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アンチエイジングの教科書
東海大学特任教授
石井直明
第6回 栄養が左右する免疫力㊦

体内環境が免疫力を左右する



 免疫とは、自己(=体の構成成分)と非自己(=ウイルスや細菌など)を見極め、体内に侵入してくる病原体などの非自己を排除するシステム。「先天性(自然)免疫」と「獲得性免疫」という2段階の防御システムから成り立っています。
 このうち生まれながらに持っている先天性免疫は、病原体を無差別に攻撃する仕組みです。私たちの体には、細菌やウイルス、死んだ細胞などを捕らえて消化・分解する「食細胞」と呼ばれる細胞があり、生体の自己防衛や不用物の排出などを担っています。その代表格がマクロファージ。体内に侵入してきたあらゆる微生物を食べて退治してくれます。加えてインターフェロンというタンパク質が、免疫細胞のリンパ球に病原体の攻撃を命じ、ウイルスが増えるのを阻害。このとき、リンパ球と病原体が戦っている場所(例えば喉)では炎症が起こり、全身に熱が出ます。

 しかし、病原体が小さい場合や、細胞内に入り込んでしまった場合には、先天性免疫では対処しきれなくなります。そうなると、T細胞やB細胞といった免疫細胞の活躍による獲得性免疫の出番です。T細胞は、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を殺傷・排除するほか、ウイルスや細菌、アレルギー物質など生体に免疫応答を引き起こす物質(抗原)に応答し、免疫系統のはたらきを調節。B細胞は、体内に侵入した病原体を排除するために必要なタンパク質(抗体)をつくります。これらは互いに協力してリンパ球など他の免疫細胞とも力を合わせ、病原体に特有の抗原を目印に集中的に攻撃。病原体に感染してしまった細胞そのものを死滅させたり、抗体によって抗原を不活性化させたりして、それを免疫細胞が食べるという仕組みで防御するのです。

体内に侵入してくる病原体などを排除する先天性免疫と獲得性免疫の特徴


 獲得性免疫の大きな特徴は、病原体の抗原をリンパ球が覚えていて、次に同じ病原体が入り込んで来たときに素早く攻撃できること。この「免疫記憶」という機能を利用したものがワクチンです。ワクチンを接種することで、ターゲットとする感染症にかかりにくくなったり、かかっても軽くすんだりします。
 厳密にいえば細菌とウイルスでは働く免疫細胞が異なりますが、いずれにしても複雑な免疫の仕組みが、私たちを多種多様な病原体から守っているのです。

 成人の場合、体内にある37兆個の細胞のうち約2兆個が免疫系の細胞で、そのすべてが骨髄にある造血幹細胞からつくられ、毎日100億個ほどが入れ替わっています。そうした代謝を司るのは、結局のところ体外から摂取する栄養です。不摂生が続くと体の機能が低下して免疫がうまく働かなくなるのも、当然のことだといえるでしょう。また、老化により体内で新しい免疫細胞がつくられなくなり、数が減少するとともに免疫機能が低下しますから、加齢に伴う健康管理はますます重要になります。

 では、免疫の力を十分に発揮できるようにするには、どうしたらよいのでしょうか。
 答えは、普段から体内環境を整えておくというシンプルなこと。そのポイントは、①栄養バランスの良い食事、②適度な運動、③十分な睡眠、④生活リズムを整える、⑤上手にストレス発散するという5つ。どれも当たり前のことのようですが、こうした基本的な健康管理を毎日、積み重ねていくことが、体の機能を正常化して免疫の力を高めてくれるのです。

 体内環境を整えると粘膜が強くなり、病原体が侵入しにくくなります。中でも腸には免疫を担うリンパ球の約7割が集合しているといわれていますから、腸内の環境を整えておくことで免疫力がアップし、侵入した病原体を効率的に叩くことにつながります。(つづく) 
構成・天野敦子、イラスト・斉木恵子(シンプラス)
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【いしい・なおあき】
医学博士。1951年神奈川県生まれ。東海大学医学部教授を経て2018年より同大健康学部特任教授。専門は老化学、分子生物学、健康医科学。30年以上にわたり老化のメカニズムを研究し、世界で初めて老化と活性酸素の関係を解明。テレビや雑誌などでも幅広く活躍する。著書に『専門医がやさしく教える老化判定&アンチエイジング』『分子レベルで見る老化』『アンチエイジング読本』ほか。
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