第1回では、人が生まれながらに、性格の基礎である「気質」を持っているというお話をしました。今回は気質の種類と特徴について説明します。 アメリカの心理学者、A.トマスらは、136人の子どもの乳児期から青年期の成長過程を追跡調査しました。その結果、気質が9つの基準に分類できることを明らかにしています。
生まれながらに持っている9つの気質(1)活動性 活発に動いている時間が長い子と、じっとしている時間が長い子がいます。また動きの激しさにも差があります。お母さんのお腹の中にいるときから、よく動く子とそうでない子がいます。
(2)生理的な規則性 睡眠、食事、排せつなどの生物学的なものに基づく行動や機能が規則正しいかどうかの基準です。昼寝やミルクの時間がほぼ決まっている子もいれば、気まぐれな子もいます。
(3)新しい刺激に対する接近、回避の傾向
初めて触れるものや経験することに対しての反応も個人差があります。珍しいものに自分から近づいていくのか、避けたり逃げたりするのかなどの行動パターンの違いです。
(4)順応性 (3)と関係していますが、新しい状況や環境、人間関係などに対してスムーズに適応できるか否かの違いです。順応性の有無により、環境を変えることがよい刺激になるのか、環境を変えないほうがいいのかを判断できます。
(5)反応の強さ 外的刺激や内的刺激(内部的な身体感覚)に対する反応の強さです。転んだときに「わっ」と大泣きする子もいれば、しくしく泣く子もいます。はっきり反応する子はわかりやすいのですが、あまり表現しない子は、親がしっかり観察しなければいけません。
(6)反応の閾値(いきち) 反応が現れ始めるレベルのことで、どの強さで反応や行動を引き出すかの基準です。転んで膝から血が出ていても平気で遊んでいる子もいれば、尻もちをついただけで泣いてしまう子もいます。
(7)機嫌のよさ 「快」、「不快」の刺激をどれだけ感じやすいのか、また、それをどのくらい直接的に表現するのかの違いです。敏感な子は不快感が大きな苦痛となり、ずっと気にしてしまいます。逆に不快感をすぐに忘れられる子もいます。
(8)行動の可変性 行動を変えさせたり止めさせたりするのに、どれ程度の刺激が必要かの違いです。一度言うだけで行動を修正してくれる子もいれば、何度も繰り返して言わないと変えられない子もいます。
(9)注意の幅と持続性 一つのことだけに注意を向けるのか、複数のことに注意を向けるのか、そしてそれがどれくらい持続するかの違いです。妨害されたときの執着度も子どもによって異なります。一つのことを何時間も集中して続ける子もいれば、いろいろなことに手を出す子もいます。
気質から見た子どものタイプ A.トマスらは、この9つの気質を組み合わせることで、「扱いやすい子」「扱いにくい子」「順応が遅い子」「平均的な子」の4つのタイプに分けました。

「子どもの気質を知る。まずはそこから始めましょう」
「扱いにくい子」は睡眠や食事などが不規則で、不快感に非常に敏感な子どもです。「順応が遅い子」は、新しいことに対して不安を感じ、回避しがちです。どんなことでも慣れるまでに時間がかかりますから、その子のペースに合わせじっくりと付き合う必要があります。
この調査結果では「平均的な子」が35%、「扱いやすい子」は40%で、残りの25%が「扱いにくい子」または「順応が遅い子」となっています。4人に1人はいわゆる“手のかかる子ども”ということです。
“手のかかる子ども”を育てる場合にはたいへんなエネルギーを要します。ついイライラして、言ってはいけない言葉を使ったり、厳しく叱りすぎたりしてしまうこともあるでしょう。それは、親たちの時間や気持ちのゆとりのなさや気持ちの波、子どもとの性格的、行動的な相性などが原因かもしれません。
でも、自分を責めなくても大丈夫。発達心理学や発達臨床心理学では、「親がどうあるべきか」ではなくて、「どうしたら子どもとよい関係が築けるか」という視点から子育てについて考えていきます。そのためには、子どもの気質をしっかりと理解することが大切です。ぜひ一度、子どものこれまでを振り返り、気質について考えてみてください。
※次回は、乳幼児期の子どもの成長過程についてお話しします。(構成・川島省子)
※この記事は2014年12月18日に東海大学サテライトオフィス地域交流センター(神奈川県秦野市)で開催された、「To-Collaboプログラム地域連携講座 子どものこころの理解と対応~第1回児童期編~」の内容を再構成したものです。同センターは東海大学と地域社会を結ぶ情報交流の場として、さまざまなイベントを開催しています。
【東海大学サテライトオフィス地域交流センター】
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