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美しいくらし
フランスの一度は訪れたい村 トラベルライター
坂井彰代
第4回 アジサイに彩られた村「ロクロナン」(上)

サン・ロナン教会を中心にしたロクロナン村


 アジサイを漢字で書くと「紫陽花」。いかにも太陽の下で花を咲かせそうな字ですが、この花で思い浮かべるのは、6月、梅雨の季節です。雨に濡れる紫の大輪、そして大きな葉っぱの上にはぴったりとくっついたカタツムリ。
 このイメージが崩れたのは7月にフランス北西部、ブルターニュ地方を旅したときでした。まさに漢字のとおり、真夏の太陽の下でアジサイが咲き乱れていたのです。とりわけ印象に残ったのはロクロナンという村。車を約1時間も走らせれば、フランスの西端にあるラ岬まで着いてしまうという、西の果ての地方にある村です。
 

路上の十字架とともに

 訪れたのは朝。「フランスで最も美しい村」の一つということもあって、駐車場には続々と車が集まってきていました。夏とはいえ、朝夕は冷え込むことの多いブルターニュ地方、スカーフを首にぐるぐる巻いて村に向かいます。家々の間から古びた鐘楼がそびえているのが見えました。きっとここが村の中心に違いありません。

 雨が多いのでしょうか。通りの左右に続く石造りの家並みはところどころ黄色い苔に覆われていて、南仏の乾いた石の色とは異なる、しっとりとした色合いです。その石壁に寄り添うように花を咲かせていたのがアジサイでした。
 「こんな時期にアジサイ?」
 最初は狂い咲きかと思いましたが、あちらにもこちらにも咲いているのを見ると、どうやらブルターニュ地方では今がまさにアジサイの季節のようです。ピンク、紫、そして青の花が美しいグラデーションを描く様は、いつまでも眺めていたいほどの美しさ。アジサイの華やかさを引き立てるような、石壁の控えめな佇まいにも心惹かれます。
 

サン・ロナン教会もアジサイに彩られて

 小さな村なので中心にあるレグリーズ広場にたどり着くのに、それほど時間はかかりませんでした。ここに来る途中で鐘楼だけが見えていた教会も、この広場に面しています。名前はサン・ロナン教会。ロクロナンの名前の由来ともなった聖人、ロナンに捧げられた教会で、その墓の上に建てられています。
 聖ロナンはこの地方でキリスト教の布教を行ったアイルランド生まれの聖人です。彼が布教活動を行う以前、このあたりでは「ドルイド教」と呼ばれる土着の宗教が信仰されていたのだとか。

道端に置かれた小さな石像

 ロクロナンの人々は今も聖ロナンを敬い、この教会を大切にしています。そして、6年に一度行われる「グランド・トロメニー」という祭りでは、聖ロナンの遺骸が通った経路をたどり、村を取り巻く12キロメートルもの道を歩きます。敬虔なカトリック教徒が多いとされるブルターニュ地方ならではのお祭りなのでしょう。
 そういえば、歩いていると道端に小さな石像が道祖神のごとく置かれているのを何度か見かけました。粗削りだけれど、どこかほっこりする像たちは、守り神のように村を見つめてきたのかもしれません。(つづく)


【ロクロナンへの行き方】
パリ、シャルル・ド・ゴール空港またはオルリー空港から飛行機で約1時間15分のカンペール・ブルターニュQuimper-Bretagne空港へ。ここから車で北へ約20分。カンペール市内からバスもある。


(写真:伊藤智郎)

【トラベルライター・坂井彰代さんの記事】
フランスの教会に魅せられ、これまで100以上を訪ね歩いてきた坂井さんが、人々から愛される個性豊かな教会を紹介してくれます。フランスの美しい教会と村の両方を楽しめる連載「フランス小さな村の教会巡り」はこちら。

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【さかい・あきよ】
徳島県生まれ。上智大学文学部卒業。オフィス・ギア主宰。「地球の歩き方」シリーズ(ダイヤモンド社)の『フランス』『パリ&近郊の町』などの取材・執筆・編集を初版時より担当。取材のため年に3~4回、渡仏している。著書に『パリ・カフェ・ストーリー』(東京書籍)、『パリ・メトロ散歩』(同)がある。
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