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食べるしあわせ
蔵元に生まれ、蔵人になる
蔵人の会
第1回 「蔵を継ぐ」のは当たり前じゃない?!
 味噌や醤油、酒など、私たちの食生活を支えている発酵食品。その醸造元やオーナー家が「蔵元」です。蔵元の後継者として生まれた学生有志が、家業や自らの生い立ちを生かして醸造業界や製品の魅力を伝えようと、「蔵人の会」を結成し、活動を始めています。現在は蔵元の後継者以外にも、首都圏の大学から酒造りや発酵食品に関心を持つ20人ほどの学生が参加しています。メンバーの多くが通う東京農業大学を訪ね、5人の学生たちに活動の様子や若き蔵元後継者ならではの夢や葛藤を根掘り葉掘り。これから4回にわたってお届けする、ちょっぴりほろ苦くて味わい深い「蔵人」ワールドをご堪能あれ。

         実家の蔵元の製品を手に、左から鈴木さん、石井さん、大竹さん、内田さん、三浦さん



――集まってくれたのは、東京農業大学に通う、いずれも蔵元の後継者ばかり。4年生で代表の大竹令馬さん、3年生の鈴木昂徳さん、石井美紀さん(4年)、内田圭哉さん(同)、入会したばかりの2年生、三浦華子さんの5人だ。まずは結成のきっかけや参加の動機から。

大竹 僕の実家は岐阜県で昔ながらの製法で味噌と醤油を作っている蔵元です。僕はその6代目。アルバイト先で知り合った鈴木くんと、互いの実家が味噌を作っていることから意気投合。「実家の味噌を売ってお小遣い稼ぎをしたいね」という軽い気持ちで、都心で定期的に開かれている「青空市場のマルシェ」に出店しようとしたところ、「団体でなければダメ」と言われ、2人で「蔵人の会」を立ち上げました。それが2年前のこと。跡取り息子同士のちょっとした悪巧みがきっかけでした(笑)。

鈴木 僕の家は、創業150年の味噌蔵です。大竹さんは先輩だけど、話してみると実家のことや蔵元の後継者としての悩みや葛藤など、ものすごくわかり合えた。僕らと同じような境遇で共通の悩みを打ち明けられる仲間がいたら……そう思って、独学でホームページを作ったりSNSを活用して蔵元後継者の仲間を集めたんです。

――鈴木さんと、この日は残念ながら参加できなかった焼酎の蔵元の後継者、横山龍太郎さん(3年)は、ともに副代表。大竹さんを加えた3人で農家の支援イベントなどの活動をスタート。やがて、両親から「友達の輪を広げることが今後に生きてくる。大学では幅広い人間関係を作りなさい」と教えられてきたという内田さん、学生時代を充実させる“何か”を模索していた石井さんらが加わった。

石井 私は文政10年創業で、間もなく190周年を迎える酒蔵に生まれました。友人のフェイスブックで「蔵人の会」を知り、「これだ!」とすぐに代表の大竹さんに連絡しました。大学で実際に会ってみると、テンションが高くて少し変な人(笑)。でも、大きな夢を持っていて、この会なら面白いことができそうだと思ったんです。

――味噌や醤油、日本酒やワイン……作る商品は違うが、いずれも代々続く蔵元。くったくなく笑う彼らには、後継者としての期待が寄せられている。家業について、また蔵を継ぐことについて、これまでどのように感じていたのだろう。

内田 僕の場合は家族経営のワイナリーなので、3歳ごろから工場案内などを手伝ってきました。だから幼いころから「いずれは4代目として僕が継ぐんだろう」と漠然と思っていた。高校に入ったときにはもう継ぐ意思を固めていましたね。

石井 二人姉妹でしたので長女としての自覚は常にあり、私が家業を継ぐことは我が家の決定事項になっていました。私の物心がつく前のことです。近所の人にも、名前ではなく屋号で呼ばれるような子ども時代。そのことを無条件に受け入れていた半面、蔵を継げる自信もなく、「どうして私が継ぐのか」という違和感もありました。ピアノ教室の先生になりたいと思ったこともあるし、大学で好きなことをやりたかった。敷かれているレールから外れたくて自暴自棄になったこともあります。でも東京農大で醸造を学び始めて「蔵人の会」に出会ったことで、「やはり私は蔵を継ぐんだ」という気持ちに落ち着きつつあるといったところでしょうか(笑)。

――「実は僕らも実家を継ぐのが嫌で嫌で……」と苦笑している大竹さんと鈴木さん。蔵を継ぐことが当然と考えていた者もいれば、そのことが重荷になっていた者もいる後継者たち。それが「蔵人の会」で出会い、一緒に活動していくことで、蔵元の後継者であることをポジティブに捉えていきます。次回は、そんな「蔵人の会」の目的や活動をご紹介します。

(構成:小野哲史)

【蔵人の会ホームページアドレス】
http://kurabito.info/
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【くらびとのかい】
日本の醸造業を支える蔵元の大学生後継者を中心に構成された会。2014年の結成以来、蔵元めぐりや実家の商品の品評会を兼ねた酒宴「樽俎(そんそ)の会」を開催している。現在は蔵元の後継者以外にも、首都圏の大学から酒造りや発酵食品に関心を持つ20人ほどの学生が参加。岐阜県で6代続く味噌・醤油蔵の後継者、大竹令馬(東京農業大学4年)が代表を、山形県で創業150年の味噌蔵の後継者、鈴木昴徳(同3年)と長崎県壱岐市にある焼酎の蔵元の後継者、横山龍太郎(同)が共同副代表を務めている。
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