本店】
東京都文京区根津2-12-15
電話03-3828-1440
[営業時間]
昼11:30~15:00(14:00L.O.)
夜17:00~23:00(22:00L.O.)
[定休日]
月曜

【makoto office 安原眞琴公式サイト】
http://www.makotooffice.net/

【イラストと地図:鈴木 透(すずき・とおる)】
1965年福島県生まれ。「釣りキチ三平」などを制作する矢口プロダクションを経てフリー。

※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『東京おいしい老舗散歩』が2017年12月に発売されます(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。


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【やすはら・まこと】
1967年東京都生まれ。文学博士。専門は日本の中世・近世の文学、美術、文化、女性史。吉原文化の最後の継承者を5年間取材したドキュメンタリー映画「最後の吉原芸者 四代目みな子姐さん―吉原最後の証言記録―」を2013年に発表。立教大学・法政大学・大正大学・東武カルチュアスクールなどで講師を務め、天台宗総合研究センター、日本時代劇研究所などの研究員でもある。NHKカルチャーラジオ「歴史再発見 芸者が支えた江戸の芸」を2016年に担当。著書に『「扇の草子」の研究――遊びの芸文』(ぺりかん社)、『超初心者のための落語入門』(主婦と生活社)、『東京の老舗を食べる』(亜紀書房)などがある。
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