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きれいをつくる
描く弾く語る! ビートルズ 東海大学教授×ジャズピアニスト
石塚耕一×木原健太郎
第2回 リンクする「アルバムジャケット」と「音楽」
 レコードジャケットをテーマに、アートの視点からビートルズの魅力をひもといた、新刊『ビートルズのデザイン地図』。アルバムジャケットがインターネットを介して画面上で見るものになりつつある今だからこそ、そのデザインワークをあらためて見直すことで、思いがけない発見があるはず!
 今回は、アルバムジャケットの役割やジャケットと音楽とのつながりについて、画家と音楽家、それぞれの立場から語ってもらいます。


――ジャズピアニストの木原健太郎さんは、この本を読んでどんな感想を持ちましたか?

木原 とにかく石塚先生の「ビートルズ愛」にあふれた解説文に圧倒されたと同時に、「アルバムジャケットのデザインってこんなにも重要だったんだ」と、あらためて感じました。僕らがアルバムを出すときもそうですが、収録した楽曲の世界観を視覚的に表したのがジャケットであり、デザインは音楽とは切っても切れないもの。2つがそろって初めて1つの作品になるということを、ビートルズのアルバムジャケットを通して伝えてくれたと思います。
 今は音楽もデジタルで配信する時代ですが、インターネットで好きな曲をダウンロードするのもいいけれど、ジャケットを手にしてそれを見ながら、曲の構成がどうなっているかとか、曲と曲の微妙な間合いといった、アーティストの思考にまで思いを馳せてほしいというメッセージも込められていると感じました。

石塚 もともとLPレコードのジャケットは縦横約31?×31?の厚紙製で、CDと比べるとけっこうな存在感と迫力があるんです。私が教員になったころは、高校生の家へ行くと、よく部屋の壁にLPが飾られていました。ということは、LPジャケットはポスターであり、一種のグラビアでもあった。自分の好きなアーティストの象徴として、常に身近なところに置いておくものでした。だから、現在とは全く違う価値観を持っていて、それだけに当時は注目度が高かったということがいえると思います。
 レコードは紙のジャケットに入っていましたが、1980年代にレコードがCDに変わるとケースはほとんどがプラスチック製になりました。しかし、2009年にデジタル・マスター使用でユニバーサルミュージックから発売されたビートルズのCDは、「紙ジャケ」(紙製のジャケット)です。プラスチックのケースのほうが傷つきやすくて割れやすいことが30年以上のCDの歴史の中で認識されてきたのはご存知の通り。人間はやっぱり紙が好きだし、紙の質感のほうが肌に合う。紙のよさが見直され、「紙ジャケ」の付加価値が高まるのではないでしょうか。

――デザイナーなら、「一度はアルバムのジャケットデザインを手がけてみたい」と思う人も多いでしょう。紙のジャケットの復活によって、若手にもどんどんチャンスが回ってくるかもしれません。

木原 デザインもパソコンでパパッとできてしまう時代ですが、ビートルズのような伝説的なバンドのアルバムジャケットを参考にしたり、アートの歴史を勉強したりすることで、より心に響くデザインが生まれる可能性は高い。そういう意味でも、この本『ビートルズのデザイン地図』を大いに活用したらいいと思いますね。

――木原さんも数多くのアルバムをリリースしていますが、アルバムデザインにはどんなこだわりを持っているのですか?

上:木原さんのCD『空を見上げて』のジャケットもマックス・ワイントラウブ氏のデザイン
下:アニメーション『Olle Eksell in Motion』のDVD

木原 僕のアルバムはイラストタッチのデザインが多いのですが、そのほとんどはアニメーターのマックス・ワイントラウブにお任せしています。マックスとはこれまでいろんなアニメーション作品でコンビを組んできました。たとえば、スウェーデンの著名なグラフィックデザイナー、オーレ・エクセルが遺した作品をマックスがアニメーション化し、オーレが生前好きだったジャズをヒントに僕が音楽を書き下ろしたコラボレーション作品『Olle Eksell in Motion』は、日本でも、東京MXテレビをはじめ各地方局やFoodiesTVでも放映されています。
 反対に、僕のバンド(木原健太郎withベリーメリーオーケストラ)のライブのために、マックスが新作アニメーションをつくってくれることもある。大まかなイメージを伝えれば、お互いのやりたいことがわかるので、安心感があります。

石塚 『Olle Eksell in Motion』は本当に完成度が高くて、今、大学の講義でも使っているくらいです。マックスは木原さんことをよく知っているから、「あ・うん」の呼吸で曲に合うイラストレーションがつくれるんですね。だから、イラストを見れば曲が聴こえてくるし、曲を聴くとイラストが浮かんでくる。非常に密接ないいコンビネーションだと私は思います。ライブ会場で実際に映像を流しながらの演奏も聴かせてもらいましたが、音楽とアニメーションの動きが完全にシンクロしていて実に気持ちがいいというか、なんともいえない高揚感がありました。

――音楽とデザインは互いに響き合うものなのですね。次回は、ビートルズの音楽の普遍性から楽器との対話まで、音楽についての話をさらに深めていきます。

(構成:宮嶋尚美、取材協力:HARBOR'S CAFE大さん橋)

※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『ビートルズのデザイン地図』が絶賛発売中です(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。
WEB連載「ビートルズ~アートの視点から読み解く4人の奇跡」はこちらをご覧ください。


☆石塚耕一先生のブログ「学びの森」こちらから↓
http://manabinomo.exblog.jp/

☆ジャズピアニスト・木原健太郎さんの公式サイトはこちらから↓
http://kentarokihara.net/
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【いしづか・こういち×きはら・けんたろう】
◆石塚耕一◆1955年北海道生まれ。北海道教育大学卒業。北海道おといねっぷ美術工芸高校や北海道松前高校、北海道釧路明輝高校などで校長を務め、2013年より東海大学国際文化学部デザイン文化学科教授。アート、デザイン研究と同時に絵画や映像などの制作にも取り組み、北海道内を中心に数々の個展を開催。おといねっぷ高の生徒たちの成長を描いた著書『奇跡の学校 おといねっぷの森から』(光村図書・2010年)は、韓国でも翻訳版が出版されている。

◆木原健太郎◆1972年北海道生まれ。アメリカ・バークリー音楽大学卒業。帰国後ジャズピアニストとして活動を始めるが、徐々にシンプルなメロディー&演奏にこだわった作曲・演奏を始めるようになり、1999年以降数々のアルバムをリリース。ソロ活動のほか、アースミュージックシンガーのスーザン・オズボーンなど国内外のアーティストと共演。近年はポップジャズバンド「木原健太郎withベリーメリーオーケストラ」や、能とのコラボレーションユニット「縁~enishi~」での公演など活動の幅を広げ、作曲家としても活躍中。
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