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にっぽん醤油蔵めぐり
「職人醤油」代表
高橋万太郎
第9回 派手さはなくても丁寧な仕事 (佐々長醸造株式会社・岩手県)

どこまでも続く田園風景

 岩手県花巻市は、宮沢賢治生誕の地。佐々長醸造を初めて訪問したときも、「イーハトーブはこんな場所なのかもしれない」と思うほど彼方に地平線を見通せる穏やかな風景の中、ひたすら車を走らせていた記憶があります。

 途中、車を停めて美しい棚田が広がる景色を写真に撮ったりしながら進むと、少しにぎわいのある地域にたどり着きました。大きなT字路の交差点。正面に佐々長醸造の店舗があります。その奥には大きな煙突のある工場が続いており、さらに道を隔てた奥の敷地も工場。かなり広大な印象を受けました。

蔵の中には木桶が並ぶ

 店舗に入ると、壁一面に醤油がずらり。今や珍しい一升瓶や1・8リットルサイズのペットボトルも健在です。ほかにも醤油や味噌を使ったかりんとうやせんべいといったお菓子なども充実していて、醤油屋とは思えないほどに立派な店内。その一角から、チョロチョロと水の流れる音が聞こえてきます。湧き水です。
 「どうして店内にこんなものが?」と思って見回すと、専用コーナーが作られ、説明書きには「早池峰霊水」と記されています。

創業は1906(明治39)年

 早池峰山(はやちねさん)は、岩手県屈指の高峰。海底プレートの隆起によってできた標高1917メートルの山で、この一帯の雪解け水が地下に浸透し、厚い蛇紋岩層を400年の歳月をかけて自然ろ過された水が、早池峰霊水です。マグネシウムの含有率が日本一高いそうで、佐々長醸造では仕込みに使うほか、水そのものも販売しています。

 そのまま工場の中を案内してもらうと、ちょうど、味噌の出荷作業の真っ最中。仕込み桶が並ぶ部屋の扉を開けると、中から聞き覚えのある音楽が流れてきます。のぞくと、「味噌に音楽を聴かせると酵母が活性化して旨みが増す様です」という手書きの張り紙が。味噌は、モーツァルトを聴きながら育っているのです。
 佐々長醸造の人気商品である「つゆ」の原材料表示は、「醤油、砂糖、かつお削りぶし、食塩、味醂」とシンプル。エキスになっただしを買い入れるメーカーが多い中、かつお節から自社で煮出しているのです。

大自然に抱かれて熟成のときを待つ

 「あら、おいしい!」
 「職人醤油」の店頭でこのつゆを試食してもらうと、お客さんが一様に発する声と笑みをたたえた表情。それが、真面目に造られたつゆの味わいを物語っている気がします。
 派手さはないけれど、丁寧な仕事。そんな印象を抱かせてくれる蔵元です。

☆この1本でこの料理☆

佐々長醸造(岩手県)



つゆ

価格:381円+税

「そうめん」


 しょっぱすぎない醤油の味と、しっかりしたかつおだしの風味が際立つ、おいしさの固まりのような「つゆ」は老舗ならではの味わい。そうめんをはじめ、蕎麦にも。

① そうめんはたっぷりの湯で表示どおりにゆで、流水にさらして水気をきる
② 「つゆ」を4~5倍の水で薄める
③ そうめんを器に盛り、ネギやなど好みの薬味を添える


【職人醤油―こだわる人の醤油専門サイト】
http://www.s-shoyu.com/

☆こちらもぜひお読みください☆

連載「職人醤油のつくり方」では、高橋万太郎さんが、100mlの小瓶に入ったこだわりの醤油を扱うユニークな取り組みに至るきっかけとなった職人さんとの出会いや、若き蔵人たちとの交流などを紹介しています。
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【たかはし・まんたろう】
1980年群馬県生まれ。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は、一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100mlの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。これまでに全国の400以上の醤油蔵を訪問した。
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