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移住女子「ここで生きると決めました!」 移住女子
坂下可奈子
第2回 「移住女子発!」で農業や地域の魅力を発信

(写真・編集部)


 新潟県十日町市の山あいにある池谷集落は、かつて全人口13人の限界集落でした。坂下可奈子さんがこの集落にほれ込み、移住して4年。フリーペーパーの発行や「農ガール」向けの野良着開発など、女子ならではの感性で山里から新たな風を吹かせています。

――4人の「移住女子」の笑顔が表紙を飾るフリーペーパー『ChuClu(ちゅくる)』。4人それぞれの「これまで」や日々の暮らし、移住後の生活費のことまで紹介されていて、とても興味深い内容だ。昨年は日本フリーペーパー大賞「審査員特別賞」も受賞した。そもそも、なぜフリーペーパーを?

移住女子発フリーペーパー『ChuClu(ちゅくる)』(写真・編集部)
 私と同じように中山間地へ移住してきた女子は、総称して「移住女子」と呼ばれています。2013年の夏から、移住者の交流会で知り合った女子3人と一緒に、地域の魅力や中山間地域の暮らしを発信しようと作ったのが、フリーペーパー『ChuClu(ちゅくる)』なんです。 “ちゅくる”という名前は「中山間地に来る」という意味と、そこが生産の現場=つくる場であることをかけたもの。食べ物や自然、人など、目に見える大切なものはもちろん、地域を支えている目に見えない“何か”も伝えたいと思い、集落のおばあちゃんから教えてもらった昔ながらのレシピや語り継ぎたい地域の物語、生活している人たちの生の声など、中越の山間地での暮らしを幅広く紹介しています。発信のパイプとなって地域への垣根を低くし、「地域で生きる」という選択肢を選ぶ人が増えてほしいですね。

 編集会議は月に1度。農繁期や仕事で集まれないメンバーは、スカイプなどで参加します。発行資金は地元応援クラウドファンディングの「FAAVO新潟」で募り、出資のお礼は私たちが作った農作物など。幸いなことに多くの人に共感してもらい、目標金額の3倍以上も集まったんですよ。おかげで、これから2年間は発行が続けられそうです。これからも中山間地の文化を守り、冊子の発行も長く続けたいので、今年からサポーター制度も始めました。

――サポーターになると金額に応じて特製のハーブティーやお米、野菜などが届く。どれも豪雪地帯ならではのおいしい湧き水と豊かな土壌、そして坂下さんたちの手間隙惜しまない仕事の結晶だ。今年2月に発行した最新号で、早くも3号目となった『ChuClu(ちゅくる)』だが、登場する移住女子の皆さんは、皆、個性的でパワフル。

ChuCluサポーターになると金額に応じてこんな「おくりもの」が。詳細はhttp://ijujoshi.theshop.jp/
 私を含めて移住女子は皆、わりとガンコなんです。こだわりというか、自分はこうありたいという思いが強い。そういう人でないと、移住なんてしないのかもしれませんけれど(笑)。農業体験でも、なぜか女性の参加者が多いんですよ。私も農業体験を経て移住に踏み切りましたが、男性は自分が稼ぎ頭にならなきゃいけないとか、定職につかなくちゃいけないなどのプライドが邪魔をして踏み切れないのかもしれませんね。私は十日町市の青年の有志会にも入っていますが、そこは三十代の男性が中心。皆、真面目でしっかりしていてとても頼もしいのですが、話題の中心は肥料や農薬のことなんです(笑)。

 それに比べると、女子は「一個の仕事で大きく稼ぐ」というより、たとえば農業だけで食べられなくてもパートをしたり、いくつかの異なる仕事を副業として持ち、結婚や出産など人生の変化に合わせて伸び縮みするという考え方のほうがあっているのかも。また、地域自体が豪雪地帯という土地がらか、夏と冬の仕事が違う人も多く、ひとつの仕事や正社員という立場にとらわれない多様な働き方を認める土壌もあるように思います。

「NORAGIプロジェクト」で作った作業着を着て
――農作業衣にも女子の視点を生かそうと、「NORAGIプロジェクト」にも取り組んでいます。こちらのきっかけは?

 十日町市と津南町からなる越後妻有地域で農業にかかわっている女子が細々と続けてきた農業女子会で、いつも農作業衣の悩みが話題になっていたんです。売られている作業衣は男性サイズで生地も重く、たまに女性ものがあっても機能面で劣るものばかり。それなら、本気で農業をする女子向けのカワイイ農作業衣を作ろうと盛り上がったんですよ。

 当時は私たち自身が農業を始めたばかりで、実際の不便さからこのようなプロジェクトが始まったのですが、今では昔の私たちのように、農業を始めてみたいと少しでも思っている人たちが「まず始めるならNORAGIへ」というように、土にかかわれるための会談を作っていきたいと思うようになりました。

池谷集落に暮らす人たちとともに
 作業着は、越後妻有で3年に1度開催される「大地の芸術祭」をきっかけに知り合った東京在住のデザイナーと東京の縫製会社の協力を得て、2年がかりでようやく販売までこぎつけたもの。「作ろうね」と言い出したのは私が移住した夏ごろでしたから、それから何度も試作品を作り、そのたびに生地やポケットの付け方など検討して、納得いくまで時間をかけました。とにかく、ゆっくりゆっくり(笑)。試作品ができるたびに仲間を増やそうと試着会を開いたりしてきたせいもあるのですが、こんなふうに急いで結果を出そうとしないやり方も、女子ならではなのかもしれません。まずはニーズや反応を知りたくて秋冬物を試験販売。原価8000円のところ1万円という安い価格設定で出したんですよ。海外に発注すればコストが半分くらいで済むと知ったときは、食の分野よりもアパレルのほうが先に海外に押されてきたのだと痛感しました。


――「衣料に比較すると日本の農業はまだまだ守られていると感じた」と坂下さん。とはいえ、TPP(環太平洋戦略経済連携協定)など世界各国との関係で、日本の農業が変化を余儀なくされる状況も。次回は、坂下さんご自身の「これから」や「移住女子が考える日本の農業」についてもお聞きします。

(構成・白田敦子/写真提供・坂下可奈子)





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【さかした・かなこ】
1987年香川県生まれ。立教大学在学中に新潟県十日町市での農業体験に参加したことがきっかけとなり、2011年池谷集落に移住。移住女子発信フリーペーパー『ChuClu(ちゅくる)』編集長を務め、農業と地域づくりに取り組んでいる。
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