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美しいくらし
ものづくりで未来を提案する 株式会社UPQ CEO代表取締役
中澤優子
第2回 言葉にならないニーズをつかむ
 中澤さんがUPQで大切にしていることは、会社員時代に学んだマーケティングの考え方。大手企業を経験してからベンチャー企業を立ち上げたからこそできる、新しいものづくりについてお聞きしました。

――就職活動で出会った「キラキラした目でものづくりを語る大人たち」に魅了されて入社した会社では、携帯電話の商品開発に没頭しました。その5年間の中で、特に現在のUPQの製品づくりに生かされていることを教えてください。

UPQのコンセプトカラー「blue x green」と「navy & red」の製品
※写真提供:株式会社UPQ、2016年2月29日のプレスリリースより
 「いわゆる潜在ニーズを探す」ことです。潜在ニーズを探す名目で、メーカーはよくアンケートやインタビューなどの調査を実施して、その結果をそのまま製品化に反映してきました。でも本当の潜在ニーズというのは、まだ誰も言葉にすることができない。だからこそ、それが製品化されたときに、「うわ、それ超欲しい!」と思わせる力を持っているのです。ただ、それを探るのはとても難しい。そこで私は潜在ニーズを探すために、常に人間観察をしています。簡単な例でいうと、秋葉原で私が経営しているカフェでバレンタインにハート形のパンケーキを出したことがありますが、若い女性が喜んで男性が恥ずかしがって絶対注文しないかというと、必ずしもそうとは限らないんです。期間限定を目当てに男性でも喜んで注文する人もいる。そのため性別や年齢などでニーズをくくることは絶対にせず、人々が何を考えてどんな行動をとるのか、よく見るようにしています。

―― 一般的に、大手メーカーは企画から製品化まで2年かかるそうですが、UPQはそれをたった2カ月で実現しています。これにはどんなメリットがありますか?

 チャンスを逃さずに、すぐに世に問える点です。たとえば、UPQではトレンドカラーにあわせたシーズンカラーを採用し、2015年8月にはblue x green、今年4月にはnavy & redを製品に反映しています。このようにベンチャーであることを最大限に活かし、今までのメーカーでは手を出せなかったものづくりに挑戦してきました。

――なぜ、そんなに早く製品化できるのでしょう?

 これは、ベンチャーならではのスピード感だと思います。私は大企業でのCEO経験はないので。一般的な企業では数人が順番に印鑑を押して意思決定を行いますが、UPQで意思決定をするのは私1人だけ。私が決断を早くすればするほど、製品化のスピードも加速度を増すことができるんです。また、長く開発してきた製品を会社が解散してしまったので世に出せない、という過去の苦い経験を二度と味わいたくない、という思いもスピード感にはつながっていると思います。

――小ロット、小生産で運営していますが、ここにはどんなこだわりがありますか?

 たとえば、大手メーカーで自社工場生産だと人件費もかかりますので、利益を出すために10万台作って売らなくてはいけないとしましょう。一方でUPQは生産コストや人件費があまりかからないため、100台でも、300台でも利益が出るんです。桁が違いますね。
 また、ちょうどUPQを立ち上げたあたりから、大手企業がより安価に生産できるフィリピンやベトナムに生産工場を移転させ、中国の工場は稼働率が低下し始めていました。そのため、生産ラインを少しでも稼動させたいという工場側の思惑もあって、100単位という小ロットの生産も可能となりました。
 UPQとしては、日本でシェアを大きく拡大したいとはあまり考えていません。むしろ、今の会社規模のままどこまでチャレンジできるかやってみたい。これからは家電メーカーとしてより幅広いカテゴリーの製品を作って、「UPQってこんなものも作ってたんだ! あの商品買っていたら、今ごろはプレミアが付いてたな!」と思われるような、希少価値の高いものづくりを追求していきたいですね。

――UPQは消費者が求めるトレンドを反映した商品づくりを行いながら、取引先ともWin-Winの関係を結べる新しいカタチのものづくりを実現しています。次回(最終回)は、取引先も含めた“働く仲間”を率いる中澤さんのリーダーシップの考え方と、ものづくりを通じてUPQが担う社会的な役割について聞いていきます。

(構成:大橋礼子、撮影:馬場邦恵、編集:柏木真由子、古川佳奈)

*この記事は、株式会社リビングくらしHOW研究所が運営するライター・エディター養成講座「LETS」アドバンスコース17期生の修了制作として、受講生が取材、撮影、編集、校正などを実践で学びながら取り組んだものです。
【ライター・エディター養成講座「LETS」のホームページアドレス】
http://seminar.kurashihow.co.jp/lets
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【なかざわ・ゆうこ】
1984年東京都生まれ。大学卒業後にカシオ計算機に入社、携帯電話の商品開発に携わる。2012年に会社のスマートフォン事業撤退を機に退社。13年からカフェ経営を開始。15年7月にUPQを設立。短い生産期間や希少性の高い商品作りが話題となり、家電業界に革命を起こす。
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