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美しいくらし
フランスの一度は訪れたい村 トラベルライター
坂井彰代
第5回 磯の香りと採れたて生牡蠣に誘われて「カンカル」(下)

鮮度抜群の牡蠣市


 8軒ほど牡蠣の屋台が並ぶ市場をうろうろ、3周ほど回ってから買う店を決めました。次はどの牡蠣を選ぶかです。同じ種類のものも大きさによって値段が異なるので、迷うところです。牡蠣を売る単位は原則として1ダース(12個)ベース。結局「クルーズ」と呼ばれるマガキを12個買いました。5~6ユーロ、1000円でおつりがくる値段です。すべて殻付き。お持ち帰りならそのままの値段ですが、その場で食べるために殻を開けてもらうのに50サンチーム(約60円)、さらにレモンをつけて50サンチームプラスします。

マガキを1ダース

 店先には、牡蠣がちょうど12個収まるようにつくられたプレートがスタンバイ。屋台のお姉さんが専用ナイフで手際よく殻を開けて、一つずつ窪みの上にのせていきます。同じ大きさなので、12個並ぶとまるで花が開いたような美しさ。日本では大きさがマチマチの剥き身をパック詰めして売っていますが、牡蠣を食べるトキメキは、殻をむくところから始まっている! と思わずにはいられません。

 全部剥き終わったら、半分に切ったレモンものせてもらって、落とさないようおそるおそる歩きます。養殖場を見下ろす場所に座って、さあ、お楽しみの試食タイムです。上の殻をどけると、まるで海から引き上げたばかりのように、潮の香りが周囲に放たれました。固く閉じていた殻のなかで、うま味とエキスがしっかり守られていたのでしょう。牡蠣の殻、グッジョブ!

 レモンを絞ったら、身を下の殻からはがして一口でぱくり。やや強い塩気をレモンの酸味が緩和してくれ、フレッシュな味わいがより強まります。夫と2人で12個なんてあっと言う間に完食しました。さて食べ終わったあとの殻はどこに捨てるのかなと思ったら、みんな海岸にぽいっと捨てているではありませんか。長年積もり重なった牡蠣の殻によって辺りはすっかり牡蠣浜に。これもカンカルの風物詩なのでしょう。

ソヴァージュは1個から買える

 せっかくなので、今度は養殖でない「ソヴァージュ」を食べてみることにします。ソヴァージュは天然の貴重な牡蠣。その名のごとく野性味あふれる形で、荒々しい大西洋の波で侵食されたかのような、ゴツゴツとした殻に包まれています。サイズが通常のものより大きいため1個から買えます。殻の上にどっしりとのっかった身は大きくて食べごたえ十分、大満足です。 
 カンカルにはもっと大きい「ピエ・ド・シュヴァル」という牡蠣があるのだそう。まだ食べたことがなく、この牡蠣を食べるためにまた行かなくてはと、次の旅を楽しみにしています。

 ところで、フランスでは牡蠣は生食が基本。私が愛する「牡蠣フライ」にはお目にかかったことがありません。和食が大人気のフランスですが、剥き身の牡蠣が受け入れられるには、ちょっと時間がかかりそうな気がしています。

牡蠣の収穫をモチーフにした噴水




【カンカルへの行き方】
パリ・モンパルナス駅から高速列車TGVで約3時間のサン・マロ下車。ここから車で東に約20分。バスもある。


(写真:伊藤智郎)

【トラベルライター・坂井彰代さんの記事】
フランスの教会に魅せられ、これまで100以上を訪ね歩いてきた坂井さんが、人々から愛される個性豊かな教会を紹介してくれます。フランスの美しい教会と村の両方を楽しめる連載「フランス小さな村の教会巡り」はこちら。

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【さかい・あきよ】
徳島県生まれ。上智大学文学部卒業。オフィス・ギア主宰。「地球の歩き方」シリーズ(ダイヤモンド社)の『フランス』『パリ&近郊の町』などの取材・執筆・編集を初版時より担当。取材のため年に3~4回、渡仏している。著書に『パリ・カフェ・ストーリー』(東京書籍)、『パリ・メトロ散歩』(同)がある。
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