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美しいくらし
フランスの一度は訪れたい村 トラベルライター
坂井彰代
第2回 特等席で眺める絶景の村「サント・シュザンヌ」(下)

テルトル・ガンヌから見る村の全景


 観光案内所で一番乗りの客を迎えてくれたのは、マダムの笑顔でした。村の地図をもらって、早速聞いてみます。
 「きれいな写真が撮れるところに行きたいんです!」
 「そうねえ」
 そう言ってマダムが地図を広げて指したのは、城壁沿いにあるビューポイントです。いえいえ、撮りたいのはこの村の写真なんですよ。
 そのとき用意してくれたパンフレットの開いたページに、村を背景にピクニックをしているカップルの写真が。まさにここ! ここですよ! と目を輝かせたのが伝わったのでしょうか。
 「あぁ、この風景なら、テルトル・ガンヌから撮れるわよ」
 そこはもらった地図の範囲外とのことですが、行き方を教わって急いで車に乗り込みます。午後の陽光が降り注ぐ昼下がり、逆光になっていないことを祈りつつ、その場所に向かいました。

村で見つけたビスケット屋さん

ユニークな作品が並ぶギャラリー

 くねくねと曲線を描く山道をたどること約5分。「テルトル・ガンヌ」の標識と駐車スペースらしきものが見えてきました。どうやらここで車を置き、歩いて向かうようです。枯れ葉が積もった地面をかさこそと踏みしめながら歩いていくと……ありました! 写真で見たとおりの村の全景が。背景に広がる青空には、まっすぐ伸びる飛行機雲がクロスし、「やったね!」と祝福してくれているかのようです。高い丘の上に乗っかった村は、まるでミニチュア。可愛らしい佇まいのなかに、どこか凛としたものを感じるのは、かつて城塞都市だった名残りがあるからでしょうか。

 村が真正面に見える位置にはベンチが置かれていました。何十年も人生をともに歩いてきたという雰囲気のカップルが腰をかけ、眺めを楽しんでいます。うっそうと木が茂る森の中にあっても、ベンチの前だけはきれいに枝が刈られており、視界を遮るものは何もありません。村を歩いているときも感じましたが、サント・シュザンヌの人たちが景観を守るためにどれほど力を注いでいるかわかります。「美しい村」や個性的な村であり続けることはとても大変なこと。いくつものリストに登録されている誇りが、この村の美しさを支えているのかもしれません。

ロバミルク石鹸が買える雑貨屋さん

しっとりした洗い上がりで、お土産におすすめ

 再び村に戻ると、観光案内所の向かいにある雑貨屋さんがオープンしたところです。ロバを象った看板が気になって入ってみると、石壁や木の梁がむき出しになった「古民家」の趣。壁にかけられた白黒の古い写真が、建物の歴史を物語っていました。おすすめ商品は、ずらりと並ぶ自家製のロバミルク石鹸。以前、バスク地方のオーベルジュでロバミルク配合のボディソープを使ったことを思い出しました。シャワーをした後もしっとり感が続き、保湿力の高さを実感した優れもの。いいお土産になりそうです。25年間ずっと旦那さん手作りの石鹸を売り続けているというマダム、お肌はきっとツルツルに違いありません。

 聞けば、この村で醸造されているクラフトビールもあるとか。「ラ・シュザネーズ」という名前のビールで、アルコールが飲めない人には同じ場所で造られるレモネードもあるそうです。今回は残念ながら飲みそこねましたが、次回訪問の楽しみにとっておきましょう。(つづく)

【サント・シュザンヌへの行き方】
パリ・モンパルナス駅から高速列車TGVで約1時間のル・マン駅下車。ここから車で西へ約50分


(写真:伊藤智郎)

【トラベルライター・坂井彰代さんの記事】
フランスの教会に魅せられ、これまで100以上を訪ね歩いてきた坂井さんが、人々から愛される個性豊かな教会を紹介してくれます。フランスの美しい教会と村の両方を楽しめる連載「フランス小さな村の教会巡り」はこちら。
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【さかい・あきよ】
徳島県生まれ。上智大学文学部卒業。オフィス・ギア主宰。「地球の歩き方」シリーズ(ダイヤモンド社)の『フランス』『パリ&近郊の町』などの取材・執筆・編集を初版時より担当。取材のため年に3~4回、渡仏している。著書に『パリ・カフェ・ストーリー』(東京書籍)、『パリ・メトロ散歩』(同)がある。
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