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きれいをつくる
ゆるやかに本気で働く 非営利型株式会社Polaris代表取締役
市川望美
第3回 「真ん中のテーブル」に置く
 「ゆるやか」と「本気」を共存可能にする非営利型株式会社Polaris(ポラリス)。その実現には業務の仕組みづくりだけではなく、登録者の意欲を引き出す意識改革も必要となります。現在、新しい働き方を求めてポラリスに登録しているのはおよそ200人。そこに携わる人々に対して、どのように新しい働き方の実現を図っているか? 市川さんに教えてもらいました。

食べたい量を「自分で選ぶ」

 チームで仕事を請け負う「コラボワーク」という働き方を実践しているセタガヤ庶務部では、受注した仕事をFacebook(フェイスブック)のグループ機能へ投げ込むようにしています。これを私たちは「真ん中のテーブルに置く」と表現しています。業務内容や納期などを確認し、希望者に手を挙げてエントリーしてもらうのですが、当初は「○○さん、やってみたらどうですか?」と声をかけてメンバーの調整をしていました。
 でも今はじっと我慢。登録者の“働きたい”という意欲的な気持ちを引き出すようにしています。そうはいっても、たくさんの量の仕事をできる人が偉くて、ちょっとしかできない自分は能力不足と思い込み、働く意欲はあっても「逆にご迷惑では?」と一歩引いてしまう人もいる。
 そんなときは「ケーキの話」をするんです。ホールケーキを「真ん中のテーブル」に置き、たとえば5人でそれを分けるとします。日本だと均等な大きさに切ってお皿に乗せて配るのが一般的ですが、北欧では違います。ナイフを一人ひとりに回して、食べたい量を「選ぶ権利」を平等にするのです。本来は「食べない」という選択をする権利も尊重すべきなのに、日本人は配る量で判断してしまいがち。「せっかく出してくれたのだから」とダイエット中なのに無理をしてケーキを食べてしまう。そういったことを続けていると、みんなが薄く我慢することになると思いませんか? 
 だからこそ、「自分で選ぶ」ということが大切なのです。ポラリスは「成果」ではなく「機会」を平等にすることを大切にしています。

「10%」の意味とは?

写真提供: 市川望美さん
 まずは自分の食べたいケーキの量を選ぶ。そのためには、自分が「本当に食べたい量」を知らなければいけません。これは仕事も同じこと。100%の量を無理に抱える必要はないのです。「10%の100%」と「100%の10%」は、同じ「10%」だけれど意味が異なります。たとえ10%の量でも、そこに100%の力を注いでもらうことが大切。実はその姿勢が、「ゆるやかに本気で働く」ことを実現させるのだと私は考えています。
 今の社会の仕組みでいくと、育児と仕事の両立の大変さばかりが目立ち、子育て中の女性の就業に対する心理的ハードルが上がっているように感じます。このような状況の中でも、現状を「自分から変えよう」とする女性たちが、ここ(ポラリス)に集まっています。無理に100%を出すとか、たくさんやることが、世の中では“本気”と捉えられがちですが、既存の定義にはとらわれない新しい働き方をつくりたい。自分らしさの出せる心地よい社会にしたいのです。

――世の中の仕事に対する考え方にとらわれることなく、新しい発想で子育て中の女性たちを牽引する市川さん。インタビュー最終回となる次回は、そんな彼女が見つめる“未来”について聞きます。

【非営利型株式会社Polarisのホームページ】
http://polaris-npc.com/

(構成:坂井裕子、撮影:馬場邦恵)

*この記事は、株式会社リビングくらしHOW研究所が運営するライター・エディター養成講座「LETS」アドバンスコース17期生の修了制作として、受講生が企画立案から構成、取材、撮影、編集、校正までを実践で学びながら取り組んだものです。
【ライター・エディター養成講座「LETS」のホームページアドレス】
http://seminar.kurashihow.co.jp/lets
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【いちかわ・のぞみ】
1972年生まれ。2003年出産を機にIT企業を退職。NPO 法人せたがや子育てネット、アミーゴプリュス合同会社などで“当事者発信型・循環型子育て支援”に従事。2011年から地域における多様な働き方を支える基盤づくりを開始。2011年8月「ここちよく暮らし、はたらく拠点」"cococi"Coworking Space”、翌年非営利型株式会社Polarisを立ち上げ。「セタガヤ庶務部」「ロコワーキング事業」等、多様な働き方を推進する組織づくりや、暮らしを価値に換える事業に取り組む。
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