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きれいをつくる
バラの香りで“幸せ”に ロザリアン
蓬田勝之 x 村上 敏
第3回 自分で育てたバラがいちばん
 ロザリアン(バラ愛好家)のお二人から、バラの香りの魅力を教えてもらう第3回。今回はバラの香りとの上手な付き合い方がテーマです。

※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『バラの香りの美学』を好評発売中です(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。Web連載「香りの科学~バラは百薬の長~」はこちらをご覧ください。


――つぼみからゆっくりと花が開いていき、徐々に香り立ちが変化していく様子を味わえるのは、やはり本物のバラならでは。自分が育てたバラなら、何度でも香りを確認する楽しみがありまね。

蓬田 バラは朝日が昇り始めると花弁から香りが発散され、そのときの香りのバランスは本当に素晴らしいものです。ところが、陽が高くなるとだんだんと香りが落ちてきて、夜になると発散するのをほぼ止めてしまう。人間も夜、寝ているときは呼吸が浅くなるように、何百分の一しか香りを外に出さなくなるのです。そしてまた、朝日が昇ると香りを生産する。その営みは神秘的ともいえます。
 一方、切り花の場合は水に挿すことによって香りが薄まり、専門家にいわせると多少「水っぽく」なってしまう。香りを楽しむのなら、やはり地植えや鉢植えがいちばんです。

村上 「バラが好き」という人は世の中に大勢いますが、その魅力を味わえるのは自分で育ててこそ。最近ではコンパクトな樹形で鉢植えでも気軽に育てられ、手をかけなくても病気になりにくく、春も秋も花が絶えない四季咲きで、さらには香りもいいという初心者向きの品種も出てきています。

――年代によって、人気の品種や香りに違いはあるのでしょうか?

パパ・メイアン
村上 ファッションと同じで、香りの世界にもトレンドはあります。昔は、パパ・メイアンのようにどっしりとした甘さのある重たい香りが人気でしたが、年々、軽めの香りが好まれる傾向になってきました。

蓬田 香りの強さが10段階あったとすると、以前なら8以上でなければ芳香バラとみなさず、それ以下のものは研究対象からは外していました。しかし今は、香りはほのかでも、日本人が好む楚々とした、たとえば白い花の中央にほんのりパープルがさしているような繊細なバラの人気が上昇しています。逆に言えば、そのような姿形を持ったバラに強い香りは似合わない。バラの香りの魅力はますます深まるばかりです。

――バラを育てるなんで畏れ多いと勝手に思い込んでいましたが、バラをこよなく愛するお二人の話を聞いているうちに、「自分でも育ててみようかしら」という気になってきました。さて次回は、季節を問わずに楽しめるバラの香りのフレグランス(香水や香り付きハンドクリーム)の開発秘話を紹介します。


【香りを楽しめて、初心者でも育てやすいバラ品種】
村上さんのおすすめベスト3!


 「バラが好き」という人は世の中に大勢いますが、その魅力を味わえるのは自分で育ててこそ――と話す村上さん。香りを楽しめて、初心者でも育てやすい「バラ品種」のベスト3を教えてもらいました。いよいよ今回は第1位のバラを紹介します。

写真提供:京成バラ園
第1位 「ビバリー」

【特徴】豊かなニュアンスの花色と、素晴らしい香りに恵まれたバラ。その香りはフランス人調香師により、「熟したスモモとライチが混ざり合ったような華やかな香り」と評された。暑さに強い性質で、花名は女性の名前。2008年バーデンバーデン国際コンクール銀賞・芳香賞、2011年ハーグ芳香賞、ほか多数受賞。

【村上さんのおすすめポイント】
明るいピンク系のバラで、とにかく香りのいい品種です。また、非常に丈夫で、花がたくさん付くので初心者でも育てやすいのではないでしょうか。香りは濃厚で、フローラルの落ち着いた芳香を持ちながらフルーティさもあり、とても華やか。少し青味のかかったようなピンク色なので、ブルーの香りの要素であるややシャープな香りを放っているのが特徴です。

(構成・宮嶋尚美、人物撮影・永田まさお)
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【よもぎだ・かつゆき x むらかみさとし】
蓬田勝之(パフューマリー・ケミスト)
1947年秋田県生まれ。資生堂リサーチセンター香料開発室参与を経て、2010年から蓬田バラの香り研究所長。世界で初めてバラの香りをタイプ別に分類した香料分析のエキスパート。著書に『薔薇のパルファム』(求龍堂)などがある。
村上 敏(京成バラ園チーフアドバイザー)
1967年東京都生まれ。京成バラ園芸に入社後、“ミスター・ローズ”と称された故・鈴木省三氏らとともに育種に携わった後、卸、海外窓口、通信販売、商品開発を経て、現在はガーデン部に所属。NHKテレビ「趣味の園芸」の講師も務めている。
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