
フランスには、小さいけれどほかにはない魅力のある村々が点在しています。WEBマガジン「かもめの本棚」創刊時から、その魅力を紹介してくれたトラベル・ジャーナリストの寺田直子さん。取材を重ねた村々を撮り下ろしの豊富なカラー写真と情感豊かな文章で案内する紀行エッセイが、すてきな本になりました。刊行を記念して、「美しい村」の魅力をトラベル・ジャーナリストの寺田直子さんとフランス観光開発機構在日代表のフレデリック・マゼンクさんに語り合ってもらいます。―― 新刊書では、「フランスの最も美しい村(Les plus beaux villages de France)」協会に加盟する153村(2015年12月現在)のうちの23の村をはじめ、旅の途中でめぐり会った6つの村と、環境が整備されて完全な島になったモン・サン・ミッシェルを加えた30カ所が紹介されています。寺田 どれもこだわりを持って選んだ村ばかりです。協会に加盟している村は現在155あり、まずはどこを訪ねるか悩みました。そこで、フランスの観光政策を担うフランス観光開発機構に協力いただき、おすすめの村のリストを作ってもらったのです。「美しい村」はフランス南西部と南東部に集中していて、特にミディ・ピレネー地方には多くの村が点在しています。初めて訪ねるなら、このあたりがおすすめですね。

現在協会の本部があるゴルド
マゼンク 私もミディ・ピレネー地方の出身なんですよ。この地域の村々は、12世紀ごろに活躍したキリスト教の修道士によるテンプル騎士団が最盛期に支配していたことから、宗教の影響を色濃く受けた歴史があります。7つもの騎士団の城があり、景観も見るべきものが多いですね。いずれも中心都市のトゥールーズから車で入ってぐるりと周れます。
寺田 協会は厳しい選定基準を設けており、歴史的・文化的に貴重な村を保全するとともに個性的な魅力で観光客の誘致に結びつけています。私が訪ねた村でも多くのフランス人観光客を見かけました。フランスの人々にとって、「美しい村」はどう捉えられているのでしょう。
マゼンク 「美しい村」のコンセプトは広く知られています。ヨーロッパの中でも特に国土が広いフランスは、地方の特徴もはっきりしています。プロヴァンスの人から見るとボルドーはかなりエキゾチックに映るし、ボルドーの人が見るとニースは別世界。多くのフランス人が国内観光を楽しんでいますが、そのときには「今年の夏のバカンスではこの地方をひと巡りしよう」というように、ひとつの村ではなくある地方を1周しようと考える。地方に点在する村々の自然や絶景、食べ物などを丸ごと楽しむのです。
―― 次回は「第1回 個性あふれる村々(後半)をお届けします。(構成:白田敦子)
【てらだなおこ×ふれでりっく・まぜんく】
【寺田直子】
トラベル・ジャーナリスト。東京都生まれ。日本とオーストラリア・シドニーの旅行会社勤務後、編集プロダクションを経てフリーランスとして独立。これまでに60カ国以上を訪れ、年間150日は国内外のホテルに宿泊している。著書に『ホテルブランド物語』(角川oneテーマ21)、『泣くために旅に出よう』(実業之日本社)などがある。
【フレデリック・マゼンク】
フランス観光開発機構 在日代表。フランス、ミディー・ピレネー地方ミヨー生まれ。パリ政治学院卒。2000年~2006年フランス政府観光局(当時)日本事務所、2006年~2015年フランス観光開発機構中国事務所勤務を経て、現職。アジア・太平洋・中近東地区統括責任者も兼任している。