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きれいをつくる
見た目年齢は体内の老化に比例する 東海大学健康学部 特任教授
石井直明
第2回 老化すると体がサビる!?

※このWEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『アンチエイジング読本』を好評発売中です(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。


 「老化」というと、皆さんはどんなイメージを持ちますか? 若い人は自分には関係ないと思っているかもしれませんが、実は、医学的には20歳ごろから老化が始まるといわれています。では、老化とはどういうことを言うのでしょうか? 老化を進める要因やメカニズムを正しく理解すれば今よりも健康になるばかりでなく、病気の予防にもつながります。

元気と健康は違う。さて、あなたはどちら?
 「自分は元気だから健康だ」と思っている人も多いでしょう。でも、「元気」と「健康」はまったく違うのです。ニュースで、「2011年に人間ドッグを受診して異常なしと判定された人の割合は過去最低の7.8%」という日本人間ドッグ協会の調査結果が発表されて話題になりました。つまり、残り9割以上の人は健康上何らかの問題を抱えているということです。たとえば、高血圧でも元気な人はいます。しかし、それは“古い車(老化した体)がエンジンを思いきりふかしている”のと同じようなもの。ですから、健康診断で“高血圧”とか、“C”や“D”が付いた人は、元気かもしれないけれど決して健康とは言えない。そこをちゃんと自覚したほうがいいと思います。つまり、「問題なく健康」と言えるのは結果が“オールAの人”や少なくとも“異常が認められない人”だけということになります。

老化と病気の定義はあいまいなもの!?
 「老化」という言葉を広辞苑で調べてみると「歳をとるにつれて生理機能が衰えること」とあります。「あれ? 生理機能が衰えるのは病気も同じ」だと思いませんか?
 では、老化と病気はどういう違いがあるのでしょうか? たとえば、加齢に伴って眼球の水晶体が濁っていく加齢性白内障は、ほとんどの人が気がつかないうちに症状が進行します。それで、ある日ちょっと見えにくくなって、病院で「白内障ですね」と言われた瞬間に病気ということになる。家でなんとなく不自由なく過ごせているうちは、白内障が進んでいても病気ではなく老化なのです。このように病気と老化の定義というのは、非常にあやふやなものです。その境は微妙なものということがおわかりになったでしょう。

入れ替わる細胞と一生ものの細胞
 老化のメカニズムはさまざまな説があって、残念ながらまだ根本的な原因は解明されていません。それでも、近年急速に進んだアンチエイジングに関する研究の中で、「遺伝子」と「環境」が大きく影響していることがわかってきました。
 皆さんは人間の細胞は生涯にわたって入れ替わり、新陳代謝を繰り返すものだと思っていませんか? 実は細胞には、体の部位ごとに入れ替わる細胞と、そうでない細胞があるのです。心臓や脳、神経細胞などはほとんど入れ替わらず、生まれた時のままです。だからこそ、損傷すると深刻なダメージを受けるので、大切にしなければなりません。それに対して、表皮(肌)は約30日、赤血球は120日、骨は2年、一番時間がかかる副腎皮質細胞でも3年弱で入れ替わります。

細胞の寿命は遺伝的にプログラムされている
 さらに、入れ替わる細胞には“分裂寿命”があることがわかってきました。これが、解剖学の研究者レオナルド・ヘイフリック教授が発見した「ヘイフリック限界」というものです。それぞれの細胞には遺伝子によってあらかじめ分裂できる回数がプログラムされています。老化した細胞は機能が衰えて分裂するスピードが遅くなり、組織や器官の機能の低下につながります。分裂できなくなって機能が極端に落ちた細胞は自滅するので、細胞の数が減少して体の組織や臓器の容積が小さくなり、さらに機能が落ちていくことになります。
 女性が一番気になる皮膚を例にすると、弾力やみずみずしさが失われ、しわがたるみが目立ってくるのは、このような細胞の老化による角質層の機能や脂肪の分泌機能の低下などが原因です。つまり、遺伝子にプログラムされた細胞の分裂寿命が大きくかかわっているのです。

活性酸素で体がサビる!?

 老化に大きな影響を及ぼしているもう一つの原因は「環境」です。そして、その最大の要因といわれているのが「活性酸素」です。くぎは古くなるとサビてきますよね。これは、空気中の酸素で酸化されるのが原因です。リンゴを切って放置すると変色するのも同様ですが、実は、私たちの体も同じようにサビるのです。
 呼吸するたびに体内に入る酸素の約2%が活性酸素に変わり、遺伝子や細胞に障害を与えます。若いうちは体の中に備わっている除去能力(抗酸化力)が十分に働きますが、残念ながら加齢とともに除去能力は低下してしまう。体内の活性酸素が多くなれば、老化はどんどん進んでいきます。でも、活性酸素が怖いからといって呼吸を止めることはできません。しかし、私たちの努力でその発生を抑えることは十分可能なのです。

酸化因子をできるだけ遠ざけよう
 活性酸素は呼吸以外のさまざまな要因からも発生しています。たとえば、タバコや紫外線、食品添加物、多量の飲酒やストレスなど、現在わかっているだけでも私たちの身近に驚くほどの要因があります。つまり、現代人は活性酸素が発生する環境に囲まれて生きているのです。でも、ちょっと考えてみてください。「禁煙する」「日焼け止めを塗る」「日ごろから食材の選択に気を配る」「週に何日か休肝日を設ける」など、私たちが努力することによって、これらの要因を避けることができるとは思いませんか?  老化の要因やそのメカニズムを理解し、今日からできることを行動に移すことが、健康への第1歩になるのです。

※第3回は「あなたの体はオーダーメード」。1人ひとりの体がどれだけ違うのか、さまざまなトピックを例にご紹介します。

(構成・高須生恵)
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【いしい・なおあき】
医学博士。1951年神奈川県生まれ。東海大学医学部教授を経て2018年より同大健康学部特任教授。専門は老化学、分子生物学、健康医科学。30年以上にわたり老化のメカニズムを研究し、世界で初めて老化と活性酸素の関係を解明。テレビや雑誌などでも幅広く活躍する。著書に『専門医がやさしく教える老化判定&アンチエイジング』『分子レベルで見る老化』『アンチエイジング読本』ほか。
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