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食べるしあわせ
フランスの小さな村の小さなワイン moulla ソムリエ
堀澤和弘
第2回 その土地に根づいたこだわりの味がある
 北はドイツとの国境にあるアルザス&ロレーヌ地方から、南はイタリアの文化がミックスするコルス島(イタリア語でコルシカ島)まで、小さな村でつくられた珠玉のワインを、その村ならでの美しい風景や歴史とともに発信しているオンラインサイト「moulla(ムーラ)」。インタビューの2回目はソムリエ・堀澤さんおすすめのワインを例に挙げながら、作り手のこだわりを教えてもらいました。

南仏ミネルヴ村でワインづくりを営むヴォルディ夫妻
――作り手のこだわりや個性が色濃く反映される、という小さな村の小さなワイン。16の村の26種類のワインを前にすると、まずはどれを飲もうか迷ってしまう。

 選ぶのに悩んでいる方には、「キュヴェ・ルネ」(3861円※赤ワイン)と「ロス・ガル・ブラン」(3685円※白ワイン)をおすすめします。「キュヴェ・ルネ」は、前回の「新年を祝うワイン」でも紹介しました。いずれも南仏ミネルヴ村にあるドメーヌ・ヴォルディという比較的新しいワイナリーでつくられた有機ワインです。
 生産者のヴォルディ夫妻はともに公務員でしたが、20年前におじさんのワイナリーを受け継ぎました。現在は息子さんと3人で、樹齢100年をこえるカリニャンをはじめ、ルーサンヌやグルナッシュブランなど、その土地ならではのブドウ品種を22ヘクタールの畑で育ててワインをつくっています。

「ロス・ガル・ブラン」

「キュヴェ・ルネ」
――フランス南部のラングドック・ルシヨン地方に位置するミネルヴ村は、ブリアン川とセス川の合流によって刻まれた深い渓谷に囲まれる、石灰岩台地の端に位置する人口120人程度の村。ローマ教会から異端とされたカタリ派が多く、中世から時が止まっているかのような古い街並みが残っている。

 ラングドック・ルシヨン地方やプロヴァンス地方には、ガリーグと呼ばれる石灰岩質の白くて乾燥した大地が広がっています。もともと貝の化石である石灰には海のエキスが含まれているため、その土地からつくられたワインはわずかな塩味を含んだすっきりとしたミネラルな風味。ガリーグの大地に茂るローズマリーやタイム、セージといったハーブ類のスパイシーさも味の特徴になっています。

深い渓谷に囲まれたミネルヴ村
 スミレの香りがほのかに漂う芳醇で繊細な「キュヴェ・ルネ」には、グルナッシュとムールヴェードルというブドウ品種が半分ずつブレンドされています。この2つはブドウ品種としてはそれほど特別なものではありませんが、通常ではアクセントとして少しブレンドする程度。それを半分ずつブレンドさせて独特の味わいを出しています。一方の「ロス・ガル・ブラン」は、主にこのあたりでしか栽培していないブドウ品種のルーサンヌ70%とグルナッシュ30%をブレンド。乳酸発酵を行うことで、まろやかな味わいを引き出しています。

――小さなワイナリーだと、ブドウのブレンドも自分たちの判断でできてしまう。ドメーヌ・ヴォルディのように、中には大手のワイナリーが手がけないような独特のブレンドをするところもあるそうだ。

 目新しいからブレンドするというよりは、その土地にしっかり根づいているブドウ品種を用いていることが重要です。つまり、その土地でそういう味わいが求められているからで、決して自己満足でつくっているのではありません。周りの土地や人々に愛されているワインをつくっているだけなのです。そして、それこそが小さな村の小さなワインのいちばんの特徴といえるでしょう。

――ワインをつくった人々が暮らすのはどんな村なのか? その風景や人々の営みに想像力を広げてワインを飲めば、味わいもさらに深まるに違いない。気の置けない仲間たちと集う機会が増えるこの季節、小さな村のワインはたくさんの話題を提供してくれそうだ。次回(最終回)は、「おすすめのワインは、まだたくさんあります!」という堀澤さんに、作り手のこだわりが光る個性派ワインを引き続き紹介してもらいます。(つづく)※価格はすべて税別

(構成:山下あつこ+編集部)

【moulla(ムーラ)のオンラインサイト】http://www.moulla.jp/
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【ほりさわ・かずひろ】
大学卒業後にフランスに渡り、ロワール地方のワイナリーでブドウの栽培から醸造までを住み込みで学ぶ。大手飲料メーカーを経て、2016年に株式会社グラムスリーに入社。現在は海外事業部・ワイン部門に所属し、2017年4月にオープンしたオンラインサイトの「moulla(ムーラ)」ブランドのソムリエとして、フランスの小さな村でつくられた小さなワインの輸入・販売・PRを手がけている。
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