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美しいくらし
好奇心は人生を豊かにするスパイス 「裸足でスパイス」店主
井上由香
第1回 カルダモンライスに魅せられて
 吉祥寺の「ハモニカ横丁朝市」や高円寺の「座の市」など都内近郊で開催されている青空市で、シナモンやカルダモン、マスタード、クミンなどを移動販売している小さなお店「裸足でスパイス」。くりくりの坊主頭と人なつっこい笑顔がトレードマークの井上由香さんが店主です。「もっと気どらず、気負わずに使ってほしい」と語る彼女。知っているようで知らない魅惑のスパイスワールドについて、3回にわたって教えてもらいました。

築地本願寺の境内で月1回開催される「安穏朝市」で
――それにしても超個性的なヘアスタイル。一度会ったら忘れられません。スパイスよりもその坊主頭にうっかり目を奪われてしまいそうですが、そもそも移動販売のスパイス屋さんを始めたきっかけは?

 2013年11月から8カ月間アフリカを旅していたのですが、タンザニアの北東にあるキリマンジャロの麓にあるモシ(MOSHI)という町に滞在していたときのことです。この辺りはタンザニアを代表する穀倉地帯。ここの市場で食べたカルダモンライスがとにかくおいしくてびっくり! スパイスの魅力に開眼してしまいました。この感動をみんなに伝えたいと思って、帰国後少し経った14年8月にこの店(「裸足でスパイス」)を始めました。

――インドやスリランカが原産のカルダモンは、カレーに欠かせないショウガ系のスパイス。爽快感のある鮮烈な香りが特徴で“スパイスの女王”とも称される。

 アフリカから帰国してすぐに、吉祥寺の「ハモニカ横丁朝市」でカルダモンを販売しました。日本では名前こそ聞いたことがあっても、まだそれほどなじみがあるとはいえないスパイスです。そこでカルダモンライスのレシピなど、実際の使い方を小冊子にまとめて紹介しました。それが功を奏したのか、おかげさまでとても反応がよかった。これならスパイス屋としてやっていけそうだと確信しました。

――カルダモンライスの作り方はいたって簡単。白米にカルダモン1、2粒と塩、少量の油を入れて炊くだけ。タンザニアではココナッツの絞り汁を使うそうだが、水でも大丈夫なんだとか。

 もともと料理好きだったので、スパイスの意外な使い方を自分でももっと発見できるかもしれないと思いました。そんなこんなでたった一人でスパイス屋を始めたものの、当時はスパイスについてそれほど詳しかったわけでもありません。そんな初心を“裸足”に例えて屋号を「裸足でスパイス」としました。ちなみに、この坊主頭はスパイスとはなんの関係もありません(笑)。もともとベリーショトだったのですが、ある日突然、坊主頭になりたくなって……。このヘアスタイルにしてもうすぐ4年になります。

――そして今、店の人気商品の一つとなっているのがシナモンティー用の「シナモン」。やかんに水とシナモンの樹皮を入れて火にかけ、沸騰したら火を止めて一晩置いておくだけ。とっても簡単なのにびっくりするほど甘くておいしい。

 このレシピを発見したのは全くの偶然。シナモンの樹皮を熱湯に浸けたままうっかり寝てしまったのですが、翌朝その水を飲んでみたら特有の香りとともに驚くほどの上品な甘さが出ていたのです。パウダーやスティックのままで味わってももちろん甘いのですが、同時に辛さも主張してしまう。熱湯に漬けることで辛みを抑え、香りと甘味がうまく溶け出してくるのだと思います。

――シナモンは血行をよくする作用があるとして、古くから漢方薬でも使われてきた。おいしく飲みながら体が温められるとなると、冷えが気になる女性なら一度は試してみたくなる。次回はスパイスとの出合いがあったアフリカの旅の話を聞きます。


(構成:山下あつこ、撮影:街道健太)

【「裸足でスパイス」のホームページアドレス】
http://hadasidespice.jimdo.com/

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【いのうえ・ゆか】
1978年広島県生まれ。2013年11月から半年間、ケニア、タンザニア、ウガンダを旅したことをきっかけに、翌年から移動販売のスパイス屋さん「裸足でスパイス」を始める。吉祥寺の「ハモニカ横丁朝市」、高円寺の「座の市」など都内近郊で開かれている青空市に定期的に出店している。
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