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映画を通して「憲法」を考える 映画監督
松井久子
第2回 普通の人々に見てほしい
 目下、新作ドキュメンタリー映画『憲法の未来 私たちが決める』(仮題)の編集作業真最中だという、映画監督の松井久子さん。憲法の未来が私たちの日々の生活に直接かかわることを、映画を通じてどのように伝えればいいのかに心を砕いて、製作に取り組んだと教えてくれました。

――憲法や政治に無関心の人が多い中、ドキュメンタリー映画というジャンルの中でこれらのテーマをどのように描くのか、とても興味があります。

札幌ロケの合間に『レオニー』撮影の思い出の地・モエレ沼公園へ。助監督の上村奈帆さんと
 この映画を見てほしいのは、憲法や政治に興味がないまま生活をしている人たちです。憲法のことなど考えたこともない人に、その成り立ちや、これまでたどってきた歴史的事実も丁寧に伝えたいと思っています。取材対象者も普通の人たちから選びました。彼たち彼女たちが、今なぜ憲法に興味を持ち、活動しているのかという視点からね。
 安全保障関連法案(安保法案)に反対するママの会を立ち上げるまではごく普通の主婦だった女性、自衛隊員の家族、戦争を体験した97歳の男性、「SEALDs」に参加する沖縄の学生、これから選挙権を持つ高校生、障害者の母娘などなどです。もちろん、護憲派の人、護憲的改憲論者、そして改憲派の自民党議員にも取材しました。映画では彼らも含めたさまざまな人たちの意見を、すべて並列にお見せするつもりです。

 作り手の私にとっての関心は、イデオロギーや政治的主張を示すのではなく「人間」を描くこと。人は、人そのものに興味を持っている。観客も映画に登場する人物に興味を持てるならば、「その人の考えを聞いてみよう」という気持ちになると思うのです。

 この映画は憲法改正賛成または反対を主張するものではありません。観客の皆さんに、「何を選ぶのか、自分で考えてください」と問いかけたい。そして、皆で議論をしてほしい。そのためのきっかけをつくろうとしているのです。映画を見た後に話し合いの場を設け、積極的に意見交換をしてほしいと願っています。“国民主権”なのだから、決めるのは私たち国民です。私のメッセージは作品に込めますが、選択するのはあくまで観客自身です。

――これまであまり憲法を意識してこなかった、または深く考えてこなかった人にぜひ見てほしいとのことですが、そういう人たちが憲法をテーマにした映画を見に行ったり、上映後の話し合いに参加したりするでしょうか?

 日本のフェミニズムの歴史と現在も続いている女たちの活動を映像でつづったドキュメンタリー映画『何を怖れる』を製作したとき、女性運動に関心がある人や運動にかかわった当事者周辺の人しか見てくれないのではないかと思っていました。でも実際には、年配の方から若い方までさまざまな女性が見に来てくれました。「映画に出演した女性たちがこれだけ頑張ってきたから、今があるんですね」と言ってくれた若い女性や、ウーマンリブの対極にいた裕福な専業主婦の「私、彼女らのことを誤解していたわ」という感想をたくさん聞くことができたのです。とても励まされましたね。

 多くの女性が『何を怖れる』を支持してくれたのは、私がウーマンリブの闘士ではなかったからだと思うのです。憲法についても、私はどのグループにも属していません。一個人として、憲法に関心のない普通の人たちの気持ちがとてもよくわかるのです。

 興味のない人に振り向いてもらうのはとても難しいことですが、これまでの映画も、普通の人々はどう思うのか、どのように表現したら説得力を持つのかを、いつも考えながらつくってきました。今回も、「憲法の問題をもっと真剣に考えなくてはいけない」「しっかり勉強して自分で選択したい」と思ってもらうためにどう見せればいいのか、日々、ずっと悩みながら映画をつくっています。

――第3回「一人ひとりの力が未来を変える」では、憲法や政治に対する関心の低さを招いた背景や原因を探ります。
(構成:正岡淑子)

【映画監督・松井久子さんの公式ホームページ】
http://www.essen.co.jp

【「憲法の未来」facebookページ】
https://www.facebook.com/Kenpounomirai/

【ドキュメンタリー映画「憲法の未来 私たちが決める」オフィシャルサイト】
http://www.syuken.jp
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【まつい・ひさこ】
1946年東京都生まれ。早稲田大学文学部演劇科卒業。雑誌ライターを経て、76年に俳優のプロダクション(有)イフを設立。85年に(株)エッセン・コミュニケーションズを設立し、プロデューサーとしてテレビ番組を多数企画・制作。映画初監督作品『ユキエ』(98年公開)では老いを描き、内外の映画祭で高い評価を得る。第2作『折り梅』(2002年公開)では介護を描き、公開から2年間で100万人の観客を動員。日米合作の第3作映画『レオニー』を10年11月より全国ロードショー上映。15年にはフェミニズムを生きた女性たちを題材としたドキュメンタリー映画『何を怖れる』を公開した。
著書・編著:『ターニングポイント~「折り梅」100万人を紡いだ出会い』(2004年講談社)、『ソリストの思考術 松井久子の生きる力』(2011年六耀社)、『何を怖れる フェミニズムを生きた女たち』(2015年岩波書店)
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