“ゆるやかに本気で働く”と聞いて、そんなことは現実的ではないと思いますか? 多くの人が不可能だと考えるであろう、このテーマの実現に向けて取り組んでいるのが、非営利型株式会社Polaris(ポラリス)代表取締役の市川望美さんです。子育て中の女性でも、地域の中で自分のペースを保ちながら100%の力を注ぐ――そんな多様な働き方を実現する仕組みづくりを推進しています。その活動内容とポラリスが目指す未来の姿について、4回にわたってお届けします。未来をつくる会社のカタチ
結婚や出産、育児を機に離職を迫られる女性はたくさんいますが、その人たちが自分らしく生きられるペースを守りつつ、社会に復帰するきっかけづくりの手助けをしたい――その思いのもと、ポラリスでは女性一人ひとりのライフステージに合わせた柔軟な働き方を、身近な地域の中できめ細やかに提供しています。
働くことはその人らしくあることであり、その人らしく暮らすこと。私たちが目指す“未来におけるあたりまえの働き方”の実現に向けて、社会貢献を主な目的とし、事業で得た利益を地域や社会に還元する「非営利型株式会社」として活動を展開しています。
“私らしく”を叶える3つの柱
写真提供: 市川望美さん
具体的には、社会における課題の整理や潜在ニーズの掘り起こしといった調査・研究・情報発信などを実践するソーシャルデザイン事業部、在宅での事務作業をチームで請け負う「セタガヤ庶務部」をメーンとした多様な働き方を提供するワークデザイン事業部、不動産地域情報提供サービス「くらしのくうき」など地域発の新しい価値創造に取り組むロコワーキング事業部の3つの事業部で構成されています。
これらの事業の根底に共通してあるのは、地域での暮らしも大切にしながら本気で働くこと。0(専業主婦)か100(会社員)かを選ぶことしかできなくて悩んでいた女性たちにも、自分らしく心地よい働き方をしてほしい。それがポラリスの原点なのです。
モヤモヤが原動力
ポラリスを立ち上げたのは、2010年に内閣府の地域社会雇用創造事業コンペで私のビジネスプランが採択され、1年間の起業支援を受けたことがきっかけでした。私は2003年の長男出産を機に、子育てと仕事の両立が難しいと感じてIT系企業を退職し、世田谷区のNPO法人で乳幼児親子の場所づくりなどの子育て支援に参加していました。この活動を通じて、自分たちが欲しいと思うサービスを当事者同士で考えて運営していくことの大切さを学び、大きな刺激を受けました。
ただ残念だったのは、そこでの仲間との関係が“期間限定”になってしまうことです。子どもが幼稚園から小学校へと進むうちに、同じ母親同士でも抱える問題や関心が変わってきたり、子どもの教育費のために活動をやめて働きに出ざるを得ない人もいたからです。せっかく地域の中でいい人間関係ができていたのに、もったいないと思いませんか?
この、なんともいえないモヤモヤした思いを抱えていた私がたどり着いたのが、「仕事を通じて愛着ある地元にかかわり続けることができる仕組みがほしい」という思いです。そして、それがポラリス結成につながったのです。
――出産を機に会社を退職した市川さん。実はそれが彼女の転機となりました。そして今ではポラリスの運営を通じて、自分と同じ悩みを持つ子育て中の女性たちの転機を手助けしています。次回はポラリスのメーン事業である「セタガヤ庶務部」を紹介します。【非営利型株式会社Polarisのホームページ】
http://polaris-npc.com/(構成:村田智子、撮影:馬場邦恵)
*この記事は、株式会社リビングくらしHOW研究所が運営するライター・エディター養成講座「LETS」アドバンスコース16期生の修了制作として、受講生が企画立案から構成、取材、撮影、編集、校正までを実践で学びながら取り組んだものです。
【ライター・エディター養成講座「LETS」のホームページアドレス】
http://seminar.kurashihow.co.jp/lets