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映画を通して「憲法」を考える 映画監督
松井久子
第3回 一人ひとりの力が未来を変える
 新作ドキュメンタリー映画『憲法の未来 私たちが決める』の4月公開に向け、製作を続けてきた映画監督の松井久子さん。取材を重ねるうえで松井さんがぶつかった壁の一つが、人々の政治や憲法に対する関心の低さだといいます。その背景や原因、そして変化の兆しについて聞きました。

――昨年9月の安全保障関連法成立の際には、国会前をはじめ全国各地で抗議デモや集会が巻き起こりましたが、まだまだ“一部の人”の行動のように思う空気感も漂っています。政治や憲法への関心が高くないのは、何が原因だと考えていますか?

 先日、若者と政治をつなぐための活動をしている特定非営利活動法人「Youth Create」(ユースクリエイト)代表の原田謙介さんと話す機会がありました。1986年生まれの原田さんに聞きたかったのは、「若い人たちが政治や選挙を遠いものと感じる原因は何か?」ということです。私は、学校で政治や憲法を教えてこなかった教育に問題があると思っていました。ところが原田さんの考えは、「70年安保のとき、東大安田講堂事件をきっかけに、文部省(当時)から高校に政治教育を事実上禁止する通知がでました。これにより高校生は政治的を考える場を失い、それが40年以上続いている。このことがとても大きいと思います」というものだったのです。

 私の学生時代(1960年代後半)は学生運動が盛んな時期でした。私自身も、政治が自分たちの未来につながっていると信じていました。しかしその運動は挫折し、結果として若者たちは敗北感にまみれて終わりました。その後若者たちは、口をつぐんだまま大人になり、次の世代の人たちに「政治」を語ってこなかったのです。原田さんの話を聞いて、今の社会の無関心をつくった原因の一端は私たち世代にあったと気づいて、非常に大きな責任を感じました。

――絶対数から見るとまだまだ少ないとはいえ、「政治が自分たちの未来につながる」と考えて行動を起こす若者も増えている。そこにわずかな希望が見えます。

金沢ロケで、夕景の中の21世紀美術館をカメラに収める
 私たちの世代の学生運動は、上層部(リーダー)からの指示や所属する党派などの主義・主張に従って、物事を考えたりデモに参加したりしていました。でも安保法案の是非をきっかけに、若い世代を中心に一人ひとりが「このままでいいのかしら?」と自分自身の生活の延長線上で問題を考え、行動を起こし始めています。デモに参加することは勇気がいる行為なのに、誰かに言われたからではなく、自分の意思で参加したり、ママたちが横のつながりでグループを広げたりする様子がとても頼もしい。
 今までにないほど多くの人が自分たちの問題として憲法や政治を捉え始めているのを見ると、昨年9月の安保法の成立がどれほど重大なものだったのかをあらためて考えさせられます。

――最終回 「思いが人を動かす」では、多くの人の支援によって映画を製作する松井さんに“他者を巻き込む力”についてうかがいます。
(構成::正岡淑子)

【映画監督・松井久子さんの公式ホームページ】
http://www.essen.co.jp

【「憲法の未来」facebookページ】
https://www.facebook.com/Kenpounomirai/

【ドキュメンタリー映画「憲法の未来 私たちが決める」オフィシャルサイト】
http://www.syuken.jp
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【まつい・ひさこ】
1946年東京都生まれ。早稲田大学文学部演劇科卒業。雑誌ライターを経て、76年に俳優のプロダクション(有)イフを設立。85年に(株)エッセン・コミュニケーションズを設立し、プロデューサーとしてテレビ番組を多数企画・制作。映画初監督作品『ユキエ』(98年公開)では老いを描き、内外の映画祭で高い評価を得る。第2作『折り梅』(2002年公開)では介護を描き、公開から2年間で100万人の観客を動員。日米合作の第3作映画『レオニー』を10年11月より全国ロードショー上映。15年にはフェミニズムを生きた女性たちを題材としたドキュメンタリー映画『何を怖れる』を公開した。
著書・編著:『ターニングポイント~「折り梅」100万人を紡いだ出会い』(2004年講談社)、『ソリストの思考術 松井久子の生きる力』(2011年六耀社)、『何を怖れる フェミニズムを生きた女たち』(2015年岩波書店)
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