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にっぽん醤油蔵めぐり
「職人醤油」代表
高橋万太郎
第10回 〝科学の視点〟で伝統を継承する( 井上本店・奈良県)

大正時代に建てられたレンガ造の蔵

 ある日突然、井上本店の息子さんたちが前橋にある「職人醤油」本店に遊びにきてくれました。東京農業大学に通う吉川修平さんと遼さん。二人とも礼儀正しく、しっかりした好青年です。
 よく耳にする話の一つに、「醤油蔵に生まれた子は、一度は実家が醤油屋であることを嫌いになる」というものがあります。嫌いになってしまう理由は、幼少期にからかわれたというものから、いつも服に醤油の香りがついてしまうのが嫌だったというものまでさまざま。この話は、進学などで地元を離れてから家業を客観的に見て、あらためてその素晴らしさに気づく、というふうに続きます。
 ところがこの兄弟の場合は、一度も実家や家業を嫌いにならなかったというのです。
 「働く両親の姿を見て大変そうだなと思ったこともあるけれど、それよりも誇りを持って楽しそうに仕事をしていると感じました」と話してくれました。


二人三脚で醤油造りに取り組む井上夫妻

 兄弟にそうした働く父親の背中を見せてきたのは、6代目の吉川修さん。蔵を訪ねたときに、先代・平祐さんが大変な苦労をしながら醤油造りをしていたことを話してくれました。「先代は先々代が残した借金のために、お酒やジュースの販売などありとあらゆることをやりました。ようやく自分の目指す醤油造りのための原料を買うことができたときの喜びは、ひとしおだったそうです」
 国産の原料を使い、2年の歳月をかける天然醸造。研究熱心でもあった先代は、単にうま味を出すことだけが醤油ではないと、微生物と人間との関係まで深く掘り下げていったそうです。その思いは、「醸造は微生物が自らの生命を全うするために造り出す貴重な生命物質を利用させていただく先祖の遺産である」と、文章にも残されています。


じっくり熟成する諸味(もろみ)

 「熱心で改良好きの先代は、蔵の中にたくさんの試行錯誤の種をまいてくれました。私たちは今、それをそのまま踏襲するのではなくて、科学の目をもって見直し、検証している段階なのです」と修さんは言います。
 現在は、大手酒造メーカーの研究員だった妻の美恵子さんと二人三脚で微生物と向き合う日々。目指すのは、自分たちがおいしいと感じるものを造ること。先代から引き継がれている前向きな試行錯誤の姿は、息子さんたちにもしっかり受け継がれているように感じます。

☆この1本でこの料理☆

井上本店(奈良県)



イゲタ 黒豆醤油

価格:333円+税

「目玉焼き」


 醤油派か、ソース派か、意見が分かれる目玉焼き。素材の味わいを生かしてくれるすっきりした味わいの「イゲタ 黒豆醤油」なら、誰でも大満足の目玉焼きに。

① 卵を焼いて目玉焼きにする
② 「イゲタ 黒豆醤油」をたらしてできあがり


【職人醤油―こだわる人の醤油専門サイト】
http://www.s-shoyu.com/

☆こちらもぜひお読みください☆

連載「職人醤油のつくり方」では、高橋万太郎さんが、100mlの小瓶に入ったこだわりの醤油を扱うユニークな取り組みに至るきっかけとなった職人さんとの出会いや、若き蔵人たちとの交流などを紹介しています。
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【たかはし・まんたろう】
1980年群馬県生まれ。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は、一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100mlの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。これまでに全国の400以上の醤油蔵を訪問した。
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