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美しいくらし
フランスの一度は訪れたい村 トラベルライター
坂井彰代
第3回 大地を見下ろす天空の村へ「コルド・シュル・シエル 」(上)

コルド・シュル・シエルの全景


 息を切らせながら小石の転がる山道を登って10分ほど、やっと開けた視界の先に、ご褒美のような絶景が待っていました。コルド・シュル・シエル。訳せば「天空のコルド」。その名のとおり、広大な大地を見下ろす場所に、その村はありました。日本にも「天空の城」と称される絶景の名所がありますが、コルド・シュル・シエルは、モニュメントではなく「村」。石造りの民家が山の斜面を覆うように並び、そこに日常の暮らしがあることを教えてくれます。

地区を表すプレートが石の上に

朝市が立っていたブテイユリ広場

 村の歴史は13世紀までさかのぼります。当時、この辺りはまだ「フランス」ではありませんでした。フランス南西部、現在のオクシタニーからプロヴァンスに至る一帯を治めていた、トゥールーズ伯の領地に属していたのです。この頃、異端とされていたキリスト教の一派を征伐するための十字軍が派遣されたり、フランス王国が南へと領土を広げるべく虎視眈々とねらっていたりで、きっと伯爵も心穏かではなかったことでしょう。
 1222年、当主であったレイモン7世は、ここに「バスティード」と呼ばれる城塞都市を築きます。見晴台として最高の立地にあることから選ばれたはずです。なにしろ村の周囲は、今立っている高台を除けば、平坦な大地が延々と続きます。遠くからやってくる敵も、すぐに見つけられたに違いありません。

ヴァンクール門を通って村の中へ

 きっとその当時と変わらない南西フランスの陽光が、高台で眺める私にも降り注ぎます。3月下旬とは思えないほど強い日差しを受け、さらに山道を上りきったため少しほてった顔に、吹いてくる風のなんとも心地よいこと! さあ、息も整いました。今度はあの村の頂きを目指すことにします。

 まずは村の麓、ブテイユリ広場に面した観光案内所で地図をもらって……と行ってみたところ、まだシーズンオフとあってクローズ。まあ、それほど大きな村ではないでしょうし、上へ上へと向かえばよいのだろう、と適当な坂道を上り始めました。だんだん日差しが強くなるなか、汗を拭いながら、ひたすら坂道を上ります。
 ところが、なかなか頂きにたどり着きません。途中で路上に掲げられていた地図を見たところ、どうやら大回りをしてしまったようです。思いのほか時間がかかってしまいましたが、寄り道も迷い道も旅の一部。民家の窓辺のさりげない装飾などを楽しみながら、坂道から小道へと迷路のような道をたどって、ようやく村の中心らしきブリード広場に出ました。

 もう体がぽかぽか。コートを脱いで、村の中を散策してみることにしましょう。(つづく)


【コルド・シュル・シエルへの行き方】
パリ・モンパルナス駅から高速列車TGVで約4時間20分のトゥールーズ・マタビオ駅下車。TERに乗り換えて約1時間のアルビ下車。ここから車で北西へ約30分。


(写真:伊藤智郎)

【トラベルライター・坂井彰代さんの記事】
フランスの教会に魅せられ、これまで100以上を訪ね歩いてきた坂井さんが、人々から愛される個性豊かな教会を紹介してくれます。フランスの美しい教会と村の両方を楽しめる連載「フランス小さな村の教会巡り」はこちら。
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【さかい・あきよ】
徳島県生まれ。上智大学文学部卒業。オフィス・ギア主宰。「地球の歩き方」シリーズ(ダイヤモンド社)の『フランス』『パリ&近郊の町』などの取材・執筆・編集を初版時より担当。取材のため年に3~4回、渡仏している。著書に『パリ・カフェ・ストーリー』(東京書籍)、『パリ・メトロ散歩』(同)がある。
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