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きれいをつくる
鼎談:空き缶に夢を乗せて ミュージシャン×庶民文化研究家×清涼飲料水評論家
石川浩司 × 町田 忍 × 清水りょうこ
第2回 自慢の逸品、お見せします!
 書店販売がスタートしたミュージシャン・石川浩司さんの空き缶コレクション(缶コレ)を紹介する『懐かしの空き缶大図鑑』は、WEBマガジンに連載した「石川浩司の缶コレランニング」をもとにした一冊です。この本の刊行記念鼎談の第2回は、石川さんと町田忍さん、清水りょうこさんに、それぞれ「ご自慢の逸品」を披露してもらいます!

「明治天然オレンジジュース」を手にする町田さん

町田 僕の逸品はまず、コレクションのきっかけとなった昭和29(1954)年に発売された日本初の缶ジュース「明治天然オレンジジュース」。これは、飲んだ後に父親が灰皿代わりに使っていたものが台所の隅に落ちていて、奇跡的に腐食しないで残っていたんです。スチール製で、缶の上部に小さな穴を2つ開けて飲むタイプ。
 それから、日本で最初に発売されたペプシ缶。古い缶は飲み口が汚れないようにわざと上下が逆さまになっているので、発売された年代がわかるんですよ。これなんかは、まだキャラクター缶が珍しいころのもので……。

石川さんのお宝缶「ペット専用牛乳ワンミー」

――町田さんが「お宝缶」を出し始めると、石川さんと清水さんから「あー、それ持っていないなあ!」「そのキャラ、かわいいですね!」と声が上がる。いきなり盛り上がっています!

石川 僕はみんなが持っていなさそうな、この「ペット専用牛乳ワンミー」。ペットショップで見つけて、缶ドリンクだからもちろん飲みましたよ! 商品名がダジャレになっているのもお気に入り。中でも「サイダー」は、一目でわからない名品です。昔の缶コーヒーのレトロなデザインも、好きですね。

清水さんのお宝缶は「大丈夫」

清水 私が持ってきたのは、台湾の比較的、新しいもの。「大丈夫」という商品名が日本語で描かれているエナジードリンクです。日本での英語表記がオシャレに見られるように、向こうでは日本語で表記するのがかわいいと思われるらしく、近年よく見かけます。

石川 最近は、中国本土でも垢抜けたデザインが多くなってきました。でも、ここ1年で3回ほど中国の違う都市へ行ったのだけど、3回目にはもう買うものがなくなっちゃった。中国でも缶ドリンクの数は少ないんですよ。

――日本の都市部では、ちょっと歩けば自動販売機に当たる。地方に行っても、山間部で煌煌と明かりを放つ自動販売機を見かけることは珍しくない。でも、それは日本特有の光景らしい。

町田 僕は1970年代から自動販売機の写真を撮っているんです。ときどき、機械自体は古くなって稼働していないのだけど、古い缶がそのまま入っているものがあったり、面白い発見もあります。

石川 自動販売機が道の10メートルおきにあったり、1カ所に何台も並んでいたりという、日本中どこにでもある景色は、実は世界の中で異様なものだと思います。例えばアメリカなどでは、機械の中にある小銭を盗むために本体ごと重機で持っていかれちゃう心配があるから野放図に置けない。そう考えると日本はのどかですよね。新商品が多いのも特徴だと思うから、日本は缶コレ天国だ!

清水 日本では年間に約1000種類もの新商品が出ています。それほど多い日本の清涼飲料水ですが、20年くらい前に、ある雑誌の特集で同じメーカーの同じ種類の炭酸飲料について、日本各地の製造工場でつくられたものの味わいの違いをブラインドテストで比べてみたことがありました。
 面白いことに、「おいしい」と感じるのは、自分の出身地で飲んでいたものという傾向がありました。同じ種類の缶ドリンクでも、実は製造工場によって微妙な味わいの違いがあるのかもしれませんね。

――町田さんが撮りためた自動販売機の写真は、個人のコレクションの域をこえて、近代日本史を物語る貴重な資料となり得るだろうし、清水さんが披露してくれたブラインドテストの話も興味深いエピソード。次回は、収集魂の本質「人はなぜ集めるのか」について語り合ってもらいます。(つづく)

(構成:山下あつこ、撮影:永田まさお)

『懐かしの空き缶大図鑑』
本体2,200円+税

約3万缶のコレクションの中から厳選した空き缶650缶と軽妙なエッセイを収録。石川浩司さんの新刊

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★「すべて自分が飲んだ飲み物の缶だけ集める」という石川さんこだわりの空き缶コレクションをつづった連載「石川浩司の缶コレランニング」はコチラ

かもめの本棚インスタグラムでは、2017年10月から2019年2月までほぼ毎日空き缶を紹介した「今日の空き缶」を公開中です。

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【いしかわ・こうじ × まちだ・しのぶ × しみず・りょうこ】
◆石川浩司◆1961年東京都にて逆子生まれ。神奈川県・群馬県育ち。現在は、3万缶におよぶ空き缶コレクション保管のために埼玉県在住。バンド「たま」にてランニング姿でパーカッション、ボーカル担当。90年に『さよなら人類』でメジャーデビュー。同曲はオリコンシングルチャート初登場1位となり、日本レコード大賞最優秀新人賞などを受賞。同年、NHK紅白歌合戦に初出場を果たす。2003年の「たま」解散後はソロで「出前ライブ」などの弾き語りおよびバンド「ホルモン鉄道」「パスカルズ」などで活動中。旅行記やエッセイなどの著作も多数ある。

◆町田 忍◆1950年東京都生まれ。庶民文化研究家。警視庁勤務などを経て、少年時代から蒐集し続けている商品や各種パッケージなどの風俗意匠を研究するために「庶民文化研究所」を設立。著書に『最後の銭湯絵師』(草隆社)、『戦後新聞広告図鑑』(東海教育研究所)など。

◆清水りょうこ◆1964年東京都生まれ。80年代から「清涼飲料水評論家」として、飲料関係の記事やコラムを執筆。また、各種メディアにも登場。著書に『なつかしの地サイダー』(有峰書店新社)、『日本懐かしジュース大全』(辰巳出版)など。東京都青梅市にある「昭和レトロ商品博物館」缶長。
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