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きれいをつくる
100歳までハイヒール 編集部Yの
ウォーキングショー体験記
最終回「晴れの日」を彩るハイヒール
 たった2時間の講習で、“ウォーキングショーに出る”という無理難題もといミッションを与えられた編集部Y。ノーと言えない自分をもどかしく思いつつも、「参加することに意義がある」と気持ちを切り替えました。そして約1カ月間の自主トレーニングを経て、ついにその日を迎えたのです。

いざ、パーティーへ

 当日、この日のために新調した紺のワンピースと黒のハイヒールといういでたちで、会場のフレンチレストランに到着。これでも私としてはかなり頑張っておしゃれしたつもりでした。しかし、受付を済ませた私の目に飛び込んできたのは、参加する受講生の方々のゴージャスなファッション。大胆なカッティングが施されたピンクのドレスや、ラインストーンが全体にちりばめられたきらめくワンピース、スレンダーな体にぴったり合ったワンピースなどに身を包み、足元はお気に入りのハイヒールでビシッと決めています。「私なんて場違いなのでは」と一気に緊張度がアップする中、いよいよパーティーが始まりました。

 シャンパンで乾杯した後は、お話タイム。ドキドキして無口になりがちな私に、皆さん気さくに話しかけてくれました。パーティーに参加しているのは、スクールに通い始めて1年から4年、20代後半から60代の受講生です。習い始めたきっかけは、「歩き方や姿勢を直したい」「ずっと正しい履き方を知らずにハイヒールを履き続けてきたから、ちゃんと学びたい」「以前のようにまた履けるようになりたい」など、人それぞれ。また、レッスンを開始したころは皆さん“腹筋入れ”に苦労したそうで、「よかった。私だけじゃない」と密かに胸をなで下ろしました。

それは心踊る一瞬だった

 そうこうしているうちに、ついにウォーキングショーの時間になりました。ショーのやり方は、参加者を2つのグループに分け、一方がウォーキング、もう一方は観客となり、グループ全員がショーを終えたら、交代するというもの。参加者は赤いカーペットが敷かれた階段を降りなから登場、観客の前を2往復歩き、立ち止まったときに決めポーズをして終了です。
 出番を待ちながら、「階段で転んだらどうしよう」「決めポーズってどうするの? 習ってないし」「いやいや、まずは正しく歩くことが大切よ」と、私の心は千々に乱れていました。そしてついに私の番! 松尾さんから「ハイヒールをあきらめていたのに、ここまで歩けるようになりました。練習の成果を思い切り見せてくださいね」と激励の言葉をもらい、恐る恐る1歩を踏み出しました。


 実は、歩き方を意識していたのはここまで。いざ歩き始めたら、腹筋を入れることも、デコルテを開くこともなにもかも頭から吹き飛んでいました。そのせいか、後で写真を確認したところ、さんざんな出来栄え。後ろ足は全く伸びていないし、手は相変わらずほとんど動いていません。その理由は、緊張しすぎたから? いいえ、違います。

 歩いているとき、わくわく感を抑えきれずに思わず笑顔になりました。なぜか不思議な高揚感に包まれていたのです。「すてき!」「2時間のレッスンでここまで歩けるなんて素晴らしい」と声を掛けてもらいながら歩き終えて、温かい拍手をもらったときは、晴れ晴れとした気持ちでした。思いもしなかった感覚です。なぜこんな気持ちになったのか、自分でもわかりません。

 ちょっともやもやしながらも、自分の出番が終わったことで気持ちも落ち着き、受講生の方々のウォーキングを見ました。華やかなドレスを着こなしてハイヒールで歩く姿は、女の目から見てもほれぼれするほどの美しさ。そして、それぞれ趣向を凝らした決めポーズ。ある人は、くるりと一回りして手を腰に当てポーズ、ある人は上着をさっと脱ぎ、ポーズを取った後に颯爽と歩き出す……。自信に満ちあふれていて、ファッションモデルさながらのカッコよさでした。でもなにより光り輝いていたのは、皆さんの明るい笑顔。思いっきりおしゃれをして、元気に美しく歩けること、そして「注目されること」への喜びを全身で表しているように感じました。

女には「晴れの日」こそ必要!
 ショーを終えた後、「緊張した〜」「楽しかった」「来年も頑張る」など感想を言い合い、賑やかに盛り上がりましたが、最も印象的だったのは「こんなふうにドレスアップできる機会はほかにあまりないの。だから、このパーティーは本当に大切」という言葉。確かにある程度の年齢になると、パーティーに出る機会も少ないし、ましてやきらきらした装いをすることなどほとんどありません。

 そのとき、わたしがあきらめていたのは、ハイヒールだけではなかったことに気づきました。これまで長い間、「装うこと」「装った自分を人に見てもらうこと」の楽しさや喜びをあきらめ、あきらめていたことすら忘れていたのです。
 松尾さんが言う「女性には晴れの日が大切」「人に見てもらうことで美しさを保つことができる」ことを、実感した瞬間でした。ウォーキングショーという「晴れの日」に自分の姿を見てもらったこと、それが私のわくわく感の源だったのです。

 パーティーからの帰り道、足はちょっと痛かったものの、心は軽やか。大切な気持ちを思い出させてくれたウォーキングショーに感謝の気持ちでいっぱいでした。そして、そのきっかけを作ってくれたのがハイヒール。この靴にはやはり、女性の本当の気持ちを引き出す魔法があるようです。

――取材を終えて

 ある人から「絵は人に見てもらうことが、音楽は人に聴いてもらうことが上達の近道」と聞いたことがあります。「自分を表現したい、第三者に披露したい」というのは、人が持っている根本的な願望なのかもしれません。今回の取材は、「ハイヒールを履きたい」という思いから始まったものでしたが、思わぬ気づきがありました。今度こそ美しく歩く姿を披露できるように、これからも練習あるのみです。


(構成: 編集部Y)

【日本ソワサンタンウォーキング協会オフィシャルサイト】
http://www.60ans-walk.com/
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【編集部Y】
「かもめの本棚」編集部員。長年ハイヒールへの憧れを胸に秘めつつ、おばさん街道まっしぐらの日々を過ごしていたが、松尾多惠子さんへの取材をきっかけに、ハイヒールウォーキングに挑戦することになった。自主トレーニングを経てついにハイヒール再デビュー。
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