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美しいくらし
フランスの一度は訪れたい村 トラベルライター
坂井彰代
第2回 特等席で眺める絶景の村「サント・シュザンヌ」(上)

田舎風景の中に佇むサント・シュザンヌ

 1枚の写真から旅に誘われることがあります。それは、パリからそれほど遠くないところで美しい田舎風景を楽しめる場所を探していたときのこと。まるで絵本の中から飛び出したかのような村の写真に、目が釘付けとなりました。
 とんがり屋根を持つ石造りの家と城壁が一体となったお城のような村。名前は「サント・シュザンヌ」とあります。フランス北西部、ペイ・ド・ラ・ロワール地方にある村で、高速列車TGVとレンタカーを合わせればうまく訪ねられそう。思い立ったが吉日、パリから西へと向かうTGVに乗り込みました。

村の入り口には「花の村」のプレートが掲示されている

 24時間耐久レースで有名なル・マン駅で下車。車を借りて1時間ほど、高速を下りると「サント・シュザンヌ(Sainte-Suzanne)」の標識が現れて一安心です。田舎道をしばらく走っていくと、絶壁の上にある村の姿が見えてきました。こんな高いところにあったんですね!
 ゆるやかな坂道をのぼったところが村の入口。迎えてくれたのは、「フランスで最も美しい村」の看板です。さまざまな条件を満たした村だけが登録される「美しい村」ですが、歩いていると、もう一つ気になる看板を見つけました。「プティット・シテ・ド・キャラクテール(Petite Cité de Caractère)」と書いてあります。「特徴のある」、つまり「個性が光る小さな街」と訳せばよいのでしょうか?

村の散歩道

 さらに「スタシオン・ヴェルト (Station Verte)」のマークも添えられています。こちらはエコツーリズムの取り組みをしている自治体に対して与えられるものなのだとか。そういえば村に入るところに「花の村」の表示もありましたし、別の場所では人気テレビ番組「フランス人が好きな村」で第3位(2013年)に輝いたことを示すプレートも見つけました。これはかなり優等生な村! 景観だけでなく、村そのものの散策も楽しめるに違いありません。

石造りの建物の窓にはこんな飾りも


絶壁に建つシャトー

 ただ、村に向かう坂道から眺めた風景は、見ていた写真とはちょっと違うのです。どこに行ったら、あの絶景に出合えるのでしょうか? 困ったときはプロに聞くのが一番。観光案内所で聞いてみようと訪ねたところ、残念なことにクローズ。ドアに掲示された営業時間を見ると、「14~17時」とあります。3時間しか働かないの? 
 そういえば、向かいの雑貨屋らしき店も昼休み中、再開は15時からとのこと。なんとものんびりムードですが、こんな田舎の空気のなかで、急ぎ足は似合いません。観光局が開くまで、村を散策してみることにしましょう。

 村の入口にあった地図のとおり、サント・シュザンヌは城壁に囲まれた中世の村でした。石畳の道の両側には石造りの古い民家が並び、秘密のような細い抜け道が潜んでいて歩くのに飽きません。由緒ある場所には歴史的な解説が添えられ、ヘッドフォンのマークがついているのにも気づきました。小さな村ながら、オーディオガイドで案内できるほど歴史が詰まっているようです。
 解説を読むと、11世紀には征服王ギョームとの攻防戦で、最後まで抵抗を続けた村とのこと。油断したら転げ落ちそうなくらい狭い階段を上ったところは「西の塔」。中世の時代には、ここから敵を見張っていたかもしれません。

 地平線まで続く田園風景を眺めていると、天下を取った気分です。城壁に沿った散歩道もあり、ハイカーのための道標が、川辺の水車を使った紙工房などにも案内してくれます。さて、そろそろ14時。観光案内所に資料をもらいに戻ることにします。(つづく)


【サント・シュザンヌへの行き方】
パリ・モンパルナス駅から高速列車TGVで約1時間のル・マン駅下車。ここから車で西へ約50分


(写真:伊藤智郎)

【トラベルライター・坂井彰代さんの記事】
フランスの教会に魅せられ、これまで100以上を訪ね歩いてきた坂井さんが、人々から愛される個性豊かな教会を紹介してくれます。フランスの美しい教会と村の両方を楽しめる連載「フランス小さな村の教会巡り」はこちら。
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【さかい・あきよ】
徳島県生まれ。上智大学文学部卒業。オフィス・ギア主宰。「地球の歩き方」シリーズ(ダイヤモンド社)の『フランス』『パリ&近郊の町』などの取材・執筆・編集を初版時より担当。取材のため年に3~4回、渡仏している。著書に『パリ・カフェ・ストーリー』(東京書籍)、『パリ・メトロ散歩』(同)がある。
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