小学校の6年間の中では、人との関係もかかわり方も変わり、体もどんどん変化していきます。子どもたちがストレスを抱えていることは間違いありません。外ではちゃんとしゃべれるのに、家では言葉が少ない。学校では優等生なのに家ではイライラばかり――。今回は、そんな子どもから発せられたメッセージの受け取り方、メッセージの伝え方について紹介します。
子どもからのメッセージの受け取り方 大半の子はストレスを家で発散し、学校では発散しません。なぜなら学校は「外」だからです。子どもたちは安心できる場所(家)で、「こんなにくやしいことがあった。こんなにいやなことがあった」と、つらいことを吐き出しますが、その出し方はとても乱暴です。「お母さんならため息をついただけで自分の気持ちわかってくれる」「お父さんだったらふれくされていても悲しさを理解してくれる」――。子どもは言葉以外の表現方法で親に訴えていくのです。
(1)素直に聴くべきメッセージ 素直に、真剣に聴かなければならないのは、子どもが怒ったり、苦しんだりしているときのメッセージです。「自分自身を持て余して、どうしていいかわからない」「皆が上手にできることが、自分だけできなくてなさけない」。そんな気持ちをコントロールできず、イライラしたり暴言をはいたり、ときには心や体の病気という形で表現することもあるでしょう。
これらは皆、心の状態から出ていること。こうしたメッセージを受け取ったら、言葉をかけるのではなく、子どもが好きな食べ物を一品作ってあげる。それで十分です。親子のコミュニケーションは会話だけではありません。言葉をかけるよりも、そっと何かをしてあげることで思いは通じるものです。親と子はそれだけ深いものでつながっています。
(2)割り引いて聞くメッセージ
「これからは受験勉強を頑張るよ」「塾に行くよ」「今度はいい成績をとるから」などという“うれしい”せりふは、割り引いて聞きましょう。なぜなら、それは子どもが親を気づかって発した言葉だからです。子どもは親に本心をしゃべらないものですが、親の気持ちをとても理解しているのですね。
こうした言葉に対しては、「ありがとうね、気持ちだけね……」という感じで子どもの思いを察してあげればいいと思います。「親に対するリップサービスなんだ」と控えめに聞いておけば、「塾に行きたいというから申し込んだのに、全く行かないじゃないの!」などと怒らずにすみます。
(3)疑って聞くべきメッセージ 親子げんかの言葉は信じてはいけません。相手の心を全く考えることができず、問い詰められた状況の中で発した言葉ですから、本心ではありません。
子どもへのメッセージの伝え方 子どもが一番心配なのは、お父さん、お母さんに見捨てられることです。「もうあなたという子はいらない」と言われたら、おそらく生きてはいけないでしょう。子どもにはきちんと声をかけて、「あなたをいつも見ている」ということを示すべきです。子どもはそれをうるさいと思うかもしれませんが、心の底では「親とはそういうものだ」と思って安心しているはずです。親が何も言わないことは、子どもにとってはとても不安な状態なのです。
子どもは親の顔色をよく見ています。家に帰ったときに元気な顔で自分を迎えてくれるのか、とても気にします。親が元気でゆったりとかまえていることは、子どもにとって最大の安心で、最高のプレゼントなのです。
では、子どもに対して何かを伝えたいときはどうしたらよいでしょう? ここでは効果的な3つの方法を提案します。
1つ目は「アイメッセージ」です。アイは英語の「I」、つまり「私」です。たとえば子どもが門限を守らなかったときには、子ども(You)の失敗を責めるのではなく、「自分(I)は今、こんなふうに心配している」「自分はこういう理由で早く帰ってきてほしかった」ときちんと伝えます。
2つ目は伝えたいことをはっきり言うということ。そして3つ目は感情的にならないことです。感情にまかせてつい放ってしまった暴言であっても、子どもは真剣に受け取ってしまいます。はっきり言うことは大切ですが、一呼吸おいて冷静になって話しましょう。
※次回(最終回)は、子どもにとっての家庭の役割と、子どもへのかかわり方についてお話しします。(構成・川島省子)
※この記事は2014年12月18日に東海大学サテライトオフィス地域交流センター(神奈川県秦野市)で開催された、「To-Collaboプログラム地域連携講座 子どものこころの理解と対応~第1回児童期編~」の内容を再構成したものです。同センターは東海大学と地域社会を結ぶ情報交流の場として、さまざまなイベントを開催しています。
【東海大学サテライトオフィス地域交流センター】
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