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にっぽん醤油蔵めぐり
「職人醤油」代表
高橋万太郎
第11回 醤油蔵と青空が広がるリンゴ畑(鈴木醤油店・福島県)

歴史を感じさせる母屋

 高速道路をおりて国道284号線を30分ほど北上し、「天栄村」という案内看板を過ぎると、見渡す限りの田園風景。さらに進むと、昔は養蚕もしていたという2階建ての母屋が見えてきました。
 迎えてくれたのは6代目の鈴木良浩さん。東京都内で高校の教師をしていましたが、平成26(2014)年の結婚を機に、家業に戻ることを決意したそうです。

 初めての訪問は、いつもながらアポなしの飛び込み。でも、建物に入った最初の一歩で、とてもいい予感がしたのを覚えています。商品が入っているプラスチックコンテナがきちんと積み上げられ、広げた段ボールが被せられていました。ゴミが入らないようという配慮なのでしょう。わずかなことですが、醤油への接し方が表れているように感じました。

清涼な空気で満たされた蔵の中

 仕込み場を案内してもらい、最初に感じた“いい予感”が間違いではなかったことを確信しました。太陽の優しい光が注ぐ仕込み場には、麹蓋が山積みになっています。床もコンクリ―トできれいに整備されていて、蔵の中には8本の木桶が整然と並んでいます。
 麹蓋による麹造りと櫂棒(かいぼう)による攪拌。機械に頼らず、このような昔ながらの道具を使い、大変な手間がかかる手仕事からできる醤油は、表示に関する規約で正真正銘の「手造り」を名乗れる天然醸造醤油です。

 木桶を改造した大豆の蒸し器は良浩さんの手製で、木桶の下から蒸気を入れて蒸す仕組み。「ゆっくり蒸すと大豆が甘くなる気がするんですよ」と言います。妻の洋子さんも、「大豆がかわいいんですよ。そのまま食べても、とってもおいしくて」。神奈川県出身で、「まさか福島県で醤油造りをするとは夢にも思っていなかった」と言いますが、その表情はとてもうれしそうです。

明るく元気な鈴木夫妻

 麹を造る「製麹(せいぎく)」には、すべて麹蓋を使います。加えて、この工程には鈴木さんならではの工夫があります。
 「麹室の天井にある窓を開けて温度の調整をします。そして、七輪で炭を燃やし続けるのですが、引き込み直後にリンゴの枝を細かくしたものをのせて一緒に燃やします。そのおかげで室の中を薬剤で消毒する必要はないんですよ。炭と煤(すす)の力ってすごいですよね」と笑顔で話してくれました。
 それにしても、なぜリンゴの枝なのか。疑問に思っていると、「うちはリンゴ農家でもあるんです。正直、醤油一本にしようか悩みました。でも、先祖から引き継いだ畑だったので……」

気持ちのよいリンゴ畑

 醤油蔵から車で5分ほどの畑を案内してもらうと、青空に葉の緑とリンゴの赤のコントラストがきれいな光景が広がっていました。山間のリンゴ畑はまるで秘密の楽園のようです。
 これからできる醤油は、きっとこの夫婦にしか造れない味わいになる。そんな期待をせずにはいられない醤油蔵です。


 

☆この1本でこの料理☆

鈴木醤油店(福島県)



平右衛門

価格:381円+税

「シイタケの網焼き」


 天栄村の元気な若夫婦が造る手造り天然醸造の醤油。肉厚のシイタケが手に入ったら、「平右衛門」ならではのぜいたくな食べ方でぜひ味わって。

①シイタケのカサの部分を下向きにして網焼きにする
②ヒダの部分に水分がたまってきたら、平右衛門をたらす


【職人醤油―こだわる人の醤油専門サイト】
http://www.s-shoyu.com/

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連載「職人醤油のつくり方」では、高橋万太郎さんが、100mlの小瓶に入ったこだわりの醤油を扱うユニークな取り組みに至るきっかけとなった職人さんとの出会いや、若き蔵人たちとの交流などを紹介しています。
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【たかはし・まんたろう】
1980年群馬県生まれ。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は、一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100mlの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。これまでに全国の400以上の醤油蔵を訪問した。
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